『HTML/CSSスキルアップレッスン』ここだけの話vol.4（全4回）

こんにちは、千貫（せんがん）りこと申します。 拙著『プロのコーディングが身につくHTML/CSSスキルアップレッスン すぐに活かせてずっと役立つ現場のテクニック』（2023年1月17日、翔泳社より発売）を知っていただくために、執筆の裏話や著者の思いを全4回に分けてお届けします。もしこれを読んで『HTML/CSSスキルアップレッスン』に興味を持ってくださったら、こんなに嬉しいことはありません。

こんな人に読んでもらいたい！

本を書くときには、まず対象読者を設定します。この本を企画したときも、最初にそれを考えました。
これまでに出会った受講生さん、学生たち、講師仲間、スクール運営会社の担当者さんなどの顔を浮かべながら「誰に読んでもらうのが一番しっくり来るかしら？」と思いを巡らせたのですが、最終的に落ち着いたのはこんな人たちです。

①基本はすでにマスター済みで、来たる実務に備えたい方

HTMLのタグ、CSSのセレクタやプロパティなどをひととおり勉強済みの方。
XDやPhotshopなどで作られたデザインカンプから画像を書き出し、ブラウザ上でカンプを再現できる人。または「その直前くらいまではやれるぞ！」という方に読んでいただきたいです。

というのも、本書ではHTMLタグの意味やCSSプロパティの役割はほとんど説明しておりません。「h1要素は見出しを表す」「背景色を指定するにはbackground-colorプロパティを記述する」といった基礎知識を持たない方は内容を理解できないかもしれません。
ただ、多くの人がつまずきがちな、レイアウトに関連する仕様（Flexbox、Gridなど）についてはそこそこ丁寧に解説したつもりです。特にWebデザインの再現において「必須」と思われるFlexboxにはページ数を割きました。

あっ、そうそう。
まさに「ここだけの話」ですが、わたしはこの本を書いたおかげでようやくflex-growプロパティやflex-shrinkプロパティを理解できました。これまでは仕様書を何度読んでもピンとこなかったんですが、人間、必死になると何とかなるものですね笑

ちょっと話が脱線しますが、講師業や執筆業に携わると、誰よりも自分自身が成長できます。ですから、クリエイターのみなさんには「誰かに教える」機会を積極的に作っていただきたいです。たとえ仲間うちの勉強会であっても、緊張感をもって知識を整理したり棚卸することでビックリするほど理解が深まりますよ。

②学校の先生、講師の方

わたしが非常勤講師として働いていた専門学校では、教科書の選定から年間カリキュラムの作成まで先生に一任されていました。授業を自由に設計させてもらえること自体はありがたいのですが、学生さんたちが冬休みに入る時期になると「来年度の教科書どうしよう」という思いで頭がいっぱいになりました。

webの世界は流れが速く、仕様解説をメインとした書籍を2年連続で教科書採用するのは難しかったので、毎年自腹を切って何冊かの書籍を購入しては悩みながら選定していました。
そんなわたしが教科書に求める条件は以下の2つ。

1. 自分のポリシーに合っていて、解説しやすい

2. 練習問題が用意されている

たった2つだけなのですが、両方を満たしている書籍は意外と少ないものです。
まずは内容。当然といえば当然ですが、わたし（先生）が授業で話す内容と教科書の内容がズレていると学生たちが混乱してしまうので、できるだけ著者さんの考え方と自分のそれがズレていないものを選びたいと思っていました。

また、授業中ずっと先生の話を聞いているだけでは学生たちが飽きてしまうし、座学では知識が十分に身につかないので実習は必須です。ただ、実習のネタを用意するのって、なかなかの重労働なんですね。わたしが週1で2コマ（3時間）の授業を受け持っていたときは、次の授業で使う実習課題を作るだけで1日が終わってしまうこともありました。

そんな経験から、本書では思い付くかぎりの練習問題を盛り込みました。
「練習問題」と言ってもテスト的なものばかりでなく、本文で解説された内容を実際のデータでなぞることを｢練習」としている場合もあります（練習問題データはダウンロードできます）。書籍も授業と同じで、ただ読んでいるだけでは「分かった気分」になって終わりがちです。本に掲載されているコードを実際に書いて（ブラウザで確認して）みることで、「腑に落ちる感覚」を味わっていただけるといいなと思っています。

実はここだけの話、「小さな練習問題をふんだんに入れよう」と思い付いたのは執筆過程の最後の方だったので、めちゃ大変だったんですけどね。
先生の負担を少しでも減らせるよう工夫したつもりなので、全国の先生、教科書採用をお待ちしております！笑

さて。全4回にわたってお届けした「『HTML/CSSスキルアップレッスン』ここだけの話」、いかがでしたか？
この本は、わたしにとって7冊目の著書です。といっても過去6冊のほとんどは、すでに用意された優良企画に乗っからせてもらっただけの「ラッキー著作」です。

でもこの本は、自分にとって初めて「やりたいことをやりきった」と言える一冊になった気がしています。そのぶん大変なこともありましたが、決して辛いわけではなく、全てにおいてニコニコしながら取り組むことができました。もちろん敏腕編集者のO嶋さんが手厚くサポートしてくださったからこそなのですが、やっぱりちょっと特別な思い入れがあるのです。

「販促のために」と書き始めた裏話ですが、書き進めるにつれてこの2年間をふりかえったり、自分の考えを再確認する良い機会になりました。
最後に、ここまで気ままに書き連ねた駄文を読んでくださったあなたに深く深くお礼を申し上げます。お礼ついでに、もし書店でピンクの表紙を見かけたら、手に取ってパラパラしていていただけるととても嬉しいです。