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【雑文】滑舌オタクの呟き〜歌う時の子音問題は沼が深い

初めて春馬君の歌を聴いたのは、おそらくTWO WEEKSを観ていた時のFight for Your Hartだったと思うのですが、実はあまり記憶にありません。その次は、おそらくNight DiverのMVか、Fight for Your HartのFNS歌謡祭のかの「伝説のパフォーマンス」のどちらかだと思うのですが、いずれもダンスに釘付けになっていて、歌をちゃんとは聴いてなかった。

春馬君のダンスについては、それだけいくつもnoteが書けてしまうので、置いておくとして、とにかく、それくらい春馬君の歌は、それ単体では、さら〜と私の上を通り過ぎて行ってました。
心地よすぎて脳内ホルモン出まくりだったのか、日本語歌詞の歌を聴いたのが久々で、私の脳内のセンサーの調整が上手くいってなかったか。。。

ところが、ある時、たまたまこの動画を見ました。


これ見たら、俄然やる気になりまして。
歌ってみたくなりました(笑
日本語の歌を練習するのは、実に数年ぶり。
いわゆるJ-POPというジャンルは、20年ぶりくらいでしょうか。

で、何十回と聴きました。
いや、何百回かな。

おかげで、Spotifyまとめによると、今年1番聴いた曲は、Night Diverだそうです。
歌いたくて聴き始めたのが、10月の初旬。
そこから2ヶ月ちょっとで、今年1番聞いた曲にランクインしたんだから、どれだけ再生したんだという話です。何百回も聴かないと歌えないの、お前歌下手かよ、というツッコミは甘んじて受けたいと思います。

実は、趣味で細々とボイトレをやっているので、年間数曲は練習曲として新曲を覚えます。
毎度の事ですが、腑に落ちるまで、何十回も聴くのは当たり前。たとえ元々知っている曲でも、「課題をクリアして歌える」ようになるまで何度も繰り返して聴く必要があるのです。

にもかかわらず、それらの曲の再生回数を大幅に超えて、堂々の1位がNight Diver。
練習曲もちゃんと聴きましょう←自分

というわけで、専門家レベルではないけれど、ボイトレマニアとしての経験もありつつ、何回も聴いてるうちに、春馬君の真似をして歌おうとした時、いくつか意識的に取り入れるべき発音上のテクニックがある事に気づきました。逆の言い方をすれば、春馬君の表現のある一部分は、そのテクニックを使うことで、誰でも再現できる、という事です。もちろん、表現とは全身的なアクションによるものだから、口先だけ真似ても所詮「口真似」で、ごく一部の再現にしかすぎないわけですが、ボイトレマニアとしては、自分の表現力の一部として、意識的に使いこなせるようになって損はないテクニックかなと思います。

相変わらず前置きが長いですが、今回は、かなーりマニアックな滑舌のお話です。
最後まで読んで頂けたら、あなたも滑舌沼に落ちる?かも?

春馬君は子音が弱い

『Night Diver』をまさにloop loop loopして聴きながら、私がまず気になった事は、子音の発音が全体に弱いという事です。いや、これは特徴の差こそあれ、それ自体は、日本人の多くにありがちな事ではあります。私が気になったのは、「セリフを言う」あるいは「歌を歌う」という人前で言葉を発する事を職業としている人としては、「弱い」のではないかという点です。

「子音の発音が弱い」こと、それ自体は、個性の範疇だと思います。
テレビや映画など、映像の仕事が中心の俳優さんなら、むしろ味のうち、ともなり得る。が、生の舞台でなにかを表現する場合には、少し事情が異なります。生で表現する場合は、子音が弱いと言葉は届きにくい場合があります。
例えば、ミュージカルの俳優さんの歌い方は、普通の歌手の方の歌い方より、より滑舌よく歌うのが普通です。なぜなら、歌の歌詞が台詞だから、それを一言一句漏らさずお客様に聞き取ってもらわないといけないので。

そういうミュージカル調の歌い方を「子音を立てる」とボイトレでは習います。
普段の感じからすると、やりすぎなくらい子音を立てて、ようやくお客様に届くレベルになるのが普通。

その感覚で言うと、春馬君のNight Diverは、普通の歌手として考えても、ところどころ聴き取りづらいくらい子音が弱い。
音楽としては、引っ掛かりがないから、心地いいけど歌詞が届いてこないのは少し弱すぎかなぁ?と最初は思いました。
そういう歌い方をあえてする歌手の方もいるから、いいか悪いかは、聴く側の好みの問題に帰結するのですが。

