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さらっと読書の時間。読み手から書き手に参加したくなる本

「アドバイスかと思ったら呪いだった。」

作者:犬山紙子(ポプラ文庫)の作品。他人からのアドバイスを装ってかけられる言葉の中には、呪いめいたものが混ざっている。投稿者からそんな言葉を集めて作者がお焚き上げするような内容になっている。短いセクションで区切りが多いため移動中の電車の中や寝る前の数分など隙間時間に読むのに適した構成だ。筆者は随時、経済などの勉強系の本、エッセイなどの気楽系の本、珈琲を入れて何時間か時間を確保したい東野圭吾系の本を並行して読んでいる。この本は間違いなく気楽に読めることが魅力の本だ。

自分事しか見当たらない

読み進めると、あの時のあの会話がなんとなくのどに詰まっていたけど、そうか、アドバイスじゃなくて呪いだったからかと気が付き、すっきりしたり、怒りに正当性を見出し感情がぶり返したり、怒っている投稿者を見て逆に冷静になれたり、メタ認知をすることで笑い飛ばせたりする。だが辛いのは自分が呪いをかけていたことに気づかされる点だ。自分はアドバイスのつもりで呪っていたのだからたちが悪い。やったりやられたり、意識的だったり無自覚だったり、最後には、お互い様だと人のことも自分のことも許せる心境になって本を閉じられるところがこの読書体験のいいところだと思う。

投稿者と作者の両方の役割を体験して楽しむ。

読書しながら自然に様々なシーンが回想されるので、思い浮かんだことを一つ文字におこして本に参加してみよう。


34歳 女性 会社員 ricoさん
【結婚し、子供2人を育てている、バリキャリの女友達と久々に再開した時に言われた一言。
「結婚してなくてさぁ。子どももいなくて、何のために生きてんの?」
強い風が吹いて目にゴミ入った時と同じ気持ちになりました。何を言っているのか一瞬わからず、その後で、ああ。この人は今すごく幸せなんだな。よかったな。と少し嬉しくなりました。それと同時にすごく幸せだったり、すごく不幸せだったりすると視界が狭くなり、価値感が偏る場合があるみたいだから自分は気を付けようと思いました。】
女友達からの一言は「結婚や子どもを持つのはいいよ。あなたも早くしなよ。」というアドバイスが潜んでいそうな言葉ですね。この場合は何のために生きてるのかをまじめに返答しないでricoさんが心で思った通り「〇〇は今すごく幸せそうでよかったね」と返すのがいいかもしれません。2重の意味を込めて「気付きをくれてサンキュー」と流しちゃってもいいかも。




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