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【ミュージカル】『プロデューサーズ』がとっても楽しかった話

Rickyです。

ついに、なんだかんだ言いながらも(?)ミュージカル『プロデューサーズ』を観てきました!

『プロデューサーズ』公式webサイト

この作品観たかったのです。今月、何を観ようかなと思った時点で、絶対観たい作品ベスト1でした。なんてったって、トニー賞史上、最多部門受賞作品!この20年近く、破られていない記録です。

さらに、井上芳雄さんの主演。あまり弾けるコメディーなイメージじゃない俳優さんですが、あの声は絶対コメディ向きだなって初めて観たときから思ってました(初めて観たのがいつのどんな作品だったのか、まったく記憶にないですが(^^;)。一見、真面目そうな人ほどコメディで弾けた時の振れ幅が面白いのはお約束だし。

もう、観ない理由は全くない。けど、今月は諸事情で『RENT』を観に行ったので、お財布事情的に終わったわけです。が、往生際悪く、あちこちで「観たいなー観たいなー」と言ってたら、チケットが棚ぼた的に降ってきた!

金は天下のまわりもの、じゃなくて、チケットは天下のまわりものです(違っ!

もう、神様が行けと言ってるよね!

というわけで、神様のお導きによって(!)、1年ぶりくらいでシアターオーブへLet's Go!

席について、ステージを観たら、シアターオーブのではなく、作品の舞台美術の緞帳がかかっているのがいい感じ。エンジ色のビロードのような、いかにも60年代あたりのブロードウェイの劇場の設え風。緞帳見てるだけで、ワクワクする!

生オケの音がしてるのもいいっ!それだけで贅沢な気分になってテンションが上がります(ミュージカルファンの性ってやつです)

Overtureが始まると、最初の数小節で、曲がイケてるミュージカルなのが伝わってくる。いかにもザ•ドタバタコメディな、いかにもザ・ブロードウェイな雰囲気の曲。ヒットするミュージカルのOvertureはこうでなくちゃ!という曲。もう、いい予感しかない中で、幕が上がりました。

最初にふたりの女性の案内係が出てきて歌います。うまい!ってか、この声は…もしや、福田えりさん?私の好きな女優さんの声な気がします。歌ってよし踊ってよし、おまけに美人さん。いろんなミュージカルのアンサンブルの要としてご活躍の女優さんです。お元気でご活躍の姿が見られて、ハッピー。ますますいい予感がする。

曲もすごくいい。昭和レトロな感じが、物語の雰囲気とよく合ってる。そして役者泣かせレベルの難曲率高し!一曲としてイージーな曲がない。セリフと曲の境目が曖昧な曲も多いし、一幕の終わりはレミゼのOne Day Moreよろしく、1幕で使われた曲を、全キャストが一度にハモりながら歌います。あぁ、もう、大好物です。

そして、ダンス。とにかく踊る。めちゃ踊る。踊らないミュージカルより踊るミュージカルが好きです。ミュージカルなんだし、踊ってなんぼです。その意味で『プロデューサーズ』はというと、ラインダンスあり、タップダンスあり、アンサンブルさんたち、歌って踊ってはけて着替えて、また歌って踊ってはけて着替えて、実は、メインキャストより忙しいんじゃないか?という大活躍。観てるほうは、めちゃ楽しいです。振り付けも面白いし。いやはや、楽しいったらありゃしない。

後半は劇中劇のシーンも多く、華やかなシーン目白押し。2分おきに爆笑させておきながら、華やかで、風刺が効いていて、ホロリとさせる。これをエンターテイメントと言わずして何と言う!最高傑作と枕詞がつくのも納得でした。

今回、私的にMVPを差し上げたいのが、ウーラ役の木下晴香さん。役柄がおいしい。けど、それだけでは終わらない。そのおいしさに対してあまりある歌唱力。アメリカ人から見たスエーデン人って、田舎臭くてダサいイメージなんですよね。で、歌がめちゃ難しい。難しいけど、サクッとダサく、かつ、めちゃめちゃ上手く歌うんです。喋るとめちゃダサいのに歌うとダサうまい。そのギャップが面白かった!不思議なリズム感のウーラの台詞回しに、パンチの聞いた歌い方で、一気になにもかも持っていきました。ボケ役としての間合いがお見事なコメディエンヌぶりでした。今、思い出しただけでも、くすくす笑えてきます。

レオ役は吉沢亮さんの回でした。

吉沢さん、どんくさいレオ役にもったいないくらいの容姿。カッコよすぎないように意識してか、猫背でダサくてぎこっちーな動きで、文字通り「体当たりの熱演」でしたね。歌は練習されたんだなあというのは伝わってくるものの、いかんせん付け焼刃。普段からもう少しレッスンを積んだら、ミュージカルの世界でも通用するようになるんじゃないかなあ…と思いながら観てました。が、よく考えたら、そりゃ、井上芳雄さんと、だもの。歌がかすむわけだ。こりゃ失礼。でも、あの喉の使い方は、声つぶれちゃうんじゃないかと心配になりました。ダブルだからいいようなものの、出番の多い役で一か月の公演は厳しそう。でも、まだまだ若いしね。色々チャレンジ真っ最中、というところでしょうか。


