『HTML/CSSスキルアップレッスン』ここだけの話 vol.1(全4回)
企画から校了まで
コロナ禍に入って間もなくの2020年7月。翔泳社の編集者O嶋さんから「『HTML/CSS』に焦点を当てた書籍企画を検討しているのですが、ご執筆いただけないでしょうか?」というメッセージをいただいたいたところから全ては始まりました。
でも、これといって書きたいテーマがあるわけでもなし、そもそも「執筆」という業務が得意でないわたしは「声がけしてもらったのはうれしいけど、たぶんこのままシレッと逃げちゃうんだろうな」と投げやりな気持ちでぼんやりとメッセージを眺めていました。
そう、「書籍の執筆」は華やかでキラキラした仕事に見えるかもしれませんが、実際のところは泥臭く地味な作業の積み重ね。しんどい仕事なのです。
特にわたしは筆が遅く、ひとたび執筆作業に入ると他の仕事が手につかなくなることもしばしばなので、できることなら敬遠したい派です。
でもO嶋さんからのメッセージを受信して以降、なんとなく頭の片隅で書籍の企画に思いを巡らす時間が増え、やがておぼろげに輪郭が見えてきました。そして最初のやりとりから5ヶ月後の2020年12月、モヤっとした方向性をO嶋さんに伝えたところ前向きに受け止めてもらえたので、その後はディスカッションを重ねながら2人で企画の形に落とし込んでいき、数度の調整を経て2021年6月に編集部の会議を通すことができました。
この時点で、最初の声がけからすでに約1年。ようやく執筆スタート!……と思いきや、すぐに原稿を書き始められるわけではありません。
まずは企画時に作成したざっくり台割(目次)をブラッシュアップし、それぞれの項目がだいたいどのくらいのページ数になるのか推測したり、書籍内の解説で使うサンプルサイトのデザインをなじみのデザイナーさんに発注したり、そのカンプをコーディングしたり。技術書を書くには、前準備もそこそこ時間がかかります。
結局、原稿づくりに着手できたのは2021年の末でした。
はりきって「1ヶ月で1章ずつ書きます!」と宣言したものの、他の業務と重なって締め切りを守れないことも何度かありました。途中、信用しているクリエイターさんたちにお願いしてレビューしてもらったりしつつ、何とかかんとか7章分の原稿を書き終えたのは2022年の10月。
その後、2ヶ月ほどかけて修正作業や図版の追加作成、コラム執筆などを進めました。2022年12月半ば、O嶋さんから「校了です!」のメッセージをもらった日の夜に祝杯をあげたのは言うまでもありません。
思い返せば、企画から執筆完了まで丸2年かかりました。いやー、長い。長すぎる。
ときどき書籍執筆の流れについて聞かれるので細かく書き出してしてみましたが、1冊の本を執筆するための工程ってこんなにたくさんあるんですね。
それにしても、IT系の技術書をわたしほどダラダラ時間をかけて書く著者は珍しいのではないでしょうか。O嶋さんも翔泳社さんも、よく最後まで付き合ってくださったものだと改めて感謝しています。
この本を書きたかった理由
書籍執筆が苦手なわたしが(2年もかかったとはいえ)最後までがんばれたのは、「講師としての経験を形にしておきたい」という強い思いがあったからです。
というのも、わたしは2009年からクリエイター向けの講座講師として、そして2018年からは株式会社メンバーズさんの技術顧問として働く機会をいただいたおかげで、多くの人に「教える」経験を積むことができました(現在も継続中です)。
その中で、気づいたことがあります。それは、多くの受講者さんに共通の「つまづきポイント」がある、ということ。……あっ、もちろん2009年と2023年現在では、解説しているツールも手法も大きく異なるんですよ。それでもベースにある迷いや悩みのタネは同じ気がします。
数え切れないくらいたくさんの受講生さんとの質疑応答を重ねてきた自分、1,000を越えるコードレビューを続けてきた自分だからこそ書ける本があるのではないか。そういう本なら、誰かのお役に立てるのではないだろうか。
そんな思いで、この本の企画を立ち上げました。
「技術者」としてはショボショボなわたしに「講師」としてのチャンスをくださった企業や学校、わたしを信用して質問したり相談してくださった受講生のみなさんに恩返しできるめったにない機会だと思って精一杯取り組んだつもりです。