見出し画像

アウトドアメディア広告をやるうえで抑えておくべきキーワード3つと、注目の媒体4選

リッチコミュニケーション総研(RC総研)」は、マーケティングに関わるすべての方へ、次世代のマーケティングを行うヒントを提供します。

海外のトレンド、注目テクノロジー、新しいメディア情報、リサーチ結果など、マーケティングの最新情報を、定期的にお届けします。

第三弾では、「いま再注目されるアウトドアメディア」と題して、タクシー広告やエレベーター広告の現状と未来について考察しています。


いま注目されている「アウトドアメディア」とは

「アウトドアメディア」とは、駅構内・電車・バス車内の交通広告や、街中・商業施設の屋外広告など、家庭以外の場所で接触するメディアによる広告の総称で、ODMやOOHとも呼ばれます。

ここ20年ほどでデジタル化が進み、昔からあった街頭のポスターや電車の中吊り広告などから、街頭ビジョンやデジタルサイネージを使って静止画だけでなく動画が配信されることも一般的になり、多様化が進んでいます。

画像1

こうしたデジタル「アウトドアメディア」の広告市場は、新型コロナウイルス感染症対策に伴う人流の減少や広告費用全体の減少などから、2020年には一時落ち込みましたが、今後も拡大していくと予測されています。

世界的にも市場は成長していくと見られており、2021年から2026年にかけて12.3%のCAGR(年平均成長率)で成長を見込むとする調査もあります。


アウトドアメディアの新たな動き

こうしたデジタル「アウトドアメディア」への注目の高まりの中で、アウトドアメディアの配信面の多様化やデジタル技術を活用した効率化が進んでいます。

例えば、これまでなかった場所にもモニターなどが設置され、動画が流れるようになっています。

今や一般的になってきた、タクシー車内の動画広告配信のみならず、エレベーター内や、トイレの個室内美容室の鏡台上など、人の手が空く環境を捉えて、新たな広告配信が始まっています。

また、ただ広告を配信するだけでなく、場所に紐づくアウトドアメディアならではの特性も注目されています。ここでは、以下の3つのキーワードを紹介します。

スクリーンショット 2021-10-14 16.14.37

●BtoB

企業を顧客としてビジネスを行う、いわゆるBtoBのサービスを展開している企業にとって、クライアント候補となる企業に対していかにアプローチするかは日常的な課題です。

この中で、セグメントを絞ったインターネット広告やコミュニティツール、ダイレクトメールなど、さまざまな手法がある中で、アウトドアメディアも一つの選択肢として注目され始めています。

オフィスビルのエレベーターやトイレは、必然的にテナント企業の決裁権者や従業員が日常的に利用するため、これらの場所で広告を配信することは、接触回数の多さや、他に情報が少ないプライベートな空間という特性から、強い訴求力コンバージョンにつながると期待されています。

オケージョン認知

オケージョン認知とは、広告についての記憶が、広告に接した状況や場所の記憶と結びついてインプットされている状況を指します。

広告に接触した後の意欲や行動の変化と深い関連があり、状況や場面を狙って広告を配信することで、強い効果をもたらすことができると考えられています。

例えば、「残業から帰宅する電車の中で見たビールの広告」や「原宿の駅で見かけた服のセールについての広告」などは、状況や場所と結びついて、見た人のその後の行動に大きく影響を与えそうではないでしょうか。

オケージョン認知は交通広告の効果指標として、株式会社ジェイアール東日本企画が新たに開発したもので、特に交通広告で形成される可能性が高く、交通広告の認知の特徴であるとうかがえる、とされています。