井上芳雄さん、いや芳雄様。とにかく、弾けてましたねー。王子キャラは完全封印。私は芳雄様の『ダディ・ロング・レッグス』が大好きで。あのダディ役は、やや天然ボケで、弾けきらない戸惑い気味の弾けっぷりがツボなんですが、今回は全力で弾けるツッコミ担当。

間合いを相当研究されてるなぁという感じは伝わってきました。
ただ、最近のミュージカルはみなそうなのですが、上演時間を短くするために、あまり芝居で間をためたり、ゆっくり話したりしない傾向にあります。
そのせいか、少し焦り気味かな、と思うところが、ちょいちょいありました。それでなくてもセリフの量も多い芝居。テンポよく、それでいて、掛け合いの間合いもしっかりとるのは、技術と集中力、両方が問われる難しい役だったと思います。そのへんの折り合いがうまくまとめられるようになると、超一流レベル?
コメディアン芳雄、まだまだ駆け出しだけど、まずまずのスタートなんじゃないかと。 
でもでも、そのうち絶対来ます!またコメディでお会いしたいです!

また、歌はもう文句なしの美声。耳が喜ぶとはこの事。2幕に、刑務所に入れられたマックスが、それまでの出来事を面白おかしく振り返るひとり語りの歌は、お見事でした。これぞ、ミュージカルの醍醐味!というナンバー。観に行けて、ほんとによかったと、心から思った瞬間でした。

それにしても、出ずっぱりのマックス役。しかもシングル。まったく疲れを感じさせない、つやつやの声なのはさすがです。やはりミュージカル俳優さんのタフさは半端ないです。

『プロデューサーズ』は、典型的なドタバタコメディですから、下ネタ系も多いお芝居です。が、しかし、おそらく日本語版になった事で、多少マイルドにはなってると思います。それに加えて、なんだかんだ言っても、芳雄様の品の良さが見え隠れしてしまうお陰で、さらにマイルドに。。。
セリフ、文字で見たらきっとどぎついはずなんですが、そこまで下品に感じない。不思議。

おそらく、別の俳優さんがやったら。。。たとえば、もっとおやじ臭い人とか、ギラギラした方とかがやると、もっとどぎつくなるはず。たぶん、その方が原作のイメージに近いのだと思いますが、私は、プリンス芳雄のどこか品の良いマックス、素敵だと思いました。まったく違うタイプの「ギラギラ•ザ•オヤジ系役者」さんとのダブルでも面白かったかも、です。ま、私はそれでも芳雄様で観たいですが(笑

そんな事を考えながら、公演プログラムを見ていたら、演出家さんがこんな事をおっしゃってました。

ハチャメチャだけどまとまっているー(中略)ごちゃごちゃに見えても秩序のとれた、悪ふざけに見えないエンターテイメントに仕上げたい

なるほど、深い!だから、下品になりすぎず、どの役も欠点だらけのおかしな人間ばかりのお話なのに、それぞれが個性的で、人としての魅力にあふれる描き方になってるんですね。
はじめからそういう意図だから、ギラギラのオヤジではなく、プリンス芳雄様で成立するんだなぁ。

おそらく、ブロードウェイ版とも、ウエストエンド版とも全く趣を異にする作品に仕上がっているんだろうと思います。でも、成功してます!日本の観客にも、この方が受け入れられると思う。

本作、ひとつだけ物凄く残念だった事をあえて申したいと思います。

この作品、舞台セットがとにかく贅沢で素晴らしい。美術さんの力作ばかりなのです。おそらく、種類もかーなり多いんじゃないかなあ。会計事務所とか裁判所とか、一回しか使われない場面も多いし。劇場の表玄関のように、同じセットが何度か出てくる場合でも、毎回ちょいちょい違う。どれもこれも凝っていて、素敵。ドアも全部開く(笑)

大きな鏡を使ったナチス兵士のカギ十字ステージングのダンスの演出はお見事。一階席でも、上から見下ろしたアングルで舞台が見える工夫、兵士の演出はあっと驚きました。驚いた後に大爆笑。隣の人がギョッとこちらを見るくらいに!

なんですが、なんと、プログラムにその舞台写真がひとつもないんです。
あんなに力作なのに!

わかります。わかるんです。
再演とは言え、久々だしね。
本物のセットは、仕込みが終わるまで誰も見られなかったのも。

でも、衣装のデザイン画をプログラムに載せるなら、あの随所にミュージカルファンをきゅんきゅんさせるこだわりの詰まった美術のデザインなりパースなり、なぜ載せてくれなかったの??

あぁ、残念すぎる。

舞台美術大好きの心の嘆きでした。

近いうちに同じような座組みで再演する時があったら、今回の写真使われるかなぁ。。。ぼそ。

そんなこんなで、とにかく作り手の愛がつまった、素晴らしく贅沢な作品だと思います。

ミュージカル『プロデューサーズ』。まだ行こうか行くまいか迷ってる方は、是非行くべし!
今年になって、1番笑い転げた3時間でした。

あー楽しかった!

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