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2021年ベストアルバム 24/30

はじめに

先日、テーマを設けてnoteを出したのでこのnoteはかなり取っ散らかったものになると思います。(下のやつがこないだ書いたやつです)


順位付けはしてません。大晦日17:00くらいから書き始めてるのでこれを書き終えないと2022に進めません。

2021年はとにかく邦楽のアーティストが良い作品を沢山発表していて、それがアンダーグラウンドのまま終わるわけではなくタイアップだったりドラマ主題歌だったりに起用されてしっかりマスまで届いているのが嬉しかったです。

また、サウスロンドンのポストパンクシーンに触れないわけにはいかないのだろうけど、芯からハマり切れないまま2022年を迎えようとしています。実験性とポップさと他ジャンルとの融合具合の兼ね合いが上手く私のストライクゾーンから外れている…。音源だけじゃなくライブを体感したら変わるのだろうか。SmashとCreative Manに期待したいです。

あと個人的に9月以降はお笑いというジャンル、お笑い芸人という存在に対して熱を持ってしまったので、そこまで音楽に触れることが出来なかったので心残りがあります。シューゲイザーと蛙亭のポッドキャストを同じ時間くらい聞いてしまった…

GRAPEVINE「新しい果実」

 まず音がいい。ドラムの少し籠ったルーミーさ加減とねちっこいギターの耳にまとわりつくような音像がひねくれたメロディーを完璧に補完している。これまでもロック以外のジャンルのアプローチが魅力的すぎるバンドだったわけだけど、GRAPRVINE流のネオソウル解釈が光る1曲目からアルバムを通して展開される、テンションを抑えながら躍動する成熟したグルーヴが今年のムードに合っていた。だからこそ「リヴァイアサン」のような曲も映えるわけでアルバムとしての構成が職人の域。そして俯瞰の視点と寓話的な皮肉が交差したような歌詞は今のロックバンドの在り方としてこれ以上なく正しい気がする。


park hye jin「Before I Die」

「Let's Sing Let's Dance」と連呼する1曲目から分かるように、このアルバムは「トラックに載せて歌唱すること」そして「音楽に載せて体を動かすこと」が如何に人類にとってかけがえのない営みであるかを再認識させてくれる。ミニマムな電子音で構成されたトラックに載る声は時に嬉々として時に悲しみを潜ませながらこちらへ届く。歌詞は韓国語がメインで綴られていて、私はその言葉を分からないのにも関わらず、である。音楽がコミュニケーションであり、そして「音」のみでそのコミュニケーションは成り立つのだと再認識できる。来日公演が早々に実現してくれることを願うばかりだ。


Cwondo「Hernia」

No Busesのボーカル近藤による宅録ベッドルームプロジェクト。ロックバンド・No Busesの魅力はその音数少なく洗練されつくしたバンドサウンドと垣間見える熱情にあると思うのだけど、このアルバムも共通した魅力を備えている。ミニマムなサウンドの中でオートチューンをかけたボーカルやギターの音が異質なものとして存在するM2「Ntbd」はその典型だろう。宅録ならではのローファイさが自己の内面で踊るような魅力を形作っていて好み。このアルバムを挟んだNo Busesの新作も新境地といった様相で素晴らしかった…。


Yu Su「Yellow River Blue」

バンクーバー在住、中国出身プロデューサーのデビューアルバム。「異国情緒」という言葉は、感じた異質さを勝手にこちら側が作り上げたイメージの型に嵌めるような多少の暴力性を孕んでいるようで積極的に使いたい言葉ではないのだけど、このアルバムはそんな「異質さ」とエレクトロミュージックの心地良さが共存していて、今年聞いたどのアルバムとも違った輝きを感じた。1曲目冒頭の女子十二楽坊を思わせる弦楽器の響きから2曲目のダブサウンドなど、トリッキーに裏切られたような新鮮な驚きがもたらされると同時に根底に流れる「Yellow River」のような雄大なアンビエンスに包まれる。大好きです。


sonhos tomam conta「hypnagogia」

ブラジルの宅録シューゲイザーバンド。Parannoulとのコンピ盤を辿って出会ったのだが、アルバム内の静と動の緩急があまりにもドンピシャであった。打ち込みならではの平坦ながら手数の多いドラムにのる轟音シューゲイザーはParannoulと強く共鳴するが、様相が変わるのは4曲目からである。攻撃性は鳴りを潜めタイトル「hypnagogia(覚醒状態から睡眠状態への移行時における半覚醒状態)」といえる、ギターを削いだ凪いだサウンドスケープが展開される。ここでうっとりと沈みながらも5曲目「reverb na master」では動のバンドサウンドが鳴らされ、夢か現実が区別がつかないが確実に覚醒状態へと導かれる。シューゲイザーの持つ夢見心地さと轟音の攻撃性を兼ね備えた名作である。


