第16話 李家が頻繁にお世話になっている霊媒師

李家は頻繁に霊媒師にお世話になっている。これは、その中の1人の方についての話。その霊媒師は女性、年齢的には中年のはずだが、見た目は20代の若さを保っている。それが霊能力によるものかどうかは不明。何よりも特筆すべきなのは、その能力。彼女の霊能力の高さと特殊さを裏付ける出来事はいくつもあるのだが、その1つをここで紹介する。

その出来事というのは、悪魔祓いだった。ある日のこと、李さんの親戚の誰かが知人をその霊媒師のところに連れて行った。霊媒師がその知人を診た結果、その知人は悪魔に取り憑かれていることが判明。悪魔の間にもヒエラルキーが存在するらしく、その知人に憑いた悪魔は高位の者だった。普通の霊媒師がその悪魔と対決したならば、生きるか死ぬかの問題どころか、むしろ奇跡が起こらなければ死ぬ。そのくらい強い悪魔だったそう。ところが李さんのその親戚は彼女の能力の高さとその特殊さを知っていた。それが、李さんがその知人を彼女のところに連れてきた理由だった。
「あなたなら、悪魔祓いができると思って」
その親戚の人選は正しかった。その霊媒師は
「やれるだけ、やってみます」
と言いつつ、最終的にその知人に憑いていた悪魔をやっつけた。

では、何をしたか? それは、書けばいたって単純だ。彼女は最初に霊視でその知人に憑いている者が悪魔であることを認めた。次に、霊媒師はその悪魔に説得を試みた。
「その知人から離れて地獄に帰れば、何もしない」
という言い方だったそう。当然、知人に憑いていた悪魔は応じない。
「やむを得ませんね」

***
ここで、この霊媒師の霊能力の「特殊さ」について紹介する。彼女は除霊を行う際、悪魔や悪霊を使役する。陰陽師が式神と称して鬼を使うようなものと考えると、わかりやすいかもしれない。悪魔や悪霊と言っても、全てが根っからの悪というわけではない。ある時期は悪者だったが、今は改心しているというパターン、何らかのメリットがあるため彼女に従っているパターンがほとんどだ。一部には、彼女のファンになった悪魔もいるとのこと。
***

「やむを得ませんね」
彼女はそう言うと、彼女の後ろから黒い影が現れた。それはコウモリの翼を左右に1枚、その前側にカラスの翼を左右に1枚持っていた。影が形を成すにつれ、それは羊の頭を持ち、身体がいかつい体型の男性であることが視認できた。足はブタの足、つま先の辺りが割れており、ブタにしては長い(1m程度)尻尾が生えていた。身長は、2m程度。
「xxx、あれを滅せよ」
xxxは、彼女が使役するその悪魔の名前。李さんのその親戚はその悪魔の名前を聞き取れなかったとのこと。その悪魔は護衛のように彼女の前へと移動し、その知人と対峙した。するとその知人の身体が震え出し、先ほどの悪魔の出現と同様、黒い影がその知人の周囲を覆った。その影は形を成した。その姿は、漆黒の大蛇。ただ1つ、通常の蛇とは異なったのが、その大蛇は頭から枝分かれした大きな角を生やしていたこと。その角は髪の長い女性の上半身の形をしていた。2体の悪魔はにらみ合い、先に攻撃を仕掛けたのは、大蛇だった。大蛇は素早くその身をくねらせて羊の悪魔に突進し、蛇の頭の部分が相手の悪魔を一飲みにした。

勝負が決まったのは、次の瞬間。つい先ほどまで余裕の表情を浮かべていた大蛇の角の女性は苦悶の表情を浮かべ、断末魔の叫び声をあげた。その直後に大蛇の腹が裂け、中から羊の悪魔が飛び出した。のたうち回り、その場から逃げようとする大蛇。圧倒的な力の差を思い知らされたのだ。羊の悪魔は大蛇を追いかけ、捕まえた。
その先は、見るも無残な光景が繰り広げられた。わずかな抵抗と懸命な逃走を試みる大蛇と、肉を引き裂き、骨を砕き続けた羊の悪魔。辺り一面には大蛇の黒い血と、その黒い血に覆われた肉片がばら撒かれた。そして大蛇の動きが止まった頃、羊の悪魔は攻撃を止め、彼女の方に向けて合図を送った。いつの間に準備していたのか、彼女は手に銀色の剣を持ち、大蛇の角の女性のところへと歩いて行った。
「これより、お前を滅する。覚悟はいいな」
何も答えない、大蛇。答えるほどの体力が、残されていないのは明白だった。彼女は刀を振り上げ、まずは角の女性の頭、そして心臓、大蛇の目を刺した。それから彼女は大蛇の頭と角の女性を中心に銀の剣で切り刻み続けた。すると大蛇の身体は銀色の光で覆われ、辺り一面に広がった黒い血もろともその場から忽然と消え去った。
「悪魔祓いは、完了です」
羊の悪魔も消え、辺りは静寂を取り戻した。李さんのその親戚も、知人も、悪魔祓いと言えば大声でお祈りを繰り返す程度のイメージしか持っていなかった。まさかその女性霊媒師にそのような暴力的な光景を見せつけられると、彼らは予想だにしていなかった。

以上が、その霊媒師の霊能力の高さと特殊さの話。いろいろなタイプの霊媒師が存在していることを示す一件だった。


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