#ゲームとことば ”頑張ること”にハードルの高さを感じたら - A Short Hike
おととしに主催させてもらった「ゲームとことば」Advent Calendarですが、今年は燻丸さんが主催してくださり、3年目を迎えることとなりました。書く側、読む側ともに、まいねん参加してくださる皆様に感謝しております。
さて、今年のお題は 「○○な人にオススメしたいゲーム」 ということで、私からは“頑張ること”に少しハードルの高さを感じている人にオススメしたいゲームをご紹介します。
頑張りたくない訳じゃないけれど、どうにもならない引っかかりが心にあって、なんとなく頑張れない。周りの人たちはとても素敵で優しいのだけれど、なんとなく素直になれない。 人間(鳥)誰しもそういう時があると思う。 『A Short Hike』の主人公、クレアもそんな人(鳥)。都会を離れて一夏を島で過ごすことになるが、普段と違う環境を楽しむ気も起きず、携帯に電話がかかってくるのをひとりで待つ。 が、電話はこない。仕方なく外に出ておばさんと話すと、衝撃の事実が発覚。
ここは電波が悪すぎて、山の上まで行かないと携帯は動かないだろうと言うのだ。ならば、ホークピークに登ってみればちょうどいいじゃないか、みんな登ったことのある場所だ、と言われるところから、このゲームは始まる。
そうしてクレアは、風と波の音と鳥のさえずりだけが聞こえる静かな小島の道を進んでいく。目印は「ホークピークトレイル」の看板だけ。山頂がどの位置にあるのか、どれくらいの高さなのかもわからない。
ただ、ときどき出会う島の人たちと話したり、気になる場所を調べたりすると、ヒントをもらえたり、ハイキングに役立つアウトドアグッズが手に入ったりする。
島の人々は基本的におおらかな様子だが、おのおの好きなことをやっていて、こだわりも強い。
決して大事件は起きないが、淡々と目の前で起きることに向き合ううち、だんだんとクレアの行動範囲は広がり、視界が開けて、心のこわばりもほぐれてくるような気がしてくる。
まさに秀逸なレベルデザインのなせる業だ。目指す山頂がどれだけ遠いのかもわからないまま夢中になって遊び、気がつけば目標に到達していた。そして山頂ではやっと携帯電話がつながるようになるのだが……そこで起きることは、ぜひ自分の目で確かめてみてほしい。
とにかく私は、これほどまでに力むことなくゴールへと連れて行ってくれたこのゲームに感動した。山頂を目指すことは確かに大変だけれど、寄り道したり、人の力を借りたり、一度戻ってみたり、休んでみたりしながら進めばいい。頑張ってやる必要さえない。なんだ、そういうことだったんだ。エンディングを見て心の中でクレアに拍手を送りつつ、自分の心も軽くなるのを感じた。
もしあなたに今、2時間ぐらいの自由時間と800円ぐらいの予算があって、“頑張ること”に少しハードルの高さを感じているのなら、ぜひ 『A Short Hike』をプレイしてみてほしい。
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