揺らぎ「For you, Adroit it but soft」

こちらもシューゲイザー。様々なジャンルを取り入れて進化していくアーティストは幾つも存在するし、ポストロック、エレクトロニカといった要素を取り入れた彼らもそんな中の1つであろう。Twitterで本気半分冗談半分で「ビョークとLSD and the search for godとシガーロスとマイブラの奇跡の融合」と書いたが強ち間違いでは無いと感じる。だが、そういった要素を携えながらも取っ散らかった印象は一切なく、このアルバムはむしろ横綱相撲のような王者の貫禄を放っている。アルバムの中心となるのはボーカル・miraco氏のボーカリゼーションであり、多彩なドラムパターンを披露するUji氏のドラミングである。シューゲイザーというジャンルにおいて爆音が搔き鳴らされる瞬間はハイライトとなるが、このアルバムはその初めて「グワーッ」となる瞬間までに約7分をかけている。シューゲイザーというジャンルにありながらも爆音ギターのみで勝負するのではないその引き出しの多彩さ、そしてやって来るギターのカタルシス。圧倒的


Deafheaven「Infinite Granite」

ブラックゲイズのイデア。先ほど『「グワーッ」となる瞬間』こそがシューゲイザーの魅力と書いたが、このアルバムにおいては「グワーッ」っとなる瞬間がひたすらに持続している。ルーツにあるであろうハードコアエモのような叫び声や力強いドラムとディストーション強めのギターによる音の濁流。ありがとうございました。


underscores「fishmonger」

ハイパーポップと呼ばれるジャンルにまったく明るくないのだが、underscoresの新譜を聴き、これ以上に「ハイパー」な「ポップ」はないなと納得してしまった。1曲目の超性急に駆け回るリズムパターンも2曲目のトラップ的酩酊感を持ったトラックから急に音が大きくなった!と思ったら3曲目のアコギのループに載せたウィスパーアンセム…と行き着く間もなくひたすらに快楽が重なっていく。次から次へと動画が巡るTikTok、とめどなく他人の感情が流れるSNS社会…といった完結しない情報に支配された20年代を体現しているアルバムであろう。


D.A.N.「NO MOON」

Radioheadが「Kid A Mnesia」を発表したのも今年の出来事である。肉体性を極限まで排除して極北の電子音の世界を作り上げた「KID A」、フリージャズ的な「人間」の要素を持ち込んだ兄弟盤といえる「Amnesiac」。演奏者、作曲者自身の肉体性であったり暴力性であったりを凝縮し静謐な世界に閉じ込め、時々除くその肉体性こそが真の魅力であるといえる2枚である。この2枚に対するクラブミュージック側からのアンサーとして捉える事ができるアルバムがこの一枚であろう。幽玄な歌声と不穏ながら煌めく豊かなエレクトロダンスミュージック。「KID A」がライブにおいてバンド形態で「KID A」を歪に、そして異常な化学反応を持って再現したように、D.A.N.が如何にその世界観を作り上げるのかを見てみたい。


Flyying Colours「Fantasy Country」

シューゲイザーは「逃避」といった役割を与えられることがよくある。このアルバムは「祝福」である。ドッツドッツドッツドッドツというツービートであったり随所で彩るシンセサイザーだったりと耽美なシューゲイザーの中にカラフルな軽やかさやファニーさを感じて良い。


No Rome「It's All Smiles」

Dirty Hit所属・No Romeが発表した待望の1stアルバム。参照したくなるのは同レーベルのThe 1975である。ヒップホップやダンスミュージックを経由した音作り、オートチューンを多用した歌唱、ブラスバンドの効果的な挿入、そして抗えないギターサウンドへの愛情といった要素が一聴して共通項として浮かんだ。The 1975は大作主義で非常に長い収録時間の作品でアルバムの中に幾層もの物語が偏在しているのが特徴であるが、このアルバムはギターを中心に構成されていて30分を切る収録時間と必ずしもThe 1975と並べて語りすぎても…という感じもする。驚いたのはシューゲイザー的なサウンドが多用されている点で、M10「Everything」などはその典型だろう。勿論ギター一辺倒ではなくM8などではその引き出しの多さも見せてくれる。後に発表されるというエレクトロニックな作風のアルバムも非常に楽しみ。


