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【ミュージカル】劇団四季『キャッツ』を「ついでに」観に行ってきました

大井町に用事ができました。たった数百円のお買い物なんですが、近所では事足りず、どうしても大井町へ行かねばならない。
だけど、それだけのために行くには交通費の方が高くついちゃうし、時間もそれなりにかかるし、なんだかなーと思っていたら、いつも素敵なnoteを書いていらっしゃるhoofさんが、『キャッツ』を観に行ったと?!

これだ!と思いました。
ピンと来ました。
大井町が私を呼んでるぅ!

速攻でスケジュールを調整して、四季の会の会員の友人にチケットをお願いしました。ここまでの流れ作業、ほぼ無意識でした。
なんか知らないうちに、指が勝手に‥(笑

というわけで、Let’s go 大井町!

実はずっと待っていました

大井町で『キャッツ』の再演が始まったのは4年くらい前でしょうか。ここ数年は、年に何回か『ライオンキング』を観ていたので、お隣のキャッツシアターの前を通るたびに「観たいな、観たいな」と思っていましたが、四季ってロングランなので、ついつい後回しになっちゃう。
それでいて、1か月前とかだと、チケットが売れすぎていて、案外取りにくい。席があってもいい席はない。
かと言って、何ヶ月も前から心待ちにしてとるモチベーションが、ロングランだと。。。
少なくとも、コロナ前はそうでした。

で、そうこうしてたら昨年の長期休演があり、ようやく再開したと思ったら、客席を使った演出を変更するなど、コロナ演出になってしまった。万事休す。

シアター全体が猫の世界のキャッツシアター。専用劇場での公演なんだし、せっかくなら、元通りの演出になってから観ようと待って待って待ってたわけですが、戻らないうちに終了を迎える事になりました。

まじか‥

残念すぎます。

ちなみに、記憶が確かなら、キャッツはこれまで2回観てまして、初めて観たのは日本の初演時。中学生だったか高校生だったか、くらいの頃です。
その後ブロードウェイで1991年に観ました。
その頃はまだ英語ができなくて、ブロードウェイまで意気込んで行ったのに、日本で観たことのあるミュージカルを観まくったうちの一本が、『Cats』だったはず。

以来、ほぼ30年ぶりの『キャッツ』。何度目かの演出変更を経てのコロナ演出バージョン。とか言われても、もはや元がどんなだったか覚えていません(笑

ま、モノは考えようです。これはこれで、ある意味今しか見られない貴重な一回になる事でしょう。やはり、今観るべき作品だな、うん!

『キャッツ』を簡単におさらい

『キャッツ』は、1980年代初頭にウエストエンドで製作された作品です。原作は作詞も手がけたT.S.エリオットの猫に関する詩集で、曲をアンドルー•ロイド•ウェーバーが書いています。

でもって、なにがすごいかというと、初代のプロデューサーが、かのヒットメーカー、キャメロン•マッキントッシュ。マッキントッシュさんといえば、おそらく、ウエストエンド界隈のミュージカル関係者で、最も成功している人物なのではないでしょうか。

彼が手がけた作品といえば、『レミゼ』『オペラ座の怪人』『ミスサイゴン』『メリーポピンズ』などなど、とにかくヒットを連発しているレジェンドなのです。

このラインナップを見てもわかるように
ファンタジーはお得意分野のマッキントッシュさんの最初のヒット作が『キャッツ』。いかにもいかにも、です。

で、猫に関する詩集が原作のキャッツは、一応ストーリーはありますが、まあ大した話ではなくて(失礼!)、いろんな猫が出てきては一曲歌って踊るレビュー形式の作品です。
70年代のミュージカルには、そういう作品が多いのですが、この『キャッツ』もその流れでしょうか。

そのかわりと言ってはなんですが、楽曲はいちいち凝っています。
曲も歌詞も振り付けも演出も。
一曲の中にドラマがあって、猫のPVを続けて観ているよう。
ダンスソロで魅せる曲、群舞で魅せる曲、歌を聴かせる曲、宙吊り、大掛かりなセット、劇中劇や空中浮遊、意匠も凝っています。
人間は出てきません。猫、ネズミ、ゴキブリ、路地裏の世界の生き物たちのお話です。

