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暗号資産の利益にかかる節税を本気で考えてみた

ビットコインをはじめとする暗号資産は多くの「億り人」を生み出したが、同時に日本の暗号資産での利益にかかる税率のえげつなさは、多くの富裕層を海外に移住させてしまっている。
ここでは、ただの会社員である私が「もしビットコインで1億円とか儲かっちゃったらどうしよう~」の延長で、その時に備えて本気で節税方法(もちろん合法!)を考えてみようと思う。

日本での暗号資産の利益にかかる税率は最大55%

この辺の税率については別の記事で詳しく解説しているが、仮に1億円以上(3000万円以上でも)暗号資産で儲かった場合、日本の今の税制では所得税と住民税を合わせて55%の税率となり、利益の半分以上が持っていかれることになる。
多くの暗号資産で稼ぐ富裕層が海外に移住してしまうのはこのためだ。(海外では非課税の国も多い)

さて、節税を考えよう

では早速考えうる節税方法を列挙しながらそのフィジビリティ(実現可能性)について検証していきたい。

①毎年20万円ずつ利益確定

まずは王道ともいえるこの方法。
暗号資産の利益にかかる税金(雑所得)は年間で20万円以内であれば申告不要(年末調整等をしている会社員の場合)とされているので、これを生かして毎年の利益確定を20万円以内にとどめ続けるという方法です。
これであれば理論上は1億円儲かっていようがすべての利益から所得税を免除できます。
しかし、1億円の利益を20万円ずつ分配するとすべての利益を得るのに500年かかります。現実的ではありません。
100万円程度の利益であれば有効な方法かもしれません。

②暗号資産で直接モノを買う

ビットコインやイーサリアムなどで直接決済が可能なサービスは増えており、海外では高級時計や車などを直接購入することができるサービスも人気です。
ここで浮かんでくるのが、「利益が出ている暗号資産で直接モノを買えば利益確定してないから実質非課税で処理できるんでは?」という疑問。
まず、決済手段として暗号資産というのは資金決済法の「支払手段の譲渡」に該当するため消費税の対象にならない。
この点で一見お得な支払い方法のように見えるが、「じゃあ譲渡だから含み益は考慮されないね」というのは甘い考えである。これについては国税庁も明確に所得税法を踏まえて次の回答をしている。

保有する暗号資産で商品を購入した場合、保有する暗号資産を譲渡したことになりますので、 この譲渡に係る所得金額は、その暗号資産の譲渡価額とその暗号資産の譲渡原価等との差額と なります。

国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて」

③税率の低い海外に移住する

これは多くの富裕層が選択した手段でもあるので実績でいうと可能ということになる。
ドバイやシンガポールなどが人気だが、それ以外にも暗号資産での利益に対する課税が低い、または非課税の国に行って利益を確定させれば利益にかかる税率を著しく下げられる可能性がある。

ただ、これについてはただ単にその国に行って売ればよいという単純な話ではない。
簡単に言うと、一時的な渡航や移住でこれらの国に行って利益を確定させても「海外に居住している」と見なされなければ帰国時に課税される可能性が高い。(場合によっては二重に課税される場合すらある。)
これを踏まえて海外での税制を利用して非課税(微課税)しようとするなら下記の方法が考えられる。

・永住権を取得し「その国に住んでいる」状態を作る
・就労ビザなどで海外企業で働き「その国で働いている」状態を作る
・日本の企業の会社員として海外に「駐在する」形をとる
・日本に一生帰ってこない

どれもかなりハードルが高そうだが、これができればかなりの確率で合法で非課税(微課税)の暗号資産運用ができることだろう。
すでに数億円レベルの含み益を暗号資産で出している場合は本気で考えてもいいだろう。

④法人化する

個人では雑所得として最大約55%(住民税含む)にも上る所得税だが、法人として上げた利益であれば法人税が適用されて最大で約30%に抑えることができる。
事業として暗号資産の運用をしているということであればこの税率で利益を確定させることができるうえ、さらに法人としての運用は下記のメリットもある。

