ポルトガル発 バッグブランド PORTAに学ぶ、人と自然に寄り添う物作り 後編
どこで、どうやって、誰の手によって物が作られているのかが見えにくくなってしまった現代に、今一度「地域や生産者に寄り添うサステイナブルな物作り」をしようと立ち上がったブランドが、ポルトガルにあります。
今回は、ポルトガルの小さな村に住む職人家族と共にカゴバッグを作っている、PORTA(ポルタ)のYukiko Sampaioさんにお話を伺いました。後編では、働く環境と自然の循環に寄り添った物づくりについてお届けいたします。(前編はこちらから)
PORTAさんのカゴバッグのデザインや生産は、どのように進めていらっしゃるのでしょうか。
職人家族はポルトガル国内へ向けて生産をしてきたため、海外へ向けた物作りの知識がなかったのですが、日本の方たちはどういうものに興味を持ってくれるのだろうと、とても前向きに向き合ってくれました。「こんなもの作れる?どう?」「それならこんな感じで作ってみるのはどう?」といったように、お互いの考えを出し合いながら形にしています。
フェアトレードというとこちら(生産を依頼する側)の目線の言葉なのかなとは思うのですが、職人家族にできあがったバッグの値段を決めてもらっています。彼らがいなければ物作りができないので、彼らがハッピーでいることはとても大事だと思うんです。それがサステナビリティに繋がると思いますし、後を継ぎたいかということにも繋がってくると思います。自然と共存しないとできない大変な作業なので、作り手のモチベーションは一番大切にしたいです。
ー生産をするとなると(規模が大きくなるほど)一方的に発注されることが多いように思うのですが、お互いの考えやアイディアを尊重しながら、ハッピーな環境で物作りができるのは本当に素敵ですね! バッグのデザインも心惹かれます。
縦糸に麻を、横糸に乾燥した葦を一本ずつ織り込んでいます。テキスタイルのデザインは職人が持っている技術を使いながら、地域に伝わるパターンを織り出しています。その伝統的なパターンに色を加えたり、仕上がりの形を変えたりすることで現代的なスタイルを作り上げています。
職人家族がいての自分で、自然があっての職人家族で、全てが一つに繋がったループになると思っています。このことは私たちのサブタイトル「サステナブル ループ」としても掲げているのですが、循環しないとどこも苦しい。けれど、経営ばかりの話をしていると、自然とのバランスが崩れてしまう。経営を考えると動きがないといけないのですが、大量生産をして売れなかったから廃棄をするのは絶対に違うと思うんですよね。廃棄処分になるのは、作った人の気持ちを考えると一番悲しいので、避けたいです。手作りなので生産量に限りがあるのですが、それが逆にいいところで、少しの生産でも楽しんでいただけるような商品が必要だと思っています。発注いただく時は、数字の条件よりも、どこに流通されるのかという確約がある程度欲しいですね。商品がただたくさん買われて、最後に魅力のないものとして扱われてしまうのは違うと思うので、たった1つでも良いので、ブランドの背景に共感いただける方に届けることができたら嬉しいです。
PORTAの今後について教えてください。
生産から消費までのサイクルを考えつつ、自然と職人家族に寄り添いながら、無理の無い量で年に一度、SS(春夏)に新しいデザインや色を取り入れたバッグを作りたいと思っています。今までSSのみ新作のカゴバッグを出していたのですが、ポルトガルには他にも自然に根付いている原料や素材がたくさんあるので、今後はAW(秋冬)にそれらを活かした新しいアイテムを展開しようと思っています。PORTAと出会った方に大切にしていただけるような物作り、サステナビリティや自然素材に特化した物作りを心がけていきたいです。
また、葦のテキスタイルの文化は今4代目、5代目でひ孫の方が受け継がれているのですが、ポルトガルでも近代化が進み、家族間で引き継がれる伝統工芸の技術を次の世代へ受け継いでいくことが難しくなってきています。この素敵な伝統技術を守るため、(ポルトガルの)市と協力しながら後継者の育成を行い、技術を受け継ぐ手助けをしていきたいと考えています。
インタビューを終えて
今回お話を伺わせていただき、自然の循環に合わせた物作りは、これからの時代にますます大切にされるべき考えだと実感しました。欲しい物が欲しい時に手に入る現代にあえてスローダウンし、自然に逆らって無理に新しいものを作り出すのではなく、自然と共存しながら、物作りをされているYukikoさん。天候や育ちに左右され、限りのある原料を使った物作りを「不便」と考えるのではなく、「良さ」と捉えることで様々な可能性を見出し、目を輝かせていらっしゃる姿に、物作りの未来の明るさを感じました。
企業から生産者へ一方的な依頼になりがちな現代の生産のカタチも、原点に立ち返り、人と人の繋がりを感じながら、相手を尊重することで、皆が心地良いと思える働き方や、お互いの強みを生かした物作りを叶えてくれるのではないでしょうか。
自然に寄り添いながら、職人の手によって心を込めて作られたオシャレなカゴバッグを持っていると、毎年夏の訪れが楽しみになりそうですね!
PORTA ウェブサイト: https://www.portabags.com/
TEXT: Asuka Cali EDIT: Hiroco Ryugo, Marie Yamamoto
GRAPHICS: Marie Yamamoto
PHOTOS: PORTA
2020年 9月15日投稿(アーカイブ)
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