歌う時の日本語子音ってなかなか厄介で‥

子音は、2つの要素に分解する事ができます。空気の流れが唇や舌によって遮られる摩擦音と母音です。「さ」という子音をローマ字で書くと「SA」と書きますが、「S」が摩擦音、「A」が母音。日本語は、この「S」と「A」をほぼ同時に発音する言語です。これ、細かく語り始めると一晩じゃ済まなくなるので、ここでは「そんなの当たり前じゃん」と思って頂ければOK。で、同時に発音するから、子音が弱くなる。なぜなら、発音するのになんかしらの摩擦が生じる摩擦音の方が、摩擦なしで発音できる母音よりも面倒(?!)なので、同時に発音しようとすると、端折らざるを得ない、つまり、聞こえにくくなるわけです。

例えば、Night DiverのBメロ部分

明日になれば治るような
胸に突き刺さる棘の行方
知らんふりして見ないようにして
気づいたら戻れないような気がした


は、まるで早口言葉のように歌います。特に後半2行はブレスする間もないくらいのテンポで歌いますが、こうなると摩擦音をカチカチまたはシャキシャキ発音してたら、追いつかなし、音楽的にも美しくない。
そもそも、テンポに合わせて歌うためには、子音の摩擦音の部分を気持ち拍より早めに発音して、母音部分をオンテンポで発音するように歌うのですが、テンポが速い曲でそれをやると、走ってるように(テンポより速く演奏する事)聞こえてしまうから、非常に加減が難しいのです。

子音を立てずに歌うとどうなる?

そこで、春馬君の子音を立てずに歌う歌い方が、効果を発揮してきます。
音楽的なところでいえば、よりリズムを正確に刻む(刻んでいるように聞こえる)ことができるメリットがある他、歌う人にとってもその方が易しい。
聴いてる人がうける印象としては、「軽くて、柔らかく、曖昧な感じ」になるかと思います。

知らんふりして見ないようにして
気づいたら戻れないような気がした

なにか、本当は見なくてはいけないものを、実はわかっていたけど、わざと見ないで過ごしてしまい、気づいた時にはもう遅かったかもね。。。

この段階では、あまり超絶後悔してる風のノリではないこの部分の歌詞。「軽くヤバイ」くらいの軽いノリなので、この「軽くて、柔らかく、曖昧な感じ」の歌い方は、わりと軽めのノリで歌うこの部分に、ぴったりの歌い方なのです。

春馬君っぽく歌うためのテクニックはこれだ!

さらに、「軽くて、柔らかく、曖昧な感じ」を決定づけるテクニックとして使えそうな春馬君の特徴がもうひとつあります。
それは、摩擦音の中でも破裂音を破裂させないという事です。ここ、重要、テストにでます!

破裂音とは、具体的に言うと「マ行」「パ行」「バ行」。
この子音は、上下の唇を一度合わせて、空気の通り道を塞いだ状態から、空気圧の勢いで摩擦音を作ります。
春馬君は、この時、上下の唇をつけるかつけないか、あるいは、つけずに発音しています。

この春馬君の独特な破裂音の特徴は、持って生まれた骨格など、元々備わっていた癖のようなものだけではない気がします。つまり、表現の一部として、あえて意識してやっている節が感じられる。
そうなると、他の作品では、どんな状況か気になって来ました。

破裂しない破裂音の表現上の効果

たまたまですが、Night Diverをガンガンに聴いていた時期と前後して、『Tourist』を観ました。
もう、春馬君の大人の色気にクラクラしました。

で、なにしろ春馬君の滑舌問題に興味を持っていた時期ですから、もう口元ガン見です。
セリフを言うとき、その演技内容によって、春馬君が子音をどういう風に使い分けてるか、ひたすらガン見。

でやっぱり、全体的に破裂音の子音が弱い事を確認。

ちゃんと数をカウントしたわけではないけど、特に、相手役の女優さんと良い雰囲気になった時などの甘〜い演技、男性に使うのが正しいかわかりませんが妖艶な演技の時、その傾向が強くなる気がします。

その破裂しない破裂音が、ふんわりと掴みどころがなく、いやらしくないのに色っぽい真の雰囲気にぴったりなのです。
あれ、破裂音がくっきりはっきり破裂してたら、雰囲気もなにもあったもんじゃないと思う。

