今さら聞けない音楽用語【第7回・終止形】

本日は「終止形について復習したい!」というリクエストにお応えしての記事です。

「終止形」とは、フレーズの最後を締める、または区切る「句読点」のようなもので、音楽では和音の進行で表します。この終止の仕方によってだいぶフレーズの印象が変わります。

ここでは、特に覚えておきたい4種の終止形、
また番外編でいくつか紹介したいと思います!

1.全終止

最もポピュラーで王道なのは全終止です。
Ⅴ→Ⅰの連結でフレーズを締めると、きちんと「。」(句点)で文が閉じられたのと同じ効果があります。

全終止はⅤ→Ⅰの使い方によって、さらに以下の2パターンに分けられます。

①完全終止:基本形のⅤとⅠで連結させる。
②不完全終止:転回形が使われている。(多くはⅠの第1転回形)
または、ソプラノが最後主音で終わらないもの。(不安定終止、不十分終止とも。)

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不完全終止は、転回形で使うと句点というよりは読点のようですね。
同じ和音を使っていても、基本形か、転回形かで大きく印象が変わってきます。

また、全終止はどこの拍で使われるかによっても違った感じになります。

1)男性終止:Ⅰが強拍にくる
2)女性終止:Ⅰが弱拍にくる

確かに一般的にイメージされる男性的、女性的な感じかもしれません。
弱拍にⅠが来る方が柔らかい感触。女性終止は舞曲などで見られます。


2.偽終止

Ⅴ→Ⅵの終止。

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まず和声の基本として、ドミナントはトニックにいくという連結を最初に習いますが、ここで言うトニックはほとんどがⅠかⅥになります。
Ⅵの場合は、まだその後曲が続く時に使います。
終わりそうで、なんちゃって終わらない、なんて感じかもしれません。
期待を持たせることで、本当の締め(全終止)が一層引き立つ効果もあるように思います。

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(Mozart: Quintett ; Barenreiter)

上は、有名なモーツァルトのクラリネット五重奏曲の冒頭ですが、
赤でマーキングした①と②は偽終止、③でやっと全終止します。
2回立て続けに偽終止を使っても全然しつこさを感じさせないモーツァルトはさすがですね!

3.変終止

Ⅳ→Ⅰの終止。

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変格終止とか、アーメン終止、プラガル終止などの呼び名もあります。
讃美歌のアーメンの部分でこの終止が使われます。
導音がないので、少しフワッとしたようなソフトな印象。


4.半終止

→Ⅴ の終止。

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終止、とは言いますが、文で言えば「、」(読点)にあたります。


以上4種はセットでいつでも出てくるように覚えておきましょう!


【番外編】①ピカルディ終止

ここからは、番外編として、そこまで頻出でもないが覚えておきたいものを勝手にご紹介します。

ピカルディは以前借用和音の記事で解説しています。↓

https://note.com/rie_matsui/n/nbb900cb0ce15

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短調の曲
で(重要!)、締めのⅠが長三和音になる、のでしたね。バロックの音楽によく見られます。


【番外編】②フリギア終止

半終止の一種。Ⅳの第1転回形→Ⅴの終止。
これもバロック音楽、緩徐楽章の最後によく見られます。(フリギア旋法の終止音への和音連結です)
半終止のところで説明しても良かったのですが、使われ方が独特なので番外編で出しました。

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よくある半終止は先ほど出てきたように、終止、とは言いながらカデンツの途中。しかしフリギア終止の場合は曲の最後にあるのが特徴です。この後、速いテンポの楽章が続きますが、何とも次を期待してしまう終わり方でたまりません。(個人の感想です)


例えばブランデンブルグ組曲↓

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(J.S.Bach: The six Brandenburg Concertos; Dover)

これは第4番の2楽章の最後ですが、フリギア終止が使われています。
第3番の2楽章にも使われています。バロック特有の緩徐楽章の締め方です。
知らない方はぜひ音で確かめて経験するのをオススメします!


【番外編】③代理終止

これは最近レッスンで質問が出たので、自分のためにも記録しておこうと思います。

ドミナント(Ⅴ)はトニック(ⅠorⅥ)に進行する、というのが基本ですが、Ⅳ度調の属七がトニックの代わりになることがあります。
これを代理終止と言います。

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このⅣ度調の属七の後は、Ⅳ→Ⅰの変終止が続くのが普通です。

なぜこれが代理で使えるか、ですが、
よく考えたらⅠの和音とⅣ度調のⅤ度は同じ音なのですね!!※注
(上の写真、黄色で囲った部分をご覧ください)

なので、ここから下属調に少し寄ることは簡単にできる、というわけです。


※注:短調の場合はⅠは短三和音、Ⅳ度調のⅤは長三和音で第3音が異なりますが、変わらずトニックとして代理で使えます。

まとめ

終止形は、フレーズの長さ、そしてフレーズ締めの印象を示す重要な手がかりとなります。
どうこの文章を読みたいか、というのと同じ感覚で、
音楽のフレーズもどこまで続いて、最後はどう締めるか、終止形を基に考えてみましょう!



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なお、ある程度の知識がある方に向けて書いていますので、これじゃついていけない、という方は、ぜひ個別レッスンに!その人にあったレベルで解説します。(対面、オンラインどちらもあり)
レッスンご希望の方はrie3_e_mail@nethome.ne.jpまで。

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