[小説]孤独の花嫁

花に囲まれて
花を繕ったドレスを着て。

わたしは花嫁。

「おめでとうございます。今日、あなたは結婚をするのです」

「…。
あの、わたしは。
あの…
こんなこと言うのは
自分でもおかしいと思いますが
あの、わたし、まだ、

わたしの結婚相手を
知らないんです。」

「はい、その通りでございます。
それが何か問題なのでしょうか?」

「え!?いえ…
それは問題では無いのですか?」

「当り前じゃないですか。
きっと式の前で緊張なさっているのね。

さあ、式をはじめましょう」

「あの、花婿はどこですか?」

「何をおっしゃいます。あの、扉の向こうにいるに決まっています。」

「その扉の向こうが式場なのですか?」

「まさか、式場は別の場所です。」

「? 花婿にはいつ会えますか?」

「えええ!?花婿と一緒に式をあげるのですか!?」

「え?」

「もったいないじゃないですか。
花婿と一緒に式をあげるなんて、もったいない!」

「そんなものでしょうか?」

「あなたが決めたことですよ」

「え」

「おめでとうございます。今日あなたは結婚するんです。

これはあなたが決めたことです」

おめでとう。おめでとう。


花婿のいない式場で
花嫁のわたしはたくさんの人から祝われた。

本日は本当におめでとうございます。

「こんなにおかしなことはないわ。
…なのに、なぜかしら。
わたしは今とても幸せな気分だわ」

「何をおっしゃいます。
おかしなことはありません。
みんな、あなたを祝福しています。」

笑顔と花に溢れる。

光が溢れる。

私は気がついた。

ああ、そうだ。
わたしはあなたに恋い焦がれ
あなたに会う覚悟を
決めていた。

あなたと一緒に生きて行けるなんて。
あなたと生きることを
みんなが許してくれるなんて。

今日はわたしのあなたの結婚式。
花婿の名は…

ああ、わたしは

「なんてハッピーなのかしら!」

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