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【音楽遍歴】2001年に行ったライブ②


はじめに

この数年間は大体1ヶ月に1本のペースでライブに行っていましたが、この年はプライベートで色々なことがあったので少なめの7本。ただ、2日間ですがFuji Rock Festivalにも2年ぶりに行けたし、初めてライブを見るバンドもいたので充実した1年でした。

Fuji Rock Festivalの初日グリーンステージでは、「ヘッドライナーを3組並べた」とも言われたTravisManic Street PreachersOasis。そして、2日目は毎年見てる気がするStereophonicsに奇跡の来日New Order。これだけで片道8時間以上かけてやってきた意味がありました。

単独公演は"Kid A"と"Amnesiac"で大きく方向転換したRadioheadが話題でしたが、前年のSummer Sonicで度肝を抜かれたSigur Rosや待望の初来日となったBelle & Sebastian、同年のSummer Sonicに出演してすぐに単独で戻ってきたMercury Rev等を見ることができました。

今回はこの単独ライブ4本に関する出来事について書いていきたいと思います。

ライブ情報

  1. Teenage Fanclub(2001年1月25日@心斎橋クラブクアトロ)

  2. Fuji Rock Festival '01(2001年7月27-28日@苗場スキー場)

  3. Ash(2001年9月16日@Zepp Osaka)

  4. Radiohead(2001年9月30日@大阪城ホール)

  5. Sigur Rós(2001年10月12日@心斎橋クラブクアトロ)

  6. Belle & Sebastian(2001年11月13日@Zepp Osaka)

  7. Mercury Rev(2001年12月20日@ベイサイドジェニー)

出来事もろもろ

Radiohead

前回の来日時のに衝撃を受けただけに、アレを超えられるだろうか、あるいは超えないまでも迫れるだろうかという不安を抱きながら見に行ったライブ。場所は大阪城ホール。Radioheadのライブを大阪城ホールで見ることになるとは不思議な感じがしていました。

オープニングトラックの"The National Anthem"が始まった瞬間、4年間蓄積されてきた期待感と渇望感が一気に爆発。"Hunting Bears"や"Morning Bell"などの大きく路線をシフトした"Kid A"と"Amnesiac"の曲が続いた後、"Lucky"と"Karma Police"が演奏されて、ここで早くも最初のクライマックスを迎えました。

中盤の"Exit Music"から"No Surprises"の美しさは特筆ものでしたが、とにかく全編に渡ってバンド全員が身を削って表現しているような切迫感が桁外れで、バンドの充実感や完成度の高さを実感できました。「盛り上がりに欠けた」という意見もあったようですが、音に集中していたあるいは立ち尽くしていた人が多かったような気がします。

ライブ前に抱いていた不安は全く意味のないもので、衝撃度こそ前回のツアーの方が大きかったものの、鳥肌が立つような感覚は間違いなく今回の方が強く、何回も「どこかに連れて行かれるような感覚」に陥りました。「こんな壮絶なライブ、いつまで続けられるんだろう。いつか、突然止まってしまうんじゃないだろうか」、そんな心配さえ沸き起こってくる圧倒的なパフォーマンスでした。

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Sigur Rós

「衝撃」という点では前年のSummer SonicでのSigur Rósも負けず劣らずで、彼らのパフォーマンスの時だけ会場の空気感が別物になったような感じがしました。そして、早くも単独公演が実現したのですが、会場は今の彼らのポジションを考えると、驚きの心斎橋クラブクアトロ。ただ、開演前から照明は落とし気味で、小鳥の囀りのようなSEが流れ、ロックバンドのライブ開始前とは思えない雰囲気が漂っていました。

7時少し過ぎにSEが止まってメンバーが登場し、ライブは粛々と。今回のライブでは、"Agaetis Byriun"で感じられたポップ感覚は抑えめで、終わることなく続くかのようなイントロ、ビートを刻まないドラムス、無限の彼方まで延びていく澄んだボーカルと、他のバンドでは体験できない世界感を構築し、「緊張感」という意味のテンションが爆上がり。

