魅力的なペテン師 23.11.09

私は現職に就いて1年3か月ほどなのですが、昨年の今頃は当時の上司とぎくしゃくしていました。何を考えているかわかりづらくとっつきにくい人でしたが頭の良い人で仕事上は信頼できました。
私にとってその上司が推しに変わったのは、彼が「現代の上杉謙信」なのではないかと思い始めてからです。
なんのこっちゃと思われるかもしれませんが、ほんとに頭の良い人は自分の頭の中だけで完結してしまい、他人から見ると何を考えているかわからず戸惑うのですが、最終的にはその判断が正しいのでした。
戦国武将の上杉謙信が私は大好きなのですが、内政や外交などにも優れた資質を発揮しつつ、特に戦において天才だったと言われる人で、彼の部下たちは殿が何考えてるか分からないけど、とにかく言うとおりにしておけば間違いないという認識だったと思われるのです。
私にとって上司はそういう人で、そう思い始めてからは上司と仕事をするのが楽しくなり、徐々に関係性も良くなりました。

そして現上司なのですが、とりあえず何もかもが信用できない人で、以前の上司とは違う意味で何を考えているか分からず、仕事も中途半端で、表面的な人間関係の構築だけには驚くべき能力を発揮する人です。
私はそんな上司に振り回され、絶望と失望を味わう毎日なのですが、今日ふと思いました。
彼は、例えて言うなら「魅力的なペテン師」だと。

現上司はとにかく人を気持ちよくさせるのがうまい人で、自分でも「これで世の中渡ってきた」と豪語する人です。
今の職場でも、嫌いな人や興味が薄い人に対しても驚異的な対人スキルを発揮し、老若男女問わず接する人すべてを自分の虜にし、何なら仕事上一番近い位置にいる私は、上司の虜になった人々の攻撃に晒されて非常に迷惑しています。
こんなに嫌な思いをたくさんして、振り回されて、もう嫌だ、離れたい、仕事を辞めたいと思いつめていましたが、よく考えたら今までの人生で会ったことのないような複雑な人と非常に近しい関係になって、半世紀生きてきて味わったことのない感情をたくさん味わえるのは、もしかしてこれは貴重な経験なのではないかと思ったのです。

彼は本当に「人を気持ちよくさせる天才」で、実際本人に向かって言った事もありました。その時は心からの誉め言葉のつもりで全然悪気はなかったのですが、今思うと我ながら核心をついた言葉でした。
でも、たぶん本音は一言も言っていないのだと思います。
過去の感情やエピソードにはおそらく嘘はないと思いますが、また普通の会話においてもまあ嘘は言ってないと思うのですが、たぶん自分でも無意識に心にもない言葉が出てくる人なのだろうと思います。
さらに言うとそこに気が付いている人はあまりいなくて、むしろ気が付いた人は離れて行っただろうと思われ、彼の周囲には彼の表面的な魅力に惑わされた人だけが残っているのだろうと思います。

というのが、私が命名した上司の通り名「魅力的なペテン師」の由来です。

そう思いだすと、あんなに嫌だ離れたいと思ってた上司のことがどんどん興味深く思えてきました。
仕事上ではほんとに信用できなくて、巻き込まれるのが嫌だから一刻も早く辞めたいと思っていましたが、ちょっと待てよと。
こんな見事なペテン師の近くでその生態を観察しながら仕事できるチャンスなどそうそうないぞと、そう思ったのです。
上司をただの優しい苦労人だと思ってた頃は、こんなに優しい人が冷淡になるようなことをしてしまった自分に落ち込んでいましたが、あんなに誰構わず優しい人が私だけには負の感情を向けているではないかと。
それはまことに興味深い事なのではないかと。
そんな風に思って目からうろこが落ちた気がしたのです。

今の私は上司にうざがられており、上司は私のことを扱いあぐねていると思われます。上司は表面的な事はうまくやる人ですが、そこまで緻密な考えのできる人ではないので、内面は多分いっぱいいっぱいです。
実際やる事に粗が多く、ツッコミどころも満載です。
私の存在が上司の重荷になっているのかなと思って、私がいなくなったら負担が減ってもう少し仕事をうまく回せるかなと思っていましたが、たとえほんとにそうであってもあえて近くにいてプレッシャーをかけたい欲求に駆られてきました。そしたら上司はどうなっていくだろうかと。
それを見てみたいなと。

そんなわけで、転職先も一応探しつつ、もう少し現職で上司の観察を続けたいと思います。というご報告でした。


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