Kanye West「Donda」

この作品を私は数周しかしていない。彼の動向を何年も追ってきたわけでもない。彼の作品に参加しているアーティストのパーソナリティについても詳しくない。しかし2021年を通してKanye Westという世界一影響力を持つアーティストが引き起こす様々な話題に触れ、その根っこにあるイノセンスのようなものに強く惹きつけられたのは事実だ。そのイノセンスが1時間30にも及ぶアルバムの中で存分に表現されている。聖的な響きを持つ声と重々しいトラックはどこまでも美しく結びつく。とてつもない魔力を携えたアルバムである。


JPEGMAFIA「LP!」

JPEGMAFIAとはAlternative Hip-Hopというタイトルのプレイリストで出会った。奇抜な音のサンプリングで作られた暴力的なデジタルビート、そして1人ですべてを完結させる制作体制は確かにオルタナティブで、JPEGMAFIAの独自性であろう。だが流麗なラップと美しいコーラスを響かせるこのアルバムはオルタナティブというよりも非常に正統派な作品なのだととも思うし、その二重性というか奇妙な倒錯も含め唯一無二の作品。


Snail Mail「Valentine」

前作が10年代におけるインディー/オルタナティブロックの金字塔といえるアルバムであったように、今作でもギターを前面に出した作風になると期待していたわけだが、今作は非常に内側を向いていて歌心で場を支配するような作品となった。コロナ禍にはこのような自室に籠り窓の外へ歌いかけるような雰囲気が非常にマッチすると私は感じていて、丁寧に綴られた歌声がまさに私の求める物であったため選びました。1曲目のような開放的なギターロックも勿論素晴らしいのだけれども、2021年にはそれ以降の9曲が正解のように思える。


Fleet Foxes「Shore」

「ここじゃないどこか」というテーマで以前6枚アルバムを選んだのだが、このアルバムも「ここじゃないどこか」というテーマに合致している。数か国を巡って作られた曲とコロナの隔離期間の最中に制作された曲が混在するわけだが、題名は「Shore(海岸)」である。このアルバムの発表と同時にアメリカの太平洋岸北西部の風景も同時に紹介されており、狭い自室において開けた海岸の美しさを再現しようとするような営みを感じる。側で演奏しているような近さと広大なランドスケープが共存している不思議で魅力的な温度感を持った1枚だと思う。


DYGL「A Daze In A Haze」

「霞の中の眩暈」と名付けられたこの1枚は「先が見えない最中(=霞)における音楽(=眩暈)」の在り方を改めて確かなものにした。輪郭が曖昧なアルペジオから始まる「7624」からロックチューン「Banger」「Half of me」へ繋がる展開は弾け切る事無く、確実に歩を進める。中盤もアコースティックギター中心のミドルテンポな曲が固まっており、孤独で先が見えない中作られたという楽曲たちが丁寧なアレンジで鳴らされている。それは決して暗いアルバムということでは全く無くて「バンドで集まり演奏できる・制作できる」という事実を嚙み締めるかのような喜びに満ちた物だ。ライブではよりダイナミックに演奏されていて、それもめちゃくちゃ良かったです。


gezebelle gaburgably「The Fridge」

いまいちネットの海に誰なのか聞いても出てこない。とにかく度肝を抜かれたアルバムである。前半はパッションピット風味のシンセポップだったり、ビートルズのポップセンスをモダンなフィルターにかけたようなインディーロックであったりが高い完成度で鳴らされているのだが、徐々にテープレコーダーが壊れたように不穏なサウンドが見え隠れする。そして8曲目で暴力的なシンセサイザーの音と共にハイパーポップとしか形容できないような曲調となる。そんなアルバムの終盤にあるのが名曲「Grilled Tease」であり、ビートルズ「All You Need Is Love」顔負けのアンセムにハイパーポップの音楽性を加えたような異常な曲となっている。


beabadoobee「Our Extended Play」

昨年のグランジ/オルタナといった90'sの音楽を経由したアルバムは傑作であったが、このEPはそれに負けない密度と完成度を誇っている。M1「Last day On Earth」はthe 1975のソングライター2人が参加していて、繰り返されるアルペジオに乗った甘酸っぱいメロディーがパーティーの始まりと終わりを予感させるような青春ギターポップアンセム。M2はライブ映像でのギタープレイが超楽しそうで最高。マシューヒーリーのコーラスも楽しいM4と4曲10分とは思えない満足感。So highになっちゃうのはこっちです。