プログラマティックOOH

プログラマティックOOHとは、複数の広告枠をオンラインでつなぎ、取引や広告の配信が自動化されたアウトドアメディアを指します。

具体的には、広告の枠、指標、配信を一括管理できる仕組みを取り入れています。

このため、広告出稿までが短時間で済み、ターゲティングが容易なだけでなく、自動化されたプラットフォームで自由かつすばやく広告枠を買い付ける事ができます。

メリットとしては、効果測定を行い広告価値を可視化できること、そして、広告の取引や配信が自動化されていることから、オペレーションの効率化が挙げられます。


今注目のアウトドアメディア4選

ここからは、今注目すべき新しいアウトドアメディアを4つ紹介します。

エレベーター

画像3

出典:spacemotion株式会社「エレシネマ」

エレベーターホールやエレベーターのかご内で配信するエレベーター広告は、ちょうど注目が集まり始めている新興のアウトドアメディアです。

オフィスビルや大型商業施設、タワーマンションなど、ターゲットをある程度絞って配信でき、かつ職場や住まいであれば同じ人に何度も訴求できるという特性があります。

配信技術も進歩していて、これまではエレベーターのかご内では小型のディスプレイを設置して広告を配信していましたが、2019年に三菱地所株式会社と株式会社東京が出資するspacemotion株式会社が、プロジェクターによってエレベーターの扉上部に大きく映像を映し出す手法を導入し、都内のオフィスビルを中心に導入が進んでいます。

先行している中国市場では、すでにこうしたプロジェクターやディスプレイを使ったエレベーター内外での広告配信はかなり普及していて、近隣の韓国やインドネシアでも広がっているため、日本でも今後活用が急拡大すると見込まれています。

注目のサービス:
エレシネマ spacemotion株式会社
東京エレビGO 株式会社東京

トイレ

画像4

出典:株式会社バカン「VACAN」

最近注目を集め始めているアウトドアメディアの一つが、トイレの個室内にディスプレイを設置し、広告を配信するというものです。

プライベートな空間のため印象に残しやすいこと、ターゲットを男女にはっきり分けやすいことに加え、オフィスビル、商業施設、コンビニエンスストアなど、設置する建物や地域によって、より細かくセグメントを分けて訴求することも可能です。

 また、トイレの利用時のみ配信されるよう、ドアに設置したセンサーで開閉を判定し配信するなど、広告の出稿元は、再生回数をある程度正確に把握することができます。 

設置する施設やアプローチはさまざまなトライアルが続けられているのが現状で、 羽田空港や関西国際空港などに設置する事例や、ディスプレイが生理用ナプキンのディスペンサーを兼ねていて、ナプキンを必要とする利用者が無料で受け取れるサービスを展開している事例などもあります。

注目のサービス:
VACAN 株式会社バカン
OiTr 株式会社オイテル

ヘアサロン

画像5

出典:株式会社デジタルガレージ「サキザキテルコ」

ここ数年でかなり普及しているアウトドアメディアは、ヘアサロンにディスプレイを設置するタイプです。

他のアウトドアメディアとは明確に異なり、ヘアサロンの平均利用時間は90分程度と長いため、長いコンテンツを配信できるという特徴があります。

ヘアサロンという環境上、無音のコンテンツが主体となりますが、ヘアケア用品や美容雑貨など、広告と連動した店内でのサンプリング企画も可能なため、デジタル広告とリアルな体験を組み合わせた訴求が可能な点も唯一無二の媒体と言えます。

また、利用者が席にいるかどうかを、ディスプレイ付属のセンサーで感知し、見られる状況で再生された広告数を正確に測定、レポートしているサービスもあります。

注目のサービス:
サキザキテルコ 株式会社デジタルガレージ
BEAUTINISTA TV 株式会社CMerTV

タクシー

画像6

出典:株式会社ニューステクノロジー「Canvas」

アウトドアメディアの中で、今最も活気があるものの一つは、タクシー車内での広告配信です。

すでに都市部を中心に普及が進み、年内の広告枠はすでに埋まってしまっているという声も聞こえてきます。タクシーで移動中のスキマ時間に、比較的閉鎖された空間で視聴できるため、より強く視聴者に訴求できるという特徴があります。

また、経営者を含む比較的世帯年収が高い層が利用しているという傾向もあり、BtoB目的の訴求効果も期待されています。

さらに、空車中のタクシーの車窓をスクリーンに、車内のプロジェクターから広告を映し出すサービスも今年から始まっています。街を移動するタクシー自体を広告ディスプレイとすることで、多くの接触効果を生み出すと期待されています。

動画を投影することは法律で認められてはいませんが、技術的には可能なため、将来的には動画も配信される日がやってくるかもしれません。

注目のサービス:
TOKYO PRIME 株式会社IRIS
Canvas 株式会社ニューステクノロジー

後編では、エレベーター広告 株式会社東京の羅悠鴻代表のインタビューをお届けします。



*上記記載情報は2021年10月時点のものです。
*PDFでご覧になりたい方は下記よりダウンロードしてください。