・最大9年間損益通算できる
・経費を計上できる

これらのメリットを考慮すれば数千万円レベルの利益でも十分に法人化はメリットがあるといえる。
ただ、重要なのは上記のスキームが適用できるのはあくまでも「法人として上げた利益」になのですでに個人として利益を上げている場合にそれを法人に移管するといったことは出来ない。
法人として運用するのであれば最初(暗号資産の買い付け時)から法人である必要がある。

それを踏まえて「③税率の低い海外に移住する」との合わせ技で、
自分で作った法人の従業員として海外に駐在すればよい
というハイブリッドスキームも思いついたが、これも当然「税金逃れ」と見なされると課税対象になるほか、労働基準監督署に事業所開設届を出すなど面倒な手続きも増えることになる。
これも含み益が数億円レベルであれば検討の価値はあるだろう。

⑤税制が変わるまで保有し続ける

暗号資産に関わる税制は整備が追い付いていないことが多いため、毎年アップデートを続けている。
日本としても高い税率のせいで富裕層が海外に逃げてしまっているのは税金の機会損失につながっているので、将来的には株式等と同じ(約20%)レベルの税率に見直される可能性は高い。
もちろん税率が下がるという保証はないが、すぐに売却する必要がないのであればしばらく(数年レベルだが)税制の改善を待つというのもありだと思う。
自分で望んでいるかどうかは別として現在の税制を踏まえ「売るに売れず」この待機状態になっている億り人も多いことだろう。

しかし、税制を待っている間に暗号資産価格が下がってしまっては元も子もないので比較的短期、中期的に売却益を確定させたい場合には向かない戦略となる。
この判断をするかどうかは、長期的な暗号資産価格の見通しをどう判断するか次第になるだろう。

【補足】個人として事業所得扱いも可能に

最後にだが、最近は個人でも一定の条件を満たせば暗号資産での利益を「雑所得」ではなく「事業所得」として扱える兆しが出てきた。(2022年に国税庁が大きくスタンスを変えた)
具体的に国税庁からの記載を引用すると

暗号資産取引により生じた損益は、邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益と認められますので、原則として、雑所得(その他雑所得)に区分されます。
 ただし、その年の暗号資産取引に係る収入金額が 300 万円を超える場合には、次の所得に区分されます。
・ 暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がある場合・・・原則として、事業所得
・ 暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がない場合・・・原則として、雑所得(業務に係る雑所得)

「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)(令和4年12月22日)」

つまり
「収入金額が300万円を超えていて帳簿書類の保存がある場合」
には事業所得として申告が可能になったということです。
会社員の場合は給与と合算しなければならないことに変わりはありませんが、事業所得ということになれば損益通算、青色申告控除が出来るということになります。
これは長期保有を前提とした場合にはその手続きや面倒さを鑑みるとコスパが悪いと判断しましたが、一部の人にとってはメリットがあります。

基本節税スタンスの最適解

以上まとめると、利益の額によってあるいは相場観によって暗号資産の節税戦略は変わってくるが個人的には数百万~数千万円の含み益であれば

税制改正待ちホールド(会社員であれば年間20万円分の利益をお小遣いとして確定しながら)
②待っている間に数億に膨れ上がったら(その時の税制を勘案して)海外への節税移住を本格的に設計
③税制が20%程度に改正されたら順次利益確定
④待っている間に相場が暴落したら買い増しして②か③を待つ

の基本スタンスが最適解のように思う。
(状況や考えが変わったら更新するが)

いずれにしても、NISAのように非課税な制度下で微々たる利益を出すよりも大幅に課税されたとしても(税金分を上回る)莫大な利益を追求するための枠を自分の中で持っておくほうが、人生においてロマンがあることは間違いないだろう。

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