Dijon「Absolutely」

フランク・オーシャンやボン・イヴェールといった系譜に則ったシンガーソングライター。リズムを排した歌心満載のM1、手数の多いドラム・遊ぶギターが印象的なM3などR&B、ソウルを軸に多彩な音楽性を見せる。が、やはり中心にあるのは内にも外にも向いたエモーショナルに響く彼の歌声である。またYouTubeで公開されている彼の自室にアーティストを呼んで曲を演奏している映像は音楽を通して人間と人間が通じ合う喜びに溢れていて極上でした。


Muscle Soul「Fake Pleasure Syndrome」

なにがRadioheadっぽさの正体なのかをひたすら考えながら聞いていたら気づいたら10周くらいしていた。M1の音程の間をいったり来たりする歌唱方、ジョニーグリーンウッドっぽいエフェクトのかかったギターだろうか。M2のギターリフとドラムの絡み合いだろうか。はたまたM3の繰り返されるベースラインと不穏な低音のサウンドエフェクトだろうか。皮肉ととれるようなタイトルの付け方かもしれない。とにかく聴いていると随所に表れるRadioheadっぽさの虜になってしまった。


For Tracy Hyde「Ethernity」

シューゲイザー、エモ、ポストロックといったニッチと云えるジャンルに女性ボーカルを据えることで、そのジャンル自体の魅力を保ちながら非常に聴きやすく多くの人に届きやすい音楽として成り立たせている例は幾らか存在する。ラブリーサマーちゃん、downt、揺らぎなどがすぐに浮かんだ。その中でも傑出しているのがFTHだろう。ボーカルeureka氏の歌声の求心力と煌めくギターサウンドの相性は絶大で、一聴の時点では聴きやすく、バンドサウンドに耳を傾けると色んなバンドを想起させるようで私の好みにドンピシャであった。乃木坂に曲書いてくれないかな…


TV ANIMATION「Sonny Boy」soundtrack

2021年、非常に印象的だった映像作品は「Sonny Boy」であった。少年少女の冒険譚から異能力バトル、サスペンス、ロードムービー、ドクターストーンもビックリの科学漫画…と、どんなジャンルにも属さないような展開に息を吞みながら毎週鑑賞していた。そんな「Sonny Boy」を彩ったのがこのサウンドトラックである。このアニメの特徴はBGMを基本的に排し、流れる音楽はこのサントラに収録された楽曲のみである。さらに言うとこれらの楽曲には台詞さえ被らないことも多く、"あのシーン"とそれぞれが強く結びついている。エンディングを飾った銀杏BOYZ「少年少女」、最終話のミツメとtoeなど、聞くだけで映像が思い浮かぶ。2021を語る上で外すことは出来ない。


Inhaler「It Won't Always Be Like This」

U2ボノの息子、という触れ込みで聴いたので「U2の息子という冠抜きにしても…」などいうつもりはない。音楽性もニューウェーブと言っていいし、歌声は父親譲りのそれである。だがシンセやギターの疾走感、メロディーの組み立て方などはここ一年でデビューした80sリバイバルのバンドの中でもダントツにかっこいい。そんなバンドがあのボノの息子だなんて少年漫画みたいで最高じゃないすか?


PEDRO「後日改めて伺います」

BiSHのアユニ・Dのソロプロジェクトから始まったPEDROの現状ラストアルバム。BiSHは様々なアイドルが行っていた「ロック歌謡」「似非ロック」といえるサウンドを、時に生演奏を取り入れながら、限りなく"邦ロック"に近付けることでフェスブームにおいて大きな人気を得た。アイドルファンと邦ロックファンという非常に近い存在の両者から支持を集め、2021年末には紅白にも出場…と順風満帆に見えるが解散するらしい。そんなBiSHが「ロック歌謡」の域を出ないのに対しPEDROはロックバンドとして完成したように思える。ナンバーガール、初期スーパーカー、銀杏BOYSを四つ打ちブームの直前あたりの邦ロックバンドのフィルターを通したかのような楽曲たちはどこか既視感を感じる。しかしそれらに田渕ひさ子のギターによって血肉が与えられ、アユニの未完成な部分のあるボーカルと融合することでヒリヒリ感を伴いロックバンドのマジックがアルバム全体を覆っている。これがラストアルバムという踏ん切りの良さも含めて支持せざるを得ない作品です。


最後に

以前書いた6枚を含めて計30枚でした。あけましておめでとうございます。

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