初めて観る人も、何度も観ていても、ワクワク楽しいシーンの連続で、ロングラン向きの作品。猫って、きっと気まぐれなのも、路地裏に住んでいるのも世界共通だし、作品が愛される要素しかありません。ちなみに日本では、ミュージカルの上演回数で、ライオンキングに次ぐ第二位の記録を持つ作品です。

踊りながら歌うという難題

私は踊るミュージカルが好きです。ミュージカルなんだから、踊ってナンボです。だから、『キャッツ』は大好きな作品です。俳優さんの経歴を見る時『キャッツ』に出演歴がある場合は、無条件で「踊れる人なんだな」と思います。それくらい『キャッツ』というのは、とにかく、全編踊りまくる作品なのです。踊らないキャラクターは3人、いや、3匹くらいでしょうか。
踊らない猫は、芝居と歌担当です。

というわけで、『キャッツ』はほとんどの役がダンスのバックグラウンドを持つ俳優さんで成り立っています。
これがですね、日本では鬼門でして。

初演の時の1番の印象が、踊りはいいけど歌が‥でして。
ブロードウェイでは、それほど気にならなかったのは、すでにロングランで10年近く上演されてきて、トレーニング方法も工夫が繰り返され、努力がなされていたからと、歌は録音も多用されていたやに記憶しています。

ま、でも、体全体を使った身体表現を楽しむ作品だから、歌問題は一旦おいておく。アンドルーごめんなさい。
今回もそんな事を思いながら行きました。

が、期待値がものすごく低かったせいか、今回は思いの外、歌も楽しめたのです。
普段から『キャッツ』については、ウエストエンドの音源をヘビロテしていまして、これがスタジオ録音のため、非常にクオリティが高いのです。
そりゃ、踊らないで歌ってる音源なんだから当然なのですが。
それと比較すると確かに劣るのは致し方ないとしても、想像していたよりは全然よかった。

おそらく、全員で歌うナンバーは、歌入りの音源を使っていたと思われ、安定だったのですが、ダンス後のソロを歌われたキャストさんの多くが、ちゃんと呼吸をコントロールして、息が上がらないように、しっかり絞って歌っておられました。
これは、訓練しないとなかなか難しいのです。特にダンサー出身で、後から歌を学ばれる方は、ものすごく苦労するケースが多い。
なぜなら、ダンサーの方は上半身を動かしている時、呼吸をコンスタントにしていないケースが多いのです。いわゆる無酸素運動を部分的にやっているのです。そのため、歌おうとすると息が上がってしまう。そうならないために、踊る時の上半身の使い方、呼吸のコントロールをしっかり学ぶ必要があります。
歌うのと踊るのを同時にやるという事と、ただ歌うだけ、ただ踊るだけというのは、まったく別のスキルなのです。

この点に関して、とてもみなさま努力されているのが観て取れ、非常にに感動しました。一昔前では、考えられなかった事です。日本のミュージカル、めっちゃ進化してる。

個人的な推しはこの猫たち

もともと、人間以外が喋る作品は、アニメだろうが舞台だろうが、あまり好きではない私。しかも、現実世界では、猫アレルギーの私ですが、『キャッツ』なら大丈夫です。
その理由は、役者さんの身体能力の高さにより、良い意味で、猫ではなくもふもふとした人間たちによる不思議なパラレルワールドのお話のように映るからではないかと思っています。
なにしろ、出てくるキャラクターが人間くさいのです。いや、猫くさいか?なんか違う意味になりそうだけど。

今回観た中では、とりわけ、シャムネコのタントミール役の女優さんが素晴らしかった。
タントミールは、特にダンススキルの高い役者さんが担当するキャラクターです。今回観た回の女優さんは、まず、ビジュアル的に、手足が長く、しなやかな動き。明らかにバレエ出身の方です。
それでいて、ゴリゴリとした筋肉質に見えない姿形。あの衣装を着こなせる日本人がいるなんて!
もちろんダンスも見応えがありました。でもって、しっかり歌える。
四季の底力おそるべし。
ちなみにタントミールはこんな猫(※私が観たのとは別の女優さんです)

(画像は公式からお借り)

