【ミュージカル】『モーツァルト!』の楽しみ方
もう、どうにもこうにも2度目が観たい。ま、時間はなんとかなる。なんとかしちゃう。で、配信と合わせて3回観ました(笑
というわけで、本公演も無事ではないけど、終了しましたので、レビューを書いてみたいと思います。長いので2回にわけで書きますが、このnoteでは、ミュージカル鑑賞は、劇場と配信、両方を楽しむのが「新しい生活様式」だと再確認した話を語ってみたいと思います。
久々の全キャスト制覇
今回は、初めからダブルキャストをカバーしたくて、2回観たいなぁと思っておりました。
普段は、広く浅くをモットーにしておりまして、これぞ!という組み合わせと、スケジュールで観に行く公演を一回に決めるスタイル。コアなレミゼファンとかにありがちな、全キャスト(なんなら全組み合わせ)制覇を目指すという観劇はしないのですが、なんだか今回は見ないといけない気がしてました。なぜなら‥
3年前の公演の時、どうにもスケジュールが合わなくて断念したため、今回が東宝版「モーツァルト!」初体験。前回分と合わせて2回、観てもいいよね、と自分を説得(謎
また、昨年あたりから、ヨーロッパを舞台にした作品に多く触れていて、ちょっとしたマイブーム中。予習はそれなりにしておりまして、久々のウィーン系だし、観たいポイントがたくさんありすぎる。たぶん、一回では観きれない自信がある!だから、2回!
現在のところ、来日公演が滞っていますが、徐々に海外のシアターも再開の目処が立ちつつある今日この頃。
来年あたりには、また来日公演を観られる日もそう遠くないかもしれない。ジャパンキャストの『モーツァルト!』は、次はおそらく数年後。その頃は、また来日公演三昧だと、ジャパンキャストの作品まで、時間もお財布も回らないかもしれない。なので、このチャンスにしっかり楽しんでおきたかったのです。で、最低2回!
加えて、今回のダブルキャストは、ヴォルフガングも男爵夫人も、全くタイプの違う役者さんが演じます。
最近、こういうダブルキャストが増えてるような気がする。
10年にわたりヴォルフガングを演じて来られた郁三郎さん。
三十路も半ばにさしかかり、そろそろ年齢的に次があるかは微妙なところ。
「完成された」と枕詞のつく領域まで熟したいっくんヴォルフガングは、やはりここで観ておかねば!です。
一方の古川雄大さん。只今、急成長と誉れ高い若手の有望株。
前回と今回で、ものすごい進化を遂げたと評判です。こちらも観ておかねば。もう、選べないってやつですね。はい、やっぱ2回は見ないと!
これもう、ついつい財布の紐が緩むやつだ。いやいや上手いやり方だ(笑)
東宝様にまんまと乗せられてしまいました。
コスパ最強の観劇スタイルはA席&配信
期せずして東京の千穐楽になってしまった公演を観に行った時は、A席でした。
一階最後列のど真ん中です。
ちょうどエンジニアさんのいるサブルームの真下の席。
舞台全体が見渡せる好位置です。
演出の小池さんは、長く宝塚の舞台を作ってきたレジェンドですが、若かりし頃は、レビューの演出を沢山手がけられていたので、ステージングには、独特なこだわりをお持ちの方です。
まるで、絵画のような美しいシーンを作り出す魔術師とでも言いましょうか。
特に、全員がステージに登場するシーンの美しさは世界でも類を見ないのではないかと思います。
全員の立ち位置、ポーズ、衣装、照明、セット‥1ミリの妥協もなく、計算し尽くされています。
曲の終わりの絵面が美しすぎて、拍手をしたくない衝動に駆られる事たびたび。
だって、拍手したら、そのシーンが終わってしまう。いつまでも観ていたいのです。
美術館の絵画のように。。。
今回のステージでは、真ん中に大きなグランドピアノを模した階段状のセットがあり、それをぐるぐる回して、設えを変えて場面を作ります。
階段の裏は、高さのある断崖絶壁で、その下の設えを変えて、室内のいろんな場所に変化します。
誰かの家は、だいたいが断崖絶壁の下に作られる。
こういう暗転のない場転は、ほんとに小池さんは上手いなぁと思います。
例えば、幻想的なシーンと現実のシーンのつなぎ目を、暗転でぶった斬るのではなく、盆を回して繋げて転換する事で、幻想と現実は、繋がっているのをキチンと「表現」できる。
後半、ヴォルフガングが仮面をかぶった人たちが沢山出てくる悪夢を観るシーンなどは、まさにこの手法でして、その不気味さに鳥肌が立ちました。
そんなわけで、小池さんの作品は、後ろの席から、あえて全体を楽しむのが贅沢なのです。
その意味でも、最後列のど真ん中!特等席でした。
一方、配信には配信の良さがあります。
当たり前ですが、細かいところはよく観える。場合によっては最前列より至近距離です。
『モーツァルト!』は、とにかく衣装が豪華。
貴族たちが沢山出てきて、しかもそれはヴォルフガングの憧れの存在。
だから貴族の衣装はケチってないんです。
ドレスに使われている布地の量も半端ないし、レースや装飾品も本当に美しい。ボタンのひとつ、縫い目のひとつまで、とにかく手が混んでいます。
こういう贅沢なお衣装は、衣装さんも創るの楽しいだろうなぁ。
ヴォルフガングの衣装は穴あきジーンズだったりしますが、そのダメージ具合なんかの細かい細工もよく見えます。
赤いコートの金糸の刺繍もすごく凝ってる。いやぁ、眼福。
あと、配信のいいところは、ソロの役者さんを抜いてくれる事。
二幕の初めの「ここはウィーン」などは、アンサンブルさんたちが、次々掛け合いで歌います。
予習済みの曲なので、何役がどこを歌うかは知っていても、舞台上のどこに何役の人がいるかは、なかなかパッと観ただけでは把握できない。
今回、アンサンブルさんたちの中に、注目していた俳優さんが3人いらっしゃいましたが、配信で観たら、劇場で観た時よりもはるかにセリフやソロが多かった事に気付きました。
抜きカメラありがとう!