少なくとも真は、破裂しない破裂音の男でした。

そうこうしているうちに、春馬君の他の楽曲も聴くようになりました。
You、One、You & I。
このカップリングの三曲は、受け取り方次第ではありますが、どの曲も官能的かつ抒情的な歌詞の曲です。独特な空気感が漂うこの難しい三曲を、春馬君は見事にアートに昇華させて歌っています。

この三曲も聴き込むだけでなく、歌っている映像があれば、口元ガン見。
破裂音の発音をひたすらガン見。

この頃になると、もはや、変態の域です。

で、やっぱり破裂しない破裂音なんですね。

上下の唇がくっつくかくっつかないか、ビミョーなところで、発音している。
その曖昧な感じが、揺さぶられるような感情を表現するのに、とても効果的に感じるのです。

一方で、普段の喋り方はどうなのかなとインタビューの映像を見たり、オトナ高校などちょっと振り切れ気味の台詞回しの映像を見ると、そこまで子音の弱さが気になる事もない。
とは言え、これは比較の問題で、歌や真の時ほど弱くないという意味でして、決して強いわけではない。おそらく元々子音が弱めの傾向にはあるのだと思います。が、とにかく、いわゆるボーカル用語で「ニュアンスを出す」のに、破裂音の破裂の程度を意識的にか、無意識にかわからないけれど、とにかく変えている人なのです。春馬君と言う人は。

英語でも同じ効果なのかも?

こういう歌い方の人、春馬君の他にもいるかなぁとスマホのプレイリストを見ていて、ふと目に飛び込んできた、いや、耳に飛び込んで来たのが、マイケル・ジャクソンの『Heal the World』でした。

Heal the Worldの歌詞はこちら

この曲の歌詞の中に「better place 」という表現があります。
betterのb、place のpは、それぞれ破裂音です。

これが、見事に破裂していないのです。

特に「place」という単語は、歌詞の内容的にもこの曲のキーワードで、強い意味が込められ、セットになる形容詞を変えて何回も繰り返して出てきます。

それだけキーワードなら、より聴衆に届けようと意識が働いて、アクセントのある「p」の発音が強くなってもおかしくないと思うのですが、マイケルはそうは歌っていない。

これ、日本人が考えるよりかなり高等テクだと思います。英語のネイティブスピーカーにとって、「p」は破裂音である事が当たり前。というか、破裂しない「p」は、英語にはないのです(サイレントのpは除きます)。それをあえて破裂させずに歌っている。マイケルがどこまで意識的にやっていたかはわからないけど、Heal the World の世界観に合わせてニュアンスが出ている事は確かです。

春馬君っぽく歌うには子音のコントロールでニュアンスをだす

さて、そんなこんなでNight Diverを自分でも何度も歌って録音してみました。
破裂音をコントロールして歌うのは、日本語が母国語の私には、さほど難しい事ではない、はず‥

Night Diverの歌詞の破裂音の単語としてはこんな感じ。

「瞼」「僕」「プライド」「言葉」「ばっか」「見ない」「このまま」「beats」「loop」


特に「僕」という言葉が何度か使われており、「僕」の「ぼ」の音が拍の頭にあたっていたりして、音楽的に他の音より少し強めに歌う必要がある時もあえてぼかして発音してみます。

破裂音を歌うのに唇を完全に閉じないと、その分空気が多く漏れるので、慣れるまで、息のペース配分がちょっぴり難しい。
それと、「loop」のような英単語を歌う時、語尾の破裂音を抜き気味で歌うと、「ルー」となってしまい「loop」という単語に聞こえなくなってしまう。

そんなこんなで、滑舌の雰囲気は春馬君に寄せる事はできるのだけど、息が足りなくなったり、テンポがおかしくなったり、ちょいちょい難しい。

でも、ニュアンスは確かに出しやすい。
程度を変えてみると、また全然違って聞こえたりする。
いろんなパターンを試してみましたが、破裂音コントロールだけで、こんなに違って聞こえるのか!とかなり驚きました。

破裂させない破裂音、なんとか自分のモノにしたいところです。

というか、これ、思ったけど、普通YouTube とかで披露するネタだよなぁ。しないけど。
ここまで書いておいてナンですが、noteでテキストで書いてる自分がちょっとおかしくなってきました。

春馬君の滑舌は、他にもいくつかの特徴があります。
表現と滑舌の関係性になにかしらの法則が見つけられたら、またあえてnoteで書いてみようと思います(笑

そして、今日も修行は続く。

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