【詩】 目覚めてもそれは夢の中で

 夜中に目覚めると、肌寒くて、私は飼っているインコのゲージが気になった。薄いシーツで覆っただけのゲージでは、インコは寒かろう。

 あたたかい毛布をかけてあげようと私は身を起こした。インコのゲージに向かった。

 不思議な感覚だ。うちの間取りはこんなだっただろうか。

 違う。ああ、これは夢だ。夢の中だ。現実ではない。

 うちの間取りはこんなではない。それだのに、間取りをちゃんと把握できている。知っているのだ。

 このまま歩いていってもインコのところに辿り着くことはない。これは悪い夢になる。怖い夢になる。知っているのだ。

 わたしは引き返し眠ることにした。正確には起きることにした。わたしは夢から目覚めるために夢の中で寝るのだ。

 目が覚めると夢と同じ自分の布団のなかにいた。違うのはちゃんと現実だった。インコのゲージに毛布をかけなければいけない。わたしは身を起こした。しかし体が動かない。どこに力をいれれば動くことができるのか忘れてしまったようだった。

 ああ、これは夢だ。早く体を動かさないと悪い夢になる。怖い夢になる。知っているのだ。

 親指からでいい。動かすのだ。動かすのだ。けっして目は開けない。見たくないものが見えてしまうのかもしれない。力をいれていれて、ぐぐっと体が動く。一度動くと、もう自然に体は動く。安心して、ほうっとため息をついて、そのままわたしは眠ることにした。正確には、夢から目覚めるために夢の中で眠るのだ。

 目が覚めると夢と同じ自分の布団のなかにいた。換気扇の音が耳障りだ。現実の私の部屋だ。やっと起きることができた。眠気の中でだるく身を起こしインコのゲージに毛布をかけて、わたしは再び布団に入った。これだけのことだ。だのにわたしはいったい何度起きたことか。わたしは何度目かの眠りについた。

 次に目覚める時にいる私の場所は、夢なのか現実なのか。

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