第15話 ダイエットの薬

李さんの親戚の孫かひ孫の話。中高生の女子には悩みが尽きない。人間関係や恋愛、勉強など、枚挙に暇がない。彼女もそんな高校生の1人だった。彼女の場合は、外見。
「もっとスリムになりたい」
というのが、彼女の悩みだった。彼女は別に太っていたわけではないのだが、年頃の女子の中にはモデルの体型に憧れを抱く者も多い。彼女もまた注目のモデルに憧れを抱き、
「自分もあんなふうにきれいになりたい」
と、日々目標とするモデルに近づくために努力していた。
彼女があのダイエットの薬に遭ったのはそんなとき。
「メッチャ効果高い漢方薬なんだって」
そんな噂を耳にした彼女は、休日、友達と一緒に怪しげな店へ行った。
「A子も、B代も、C美も、みんなココ来てるんだって」
周囲を見ると、満員ではないものの、店内には同じくらいの年頃の女子が何人もいた。中には見覚えのある顔も。2人は目的のブツが売られているコーナーに行った。
「これだって、その薬は」
その友達が手に取ったのは、「餓鬼玉」という薬。「ガキノタマ」と読むのだと、教えてもらった。彼女は友達の勧めもあってそれを購入し、帰宅後、早速服用した。

効果は抜群だった。みるみるうちに彼女は痩せ、憧れていたモデル体型を手に入れた。周囲から集まった羨望の眼差しに彼女が優越感を覚えたのも納得だった。しかしその代わりに、彼女はあるものを失った。彼女の食欲は満たされなくなった。いくら食べても太らないから、たくさん食べられる。たくさん食べても、満足できない。
「何かがおかしい」
食欲が満たされなくなり、徐々に擦り減っていく理性的思考。モデルのようなスリムな体型を手に入れた当初は彼女の虚栄心が満たされたものの、急速に減っていく体重は、確実に彼女の体力を奪っていった。
「本当に、大丈夫なの?」
友達が心配で声をかけてきたとき、彼女はすでにガイコツのようにやせ細っていた。彼女の身を案じた両親は彼女を霊媒師のところに連れて行った。
「間違いなく、餓鬼が憑いてますね」
そう言われ、餓鬼玉に思い当たった彼女。彼女はダイエットの薬について霊媒師に話した。
「おそらく、その漢方は不良品ですね。本来その漢方は、適度に痩せるためだけのもの。太りやすい体質の人にとって効果的な薬なんです」
霊媒師によると、不良品の餓鬼玉には餓鬼そのものが憑いているそう。服用した人間はやせ細って餓鬼と酷似した姿になり、餓死するそうだ。
霊媒師に除霊してもらい、彼女に憑いた餓鬼は追い出された。
「後日、餓鬼玉を持ってくるように。絶対に服用しないこと」

その一件で、彼女はごはんのありがたみを思い知り、餓鬼玉を服用する前のときよりも太った(この話を聞いた時点では、標準体型に戻っていた)。


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