見出し画像

鳴り続ける携帯との向き合い方


みりんとキーボード

Twitter…ではなくXで見かけたこの子。
携帯やタブレットを立て掛けながら
Bluetoothで接続してキーボードにできる。
そんな可愛くて便利な商品です。
ビジュアルに一目惚れしました。
そして仕事柄外回りの多い私は
狭い車内でいちいちPCを開いたり
Wi-Fiをデザリングしたりするのが面倒で
携帯でいつもちまちま文章を打ってました。
でもこの子があればどんな長文でも
まるでパソコンで入力するかのように
携帯へスラスラ入力できるのです。
3coins、さすがです。

いつでも鳴る携帯

さて、私は長文を打つことが多いと書きましたが
それも私の仕事柄だと思います。
お客様からのメールはもちろん、
社員からのメッセージも絶えません。
なかなか通知が来ないポンコツ社内チャットツールは
時間も曜日も関係なく、
誰かが働いている限り毎日なり続けます。

大抵は事務的な連絡や問い合わせですが、
中には悩み相談や普通の雑談など様々です。
私はどんな内容であろうと読んだらすぐに返します。
後でやろうは馬鹿野郎。
実際、このチャットの返事が遅いと
満足度の低下に直結するのです。
塵も積もれば山となるとはこのこと。
小さな不満が退職率増加につながるのです。

携帯を手放せない理由

私はあることがトラウマで社用携帯を手放せなくなりました。

ある平日、朝起きて携帯チェックをすると
メッセージが1件入っていました。

「昨夜、遺書を書いて橋へ向かいました。
いざとなると怖くて飛び降りれませんでしたが
そんなことをしてしまう自分が怖いです。
迷惑なのは重々承知ですが
一度お話を聞いていただけないでしょうか?」

背筋に冷たい汗が流れました。
慌てて電話をかけてその社員の寮へ向かいました。

多少人見知りではあるものの
クマみたいで温厚でにこやかな彼に何があったんだろう。
なぜ私は気づけなかったんだろう。
もしなにかあったら彼の大切なご家族にどう謝ろう。

そんなことを考えて涙で視界を滲ませながら
私は車を走らせました。
途中、上司に相談してみようと思い
コンビニで車を停めて電話をしました。
上司からの一言はとても冷たく感じたのを覚えています。

「よくあることだよ。話聞いて見るしかないんじゃない?」

この上司ッッッ
いつもクールぶっているとは思っていたけど
外道がッッッ!!!

心の中で刃牙が目覚めるのを抑えつつ
とりあえず私が泣くわけにもいかないので
涙を拭いてチャイムを鳴らしました。

なんとか生存確認。
ホッと一安心したのも束の間、彼の話は予想外のものでした。

コンプレックスは古く、根深く

彼の悩みは昨日今日でできたものではなく、
学生時代からの積み重ねでした。
県内でも中堅クラスの進学校で
運動部にも所属していた彼。
部活の仲間とは会話をするものの
本当に仲がいいのは中学時代からの友人1人だけ。
周りとうまく溶け込んでいるように見えるかもしれないが
ずっと孤独感があったとのことでした。
「自分にはコミュニケーション能力が足りない…」
そう感じたまま大学へ進み、社会人になった彼。
会社の人は優しく、どうやったらコミュニケーションを取れるのか
一緒に考えてくれる時もありました。
お客様先からの評価も良く、誰から見ても問題はない彼。
でも周りが一緒に解決しようとすればするほど
「そんなに簡単に直っているなら苦労していない」
「何度もいろんな方法を試したのにうまく行ってないのに…」
とマイナスな方向に思考が向かっていってしまったようでした。

長い長いメッセージの裏側に

なにも彼が特殊なわけではないのです。
コンプレックスは一朝一夕でできるものではなく、
長い時間をかけて積み重ねられて歪んでいくのです。
私にだってそんなコンプレックスはあります。

私が毎日他愛のない文章をやりとりしている人がいます。
その人は現場でリーダー職もこなしてくれており、
他の社員に比べても接触回数が多く、
プライベートの事情もなんでも話してくれます。
ただ、感情の起伏が激しい一面があり、
落ち込む時には希死念慮を口に出すことも多いのです。
一度、彼の日課である堤防での散歩にお邪魔しながら
面談をおこないました。
聞いたのは仕事のことではなく今までの人生のこと。
彼の悩みはそこからきていると確信しました。
家庭環境、考えてきたこと、やってきたこと、
そのどれもが重く、私はとにかく聞くことに徹しました。

その後も変わらず元気に彼女の愚痴なども話してくれますが
彼が本当の意味で安定する日は来ないと気を引き締め、
仕事に関係のない話でも乗るようにしています。
小さな波を見逃すときっと孤独感を与えてしまい、
それがトリガーになりかねないからです。

仕事に関係ないでしょ?
それはそうですが、仕事=人生の半分
だとすれば仕事は人生を左右する力を持っています。
仕事をただ充てるだけではなく、
その人の人生に関わるのが今の仕事であると自覚しています。

みりんは潰れない

そんなに面倒見ててみりんは大丈夫なの?

そう聞かれることが多いですし、
無理しないでね、と言われることも多いです。

ただ、私は後悔したくないんです。
一見利他的に見える行動も、
周りまわって自分のためにもなるのです。
彼ら、彼女らに何かがあった時、
きっと私は耐えきれない悲しみに襲われ
立ち直ることに苦労するでしょう。
それを思えば今この瞬間なんて何ともないのです。

いいことだってあります。
「恋人ができたんだ!」
「今度結婚を考えてて…」
「子どもが産まれました!」
など幸せな共有もたくさんもらっているのです。
最近出産した子は産まれて30分も経たない段階で
私へ写真を送ってくれました。

『こんなに良くしてもらって感謝しかない』
『おかげさまで人生が変わりました』

そう言ってもらえるだけで
つらいことなんてひとつもないと思えるほど。