タントミールは、2幕の冒頭に舞台上に現れ、ゆっくりと歩く姿をお客さんに見せます。
無言で、無音で。
まるで、音のない動作だけのoverture。さっきまで、トイレの長蛇の列に並んでいた現実世界から、お客さんを一気に猫の世界に誘う役割りを、「歩く」という動作だけで、担っています。
タントミールが歩いているのを見ると、自分も路地裏の猫になった錯覚に陥ります。猫になって、ジェリクルキャッツの舞踏会を見てる気分ななるのです。『キャッツ』の世界観をまさに代表するユニークなキャラクターです。

また、ガチダンサーが配役されて、歌わない役もあります。マジシャンのミストフェリーズ。

(画像は公式からお借り)

歌わないどころか喋らない。全てをダンスやパントマイム調の動作だけで表現します。
ひとりだけ、いや、一匹だけバレエの発表会みたいなシーンです。
踊るミュージカル『キャッツ』ならではのキャラクターです。
キザで、自信家。普通の顔しててもなぜかドヤ顔。常に注目されたい、構って欲しいオーラが出ている。最も猫っぽいキャラクターかなと思います。

逆に、もっとも猫らしくないキャラクターのスキンブルシャンクスは、実は1番好きなキャラクターかもしれません。

(画像は公式からお借り)

猫のくせに鉄道で働く猫です。鉄道ですよ!気まぐれじゃ勤まりません。勤勉そうで明るくて社交的。私の中では、某国営放送の子供番組の「歌のお兄さん」のイメージで、およそ猫とは程遠いキャラクターです。
でも、客席を一気にファミリーコンサートの雰囲気に持っていくオーラとエネルギーは、ポジティブで大好きです。

詩の世界観を楽しむ

『キャッツ』といえば、「メモリー」は不朽の名曲ですが、他の楽曲も名曲が多いのは言うまでもありません。

曲がいいのはもちろん、原作が詩集というだけあって、詩がとてもお洒落です。『キャッツ』の詩は、さっきも書きましたが、歌は全て猫のPVですから、ミュージカルにありがちな、セリフのような歌詞ではなく、その多くは、普通の歌のような「詩」です。
詩がお洒落なのも当然なわけです。

という事は、日本語の訳詞をつけるのか非常に難しい。。。わけです。

その難しさの一例として、『キャッツ』を代表する名曲「ジェリクルソング」の訳を、以下の2つで比較して頂くと一目瞭然かと思います。

四季で歌われている訳詞バージョンはこちら。

続いて、詩の対訳はこちら。


この曲は、おそらく『キャッツ』の楽曲の中でも、最も訳詞をつけるのが難しい曲ではないかと思います。訳詞も大健闘していると思いますし、曲調の音楽的な世界観を壊さないよう、よく配慮されて訳されています。

というのを差し引いても、元の詩のお洒落さは訳詞になった時に、半減してしまうものだなぁと、思わざるを得ない。

例えば、冒頭の部分、実際に歌われている訳詞と、上で紹介したサイトの対訳を比較してみます。

【訳詞】
生まれたのか 闇の中に
怖れないか 何者をも
黙ったまま 耐えて強く
生き抜けるか その孤独を
(劇団四季)
【対訳】
この世に生まれた時、目は見えなかったか?
暗闇でも目は利くか?
王を見ることはできるか?王座に座った事は?
お前の一噛みは、唸り声より小さいか?
独りで歩くその時に、堂々としているか?
MusicalLifeより)
【オリジナル歌詞】
Are you blind when you're born?
Can you see in the dark?
Can you look at a king? Would you sit on his throne?
Can you say of your bite that it's worse than your bark?
Are you cock of the walk when you're walking alone? 

というわけで、王座どこいった?状態。

訳詞も、詩的で素敵なのですが、英語の韻を踏んでいる感じも含め、表現しきれていない残念感は否めません。
ぜひ、日本版をご覧になる方は、オリジナルの英語版の詩を、予習でも復習でもいいので、読んでみて欲しいなと思います。
お気に入りの一曲だけでもいいですし、英語が苦手だわという方は、訳詞ではなく、対訳で楽しんでみてほしい。

有名な作品なので、google様に聞くといろんなバージョンの対訳に出会えると思います。
きっと、そこには新たな世界が開けてる。。はずです。

マニアには嬉しい発見の連続

今回の『キャッツ』観劇で、最大の発見は、『キャッツ』の名シーンが、後に作られた他の作品に、オマージュとして生かされていたんだな、という発見の数々でした。

と言っても、グランドミュージカルではなく、比較的小規模な作品の中での話です。
意図的なのか、意図せずそうなってしまったのか、その辺は想像するしかないですが、例えばグロールタイガーの海賊の船のシーンのセットは、パッと思いつくだけで、3つくらいの作品が思い浮かびますし、スキンブルシャンクスの独特な振り付けやステージングは、後のいろんなミュージカルで取り入れられています。

