[小説]ぼくの首を探しに

ぼくは、首を切られ殺された。

正直
ぼくを殺したやつのコトは
もう、どうでもいい。

ぼくは、首を切られ殺された。

ぼくはただ、欲しい。
ぼくの首。

首のないぼくは、
斧を持ち、
通りがかりの人間の首を狩りとっては
自分の体に乗せてみる。

この首じゃない。
これじゃない。
欲しいのは、これじゃない。
ぼくはただ、首が欲しい。

「こんにちは、わたしは君の首です」

なんだって!?

ある日、生首がぼくに話しかけてきた。


いや…、そうか、よかった、
これで
ぼくはぼくになれる。


「ちょっとまっておくれよ、
わたしはわたしなんだ。
キミではない。

わたしとキミは、別々の人生を歩んだ。
わたしときみはもう別の人間だね」

なんだって!?

「しかし、わたしも、自分の体のコトは気にかかっていた。
一目会えてよかったよ」

なんだそれ…

「わたしの体よ、
これからはわたしの友人として、よろしく頼むよ。」

まてよ。
ぼくが今までどんな気持ちで!
どんな気持ちで過ごしてきたか
わかっているのか!
別の人間?
勝手なこと言うな!

お前はぼくの首だ!

「そう。キミは、わたしの体だ。
だけど、もう違う。
キミにはキミの意思が、あるじゃないか」

な、なにを言っているんだ!
ぼくは頭がないコトで
どれだけ苦しんだか!
お前には理解出来ないのか!
ぼくがどれほどっ
お前を探していたコトか!!

「キミにはキミの意思が
あるじゃないか」

お前はなんて、勝手なやつなんだ!!
ぼ、くがぁ!っああ嫌だ!
こんな苦しい、のに!
なぜお前は
拒絶してっ!!
あぁっあぁっ!!
お前はぁ!!

「落ち着いて、わたしの話を聞いて」

この首じゃない!
これじゃない!
これはぼくの首じゃない!!

欲しいのはこれじゃない!!


ぐしゃ、ぶしゅ。
振り上げた斧でその首を潰した。

同時に
ぼくの首元からも血が溢れる。

首を潰したのに、なんでぼくの体から血が流れるの。
潰した首はもうぐちゃぐちゃで元には戻らない。
血は、止まらない。

ぼくはただ、首が欲しい。

もう、どうでもいい。

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