美しくロマンティックな世界に、ときどき挟み込まれるサイケデリア。少ない音で始まり、途中で激しいドラミングが挟まり、ループのようなボーカルとノイズが加わる、そんな似たような曲に飽きを感じ始めていたときに始まった"Popplagið"は衝撃的。基本的なフォーマットは他の曲と同じですが、途中から全てのパートが別のバンドのように激しく、力強く音を放ち、まるで今までの曲がまるごとこの曲のためのイントロであるかのような感じ。完璧なる動と静の対比の中で爆発させた彼らのサイケデリアワールドは圧巻でした。

この日もメンバーは一言も発することはなく、ライブ終了時も軽く手を挙げただけで帰って行きました。その後、再び全員で姿を見せ、はにかみながら笑顔で深々と挨拶をし、再び帰って行っても鳴り止まない拍手の中、再びステージに現れて深々と挨拶。何分か前まで壮絶な音世界を叩き出していたバンドとは思えない屈託のない笑顔に驚かされました。

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Belle & Sebastian

初来日の会場となったZepp Osakaのステージにはマイクが何本も立っていて、譜面台も大量。一体何人出てくるんだろうと思っていたら、メンバー以外にも人が出るわ出るわで、結局、生ストリングス4人を含めた総勢12人が登場。

ライブが始まった驚いたのは音の良さ。とにかく個々の楽器の音がクリアで、ライブ感を持っているのに繊細で、肌に吸い付くような滑らかさ。そして、生のストリングスとブラスが曲に的確なアクセントをつけていて、繊細な曲はより繊細に、力強い曲はさらに力強く、そして同じ楽器を使っていても魔法のように曲の表情が様々に変わっていきます。

ライブ前までは、何となく神秘的なイメージを持っていたのですが、オーディエンスとコミュニケーションを取りながらパフォーマンスを進める様子はとてもフレンドリーで、誠実な音楽と音楽への愛情が会場に溢れ出して行くようでした、最新のテクノロジーや流行的要素に頼ることなく、RadioheadSigur Rósとは違った評価軸での圧倒感を見せつけてくれました。

ギター、ベース、ドラムス、バイオリン、ウッドベース、フルート、トランペット、ホルン、ピアノ、シンセサイザー、カウベルなど、多種多様な楽器を使った演奏は「発表会」のような雰囲気で、音楽は音を楽しむことだというシンプルな事実を再認識させてくれる素敵な時間でした。それを示すように、メンバーがステージを去って15分以上アンコールの拍手が鳴り止まず、セットの解体が始まっても帰ろうとする人がまばらだったのが印象的でした。

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Mercury Rev

この日はBloodthirsty Butchersくるりがオープニングアクト。くるりのパフォーマンスが終わって、Mercury Revのライブまでのセットチェンジと楽器のチューニングにかなり時間がかかり、飽き飽きしているところで漸くメンバー登場。

この日のセットリストは全曲が"Deserter's Songs"と"All Is Dream"からの曲で、ベースとなる部分はオリジナルながら、イントロやアウトロ、間奏には新たに手が加えられている部分も多く、CDと印象が変わった曲も多数。ただ、"Deserter's Songs"の曲が元のイメージを壊さない程度に力強さを増し、"All Is Dream"の曲はややドリーミー寄りの音になることで、CDを聴いたときに感じた2枚のギャップが縮まっていて、シームレスな世界観を作りだしていました。

甘いだけのドリーミーな世界ではなく、締まった演奏で現実感を生み出すバランス感覚も見事で、寝入る直前のような夢見心地的感覚がキモチイイ。ボーカル以外の楽器がこれ程雄弁に感じられるライブも久しぶりで、奏でられる音の一つ一つに身体が反応し、音が運動神経に直接働きかけてくるような感覚。そんな、まるでマインドコントロールされているかのようなサイケデリックな感覚は、RadioheadともSigur RósともBelle & Sebastianとも違う唯一無二の圧倒感でした。

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おわりに

この年の単独ライブは6本と数こそ少なかったものの、後半の4本はそれぞれが異なるスタイルで、異なる評価軸での圧倒感を見せてくれたこともあり、フジロックフェスティバルで感じた「楽しさ」以外の、音楽の持つ多様性や懐の深さを体感できた一年になりました。

今回紹介した4つのバンドは、この年以降もフェスティバルや単独公演を見ていますので、また別の機会にそのときのことを紹介したいと思います。

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