逆に、スキンブルシャンクスの、キャストが小道具としてセットの一部を手持ちで持って、電車の形を作る演出は、『Oliver!』の名シーンのオマージュかなと思います。もっとも、『Oliver!』は馬車ですが。

また、最後のシーンは、後に、ロイド・ウェーバーが書いた別のミュージカルのラストシーンと似ているのも気のせいではないと思います。

ただ観た人に感動を与えるだけにとどまらず、他の作品にも様々なインスピレーションを振り撒きまくっている『キャッツ』。
改めて定番クラシックな作品を観る楽しみは、やはりこういうところなんだよなぁ。

ミュージカルの街、大井町の過ごし方

東京の劇場文化のメッカといえば、やはり伝統のある日比谷界隈ですが、四季は新たな劇場文化の創造の担い手として、新たなる劇場の街を作ってきました。

こんな感じで、大井町でも街ぐるみで劇場文化の発展をやっていこうという事で‥

とは、簡単に事が進んでいないように思います。
まず、観劇前後の時間を楽しく過ごせる場所がほぼない。特にマチネだとヨーカドー一択。
駅ビルの作りが、東急側とJR側で微妙に離れていて、劇場からだと駅前の信号をわたるのが煩雑だったり、なんだか使いにくくて、結局毎回、ヨーカドーに吸い込まれてしまいます。
あれ、ほんとになんとかならないのか。
ヨーカドーは悪くないけど、特に観劇後は一気に現実に引き戻される感じがどうも。。ね。

そして、劇場へ向かう商店街。
アーケードになっている数百メートルで、マチネの時間に開いてる飲食店が、まったく客層にフィットしていない。
劇場があそこにできて、もう何年にもなる大井町。あれだけの人が毎日通るのに、まったく誰も見向きもしていないって、ものすごい機会損失な気がします。いや、まったくもって、余計なお世話かもしれませんが。

それと、普段移動手段といえば車がメインのワタクシ。
大井町は駐車場問題が面倒で、車では行きにくい。劇場に駐車場があればよいのですが、隣接のコインパーキングはタイミングがうまくいかず、いつも満車。ヨーカドーにとめると、買い物しても足が出る。色々うまく行きません。
なので、電車で行くことが多いのですが、そうなると、前後の予定に余裕を持たないといけない。

実は今回も、電車移動のために、予定をひとつキャンセルせざるを得なかった。車なら、なんとかなったと思うのですが。
都内って、なんだかんだで、移動は車が速いんですよ。
駐車場問題、なんとかならないかなぁ。

さて、そんなわけで、ミュージカルを観ること以外にはなかなか不便さが拭えない大井町ですが、今回のメインの用事はお買い物!でした。あ、もうその件、忘れてましたか?(笑

何を買ったのかと言いますと

はい、こちら京飴。

日本人には馴染み深い、可愛い京都の飴です。
もうすぐ帰国してしまう外国人の友人に、日本っぽい日持ちのするお菓子を。。と、京飴を思いついたのですが、ここ東京では、なかなか売ってるところがない。
東京でも大きな駅や空港だと売ってるんですが、そもそも、いまお土産屋さんも臨時休業が多くて、思いの外入手するのに手こずりまして。

京都物産展みたいな催事を探してたら、たまたま大井町のヨーカドーでやっていたのです!
けど、いくらギフトとは言え、飴玉買いにわざわざ行く?と思ってたわけです。『キャッツ』はまさに、「渡りに船」でした。

というわけで、京飴も買えて、『キャッツ』も観られて、ミッションコンプリート。
ああ、なんて有意義な半日。

さぁ、明日からまた頑張ろう!

※「役者ではなく作品を見に来て欲しい」という劇団四季の心意気に配慮し、当日のキャスト表は公開せず、個々の役者さんのお名前等々については、敢えて触れずに書いています。
「作品で観客を呼ぶ」というコンセプトにはとても共感しているための配慮です。
ご理解頂けると幸いです。

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