アンサンブルさんの活躍に関して、もうひとつ言うと、舞台面でメインさんが芝居をしている時に、舞台奥で照明が当たっていないところの様子などが、チラチラ映り込んでくるのですが、まあ、皆さん細かく演じていらっしゃいます。
同じ舞台を2度観る時は、メインさんのお芝居以外のところもよく観るのですが、実際の舞台を見ていると、奥は暗くてよく見えないのです。ところが、露出を調整してくれる配信だと映り込んでさえいれば、よく観える。
例えば、市場のシーンや、舞踏会のシーンなどでは、アンサンブルさんの細かい演技を見てると面白い。
日常のちょっとした動作や、リアクションって、本当に実力差が現れるなぁと。
宝塚は昔からTVで放映されてきたので、舞台の映像化に関しては、ノウハウがそれなりに確立しているものと思われます。その流れの中で、東宝系の中でも、とりわけ小池さんの舞台の配信だと、ホントに色んなところを映してくれます。
視線が固定されてしまうことを理由に、舞台の映像化を好まない方も沢山いらっしゃいますが、個人的には、配信になると、やたら見どころが増えるというのが正直なところです。
もともとディテールを観たいと思っていた箇所だけでなく、生で観ていたら、目がいかないようなところをあえて見せられて、得られる新たな気づきも沢山あるのです。
全体とディテール、双方を楽しむには、やはり劇場と配信というのが、最高に贅沢な楽しみ方だと思います。
それに、下世話な話ですが、今回はコスパも最高。
配信はお友達や家族も一緒に見たので、実質私の分は1000円以下。
しかも、私は配信で2回観たから、都合3回観たのに、S席で一回見るよりお安く、しっかり堪能できました。
そしてね。
配信で観たことで、やっぱりまた生で観たくなったわけです。
東宝様にチケット代払ったのはこっちなのに、宣伝効果絶大(笑
いやいや、ほんとに上手い商売だよ。
『モーツァルト!』の鑑賞ポイントはここ
作曲家のモーツァルトといえば、知らない人はいない有名人なわけですが、モーツァルトを扱った作品というのは、Wikipediaにかいてあるだけでも、実に沢山あります。これらの作品の中で、「ロックオペラ」バージョンのミュージカルは観たことがあるのですが、実は、あまり記憶に残っていない。
まあ、ここまでいろんな作品が作られているのだから、その数だけ、描かれ方も様々なんだろうと想像します。
個人的には、宮廷お抱え作曲家の中で、モーツァルトの作品が好きかと言われると、ぶっちゃけ微妙。
なんというか、全力投球感のない曲が多い気がします。
もっともっと才能があったのに、出し惜しみしてるというか。
貴族たちのお楽しみに音楽を供する事で、食い扶持を稼いでいたのに、どこかでそのスポンサーを馬鹿にしてたんじゃないか、「どうせ貴族のお遊びなんだからこの程度の曲書いときゃいいや、えいっ!」というのが、曲に現れている気がしてならない作曲家なのです。
だから、昔から人間的に好きになれないお人です。
曲で言えば、同じ宮廷音楽家の中でも、モーツァルトの盟友ハイドンの方がまっすぐで善良な人柄が現れていて品があるし、ベートーヴェンの方が「命がけ感」が満載でドラマチック。
モーツァルトは、どこか「入魂」が足りなく感じてしまう。
つまり、私の中のモーツァルト像は、ニヒルなチャラチャラした品のない音楽家、でして(あくまでも個人の感想です。モーツァルトファンの方、ごめんなさい)。
ところがです。
このミュージカル『モーツァルト!』のヴォルフガング役と言えば、初演時は、井上芳雄さんがやってたり、2021バージョンでは、山崎郁三郎さんがやっていたりの「プリンス系」の役者さんがキャスティングされている。
え?え?
と、常々思っておりました。というわけで、今回の鑑賞ポイントの中でも、1番の関心は、「モーツァルトという人の描かれ方」でありました。
で、まずは、私のイメージに近いと思われる、やややんちゃ風味な古川さんのバージョンを観て、あとから郁三郎さんのを観たい、という観る順番にもこだわっての鑑賞になりました。
ちなみに、ベートーヴェンは、映画の題材なんかで使われたりしておりますが、ハイドンは私の知る限り、ない。。。んです。
その一生は、おそらく真面目にお家に使えた職業音楽家だったため、世に出ていない作品も多く、ベールに包まれているからか、それともドラマのない人生だったのか。
それに引き換え、モーツァルトの生涯は、後の世の人々にいじられまくり。
曲だけてなく、人間としてもある意味愛されキャラなのかもしれませんね。
さて『モーツァルト!』のモーツァルトは、どんな風に描かれたのかについては、長くなりそうなので、続きは後編で。