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鉄マンリシェ

こんリシェ(՞ . .՞)ฅ”
今日はマシュマロ返信にも書いた香ばしい黒歴史の詳細を語ろうと思う。

――当時、私は中学2年生。
吹奏楽でパーカッションに勤しむピチピチの14歳であった……。その時の彼氏というのが次期テニス部部長の小口という男である。

吹奏楽は大会やコンクールが多々あり団体戦という事もあって結束力が試される。仲も自然と深まるというのが当たり前であった。
帰り道も田舎の一本道だ。基本的には部活も同時に終わる訳だし一緒に帰ることが普通であった。

だが、私は小口と付き合っている。
部活が終わると大抵校門前に小口は待っていた。

ヒューヒューと冷やかされるのも慣れ、2人で手を繋ぎ校門を抜ける。家が近いのは小口だったのでいつもは一本道を抜けた後の三又の道手前で別れる事が多かった。

その時はまだ中学生だ。たわいも無い話が多い。
部活で誰がどうしただとか先生のだれだれがどうだったなど何の下心もないピュアな会話が無限に展開される。そして、そんな日常に囁かな幸せを見出していた。

とある日の事だった。いつもの様に手を繋いで帰っていると今日はリシェの事送るよ、そう小口が言った。私の家は学校から3.5kmと遠く隣の中学との学区境目に住んでるも同然だった。なので、送るよと言われた時、喜ばずにはいられなかった。

最愛の彼氏が家まで着いてきてくれるのだ。長い帰路もあっという間だろう。私は期待に胸をふくらませた。



……案の定、帰り道はいつも以上に盛り上がった。
いつもの取り留めない話に合わせて今度どこかに行こうというデートの話まで展開され私の頬の筋肉は緩みに緩んでいただろう。

「あっ、もう着いちゃったね……」

気が付けばあっという間に私の家の前に辿り着いてしまう。繋いだ指が名残惜しく離れる。そして、その手が私の頭をそっと撫でるとそのまま頬に添えられ、

私達は唇を重ねた。

……それが彼との初めてのキスであった。

名残惜しく唇が離れると今度は私から唇を重ねる。中学生の思考は単純明快である。キスしたら止まることを知らない。そうして暫く互いの唇を貪りあった後、照れ臭い中何気ない会話へ切り替わる。

そうして日は落ちそれでも家の前から私達が離れることはなかった。

「じゃあ、そろそろ帰ろうかな……」

相当に話し込んだ後、小口がそう言った。
中学生の時は携帯なんてものを持ち合わせてはいなかったから時刻は分からない。ただただ楽しくて話が弾んだ記憶しかない。当たり前だが、それが何分だったかなんて分かるはずもない。

彼を見送り誰も見てないことをいい事にスキップで家へと帰る。玄関の扉を上機嫌で空けると……

「今何時だと思ってるの……!?」

母親が腕を組み仁王立ちをしていた。

「えっ、19時とかじゃないの??」
「アンタ馬鹿じゃないの??お母さん今警察に連絡するところだったんだからね!」

母親の怒号を聞きながら目線を時計へとやると時刻は22時をとっくに過ぎていた。つまり、小口と私は4時間以上立ち話をしていたことになる。

「学校に連絡しないと……!」

母が慌てふためきながら受話器を手にする。聞けば友達の家をフルコンボされた後、学校にも連絡したという。私の血の気がサーっと引いた。
母親の謝る声がどこか遠くに感じた瞬間であった。

「もう今日はお風呂に入って寝なさい!!お母さん電話しておくから」

そうして風呂に入りぼんやりとした頭で私は布団へと身をすり込ませるのであった……。



――次の日

HRが始まるであろう時刻に突如多目的ホールへと招集された。聞けば緊急の学年会議らしい。何かあったのだろうか、そう思い重たい足を進める。
学年主任だった担任がステージで険しそうな顔をしているのが分かった。もしかして、不審者情報……?楽天的だった私はそんな呑気な事を思いながら体育座りをするのだった。

担任がマイクを握る。

「えー、」

チラッと担任と目が合った。少しだけ嫌な予感がした。

「昨日家に帰らない男女がいると学校に通報がありました」

こういう時、大抵勘は当たるものである。私は担任から目が離せないままぼんやりとした頭のまま次の言葉を待った。

「何らかの犯罪に巻き込まれてると一時は騒然となりましたが特にトラブルではありませんでした」

担任と目が合い続ける。蛇に睨まれた蛙とはこの事だ、そう思う程に私の体は言うことを利かなかった。ザワザワと周りが誰だ誰だと囃し立てる。
今になって何をしでかしたかが身に染み渡った。



学年集会が開かれたその日、小口とは別れた。気まずくなったのは勿論だったのだが私が一向に股を開かない事が気に食わなかったらしい。それに尾ひれ背びれがついて私には鉄のマンコという意味で鉄マンという嫌なあだ名が付くのであった。


これが私の中学2年生の黒歴史である。
友達の話を聞くと小口は今結婚して沖縄で幸せに暮らしているらしい。恐らく、こうして鉄マン時代の話を覚えているのは私だけであろう。

今後も黒歴史を掘り進んでいこうと思う……。
マグロご期待下さい。

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