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日本酒を選ぶように志望校を選ぶということ

我が家には子供が3人おり、長女が今年の2月に中学受験を終えました。
4月に入って無事に入学式を迎え、ようやく学校生活にも慣れてきたので、一度我が家の中学受験を振り返ってみようと思います。

中学受験については賛成派、反対派、色々な意見を耳にしますが、私はゆるく賛成派です。まぁ、自分の選んだ選択肢を間違ったものにしたくなかったという意識が働いている気はしますが。また、コスパで言ったら公立中一択なのも異論はありません。ただ、別に選択肢の一つとして中受があってもいいよね、というスタンス。当たり前ですが万人におすすめもしません。

簡単に、我が家のことについて

超ざっくり我が家の受験をまとめると、新4年生である小3の2月に大手塾に入塾、そのまま個別などの追加課金はせずに同じ塾に通い続けて受験、て感じです。偏差値は初めから終わりまで殆どずっと50台で、最上位でもおちこぼれでもない、本当に本当にボリュームゾーンでした。多分中受される方はこういうパターンが多いのではないでしょうか。

中受のきっかけは、娘に合った学校で楽しく6年間過ごせればいいなというもので、最初から目指してる学校などはありませんでした。無理なく、本人のペースで勉強して、入れる学校に入れればいいな、と。週に何回も塾に通うだけ偉いなと思っていました。
でも、通塾を続けていると徐々に心に魔物が住み始めます。多くの親子関係が破綻するパターンは、この魔物のせいだと思っていますが徐々に「志望校」「偏差値」というワードに踊らされる様になっていくのです。

偏差値という魔物

最初のきっかけは塾からの電話でした。確か、通塾して1ヶ月くらい経った時だと思います。初めは塾での様子など話していましたが、途中で「志望校はお決まりですか?」と聞かれたのです。我が家は正直にまだ未定であることを答えましたが、すると「志望校を決めてください。子供の意見はコロコロ変わるので、親が主導で決めて、その学校に誘導してください」と言われました。
少し戸惑いましたが、初めてなこともあって、そんなもんかと納得し、夫と相談して娘の志望校を決めました。この時点だとまだ先の偏差値なんてわからないですし、学校見学もしてませんから、あくまでイメージで選んでいます。また、目標となる様な学校を選んでいますので、もちろん持ち偏差値より高めの学校です。

初めは形の上での志望校でした。でも、テストの結果が出るたびに、娘の偏差値が出るたびに、その志望校の偏差値と比べ始めます。本当に行きたいかどうかもわからないのに、このままでは第一志望に受からないぞと娘に勉強を促すようになりました。
娘はマイペースで特に勉強が好きなわけでもないので、なかなか机に向かおうとはしません。幸い我が家は共働きで、現実問題として娘の勉強に関わる時間が多くは取れませんでしたし、それを申し訳なく感じることも多かったのですが、もしずっと家にいて娘の受験で頭がいっぱいだったら、きっと大喧嘩していたと思います。

5年生になり、学校見学に行き始めました。
通学経路、校風、共学か別学か、進学実績、部活などを調べ、実際に行ってみて雰囲気を知り、校長先生の話を聞き。最初に掲げていた第一志望ももちろん行きました。すごくいい学校で、ぜひ娘を通わせたいなと思いました。そしてその想いが強くなればなるほど、娘の成績が気になります。もっと勉強すればいいのに。できるだけ口出ししないようにしていましたが、私の思いはおそらく娘に伝わっていたと思います。

6年生になり、そろそろ現実が見えてくる時期になりました。
娘の成績はあまり変わらず、第一志望は「勉強時間を増やしコツコツ頑張れば手に届く偏差値」でしたので、もっとやれば手が届く可能性があるのにと、歯痒く思う日々が続きます。
一方、併願校選びも始まります。確実に受かりそうなお守り校や、第一志望より偏差値を下げた実力相応校などもみてまわりました。どこもいい学校だなと思うのですが、どうしても第一志望と比べてしまいます。偏差値の高い学校の方が質の高いお友達ができるんじゃないかと考えたりもしました。今思うと「質の高い友達」ってなんだろうって感じですよね。でも、受験の最中にいる時は近視眼的になっていました。

6年生の12月に受験校を娘と相談して決め、1月から受験に向かっていくことになります。最終的に、第一志望は当初のままでしたが、第二志望以下は甲乙つけ難い4校を選び、お守り校も決め、この中ならどこに受かってもいいよねと家族で話していました。
そして、第一志望にはご縁をいただけませんでしたが、それ以外の学校から合格をもらい、この4月から通っています。
正直、第一志望に未練がないかというと、嘘になります。でも、楽しそうに学校に通う我が子を見て、この学校でよかったんだろうと思っています。その選択が正解か失敗かなんて人生を終えるまでわからないので、今のところは、という話ではありますが。

日本酒は自分の好みで選べるのに

突然話は変わりますが、日本酒が好きな人の中には、「八海山以外は呑まない」「大吟醸以外は受け付けない」「え?精米歩合25%!?好き!」みたいな銘柄やスペックに強くこだわる人がいます。念の為補足しますが、お酒は嗜好品で愛し方は自由なので、別にそれがいいとか悪いとかいう話ではありません。
ただ、学校選びはそれだと苦労するだろうなと、振り返った今では思います。中学受験に置き換えると、何がなんでも御三家、死んでも慶應、偏差値60以下は行く価値なし、みたいな価値観は、視野を狭めるだけだし、親子共に苦しいのではと思うのです。

私はあまりお米を削っていないお酒が好きです。あまりお米を削っていないお酒は、吟醸酒や大吟醸酒より価格的に安いことが殆どですが、だからといってそれらより劣っているとは思いません。ただの好みの問題ですよね。また人気が出過ぎて流通が間に合わないとプレミア価格になる日本酒もありますが、興味はありません。
お酒は自分の好みで選べます。でも、学校はつい偏差値というよくわからない物差しで見てしまう。偏差値が高いと、いい学校の様な気がしてしまう。本当は偏差値なんてただの入りやすさの指標だし、日本でしか通用しないのに、です。そして、そんな数字に踊らされて、1でも偏差値の高い学校が良い学校の様に思い込み、偏差値を上げるために親子関係が崩れてしまう。それって、意味ないですよね。

さらに話すと、私は以前に唎酒師の資格を取っており(ライセンス料払ってないので今は資格はありません)、ある程度日本酒のスペックの読み方はわかるつもりでして、日本酒度とか酸度とか精米歩合とか酵母とか米の品種とか杜氏さんとかで、飲む前にお酒の味をイメージすることがあります。
でも、呑んだら全然イメージと違うことはざらです。これは私の知識がポンコツなのはさておいても、飲んでみないとわからないよね、ということだと思ってます。何事もスペックだけじゃ語れないよね、と。
学校も同じで、校風とか、進学実績とか、インターエデュの口コミとかで色々想像はできますけど、結局入ってみないと子供に合うかどうかなんてわからないですよね。だから、何がなんでも特定の学校に固執するのって、そんなに意味ないのでは。

もちろんこれは我が家のスタンスで、特定の熱望校があるが故に勉強を頑張れるというお子さんもいるでしょうし、これが正解とも思っていません。ただ、日本酒を選ぶ様に学校を選べたら、不幸な中学受験で終わる家庭が減るんじゃないのかな、と思って、つらつらと書いてみた次第です。

無理やり日本酒に結びつけて、中受について語ってみました。
おしまい。

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