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くるみとクローバー

ふと、思い出した映画のはなし。

文学好きな女子学生が教授と恋に落ち、教授は家族と別れ、女子学生と結婚する。夫は小説を書くが評価されない。妻がアドバイスする。手直しする。いつの間にか妻が書いている。発表は夫の名で。その時代、女は家庭に入ることが当たり前だったから。女の書いたものなど、読まれなかったから。
夫の浮気癖は病気のようだ。妻は裏切られる。しかしそれが創作の糧となる。夫の名で書き続けた結果、ノーベル文学賞を取る。その授賞セレモニーのときでさえ、夫は若い女を口説こうとしている。かつての私を口説いたときと同じ“くるみ”を使って!
ある記者が問う。「若い頃、あなたが書いていた作品を読みました。本来授賞すべきはあなたなのでは?」妻は夫婦だけの秘密を守るのだろうか。それとも、、、。

『天才作家の妻 40年目の真実』
(原題:The Wife)


男が女を口説くのにいつも同じ手(成功率の高いくるみという小道具)を使うのは、世界共通なのね、と笑ってしまったのは、この映画を観たあとだったかしら。

あの四葉のクローバーは、そうか。
彼なりの、成功率の高い小道具だったのね。
きっとこれまでにも何度も四葉のクローバーを探したんだろうなぁと思うと、本に挟まれたそれを受け取ったときよりも、可笑しさに心がゆるむ。そのとき彼が私に伝えようとした気持ちを今でも理解できないのは、女はいつも自分ひとりだけを愛してほしいと願っているのに、男は同時に多くの女を愛そうとするから。今は月を見上げるたびに、目をそらしてしまう。私は誰とも分け合いたくはない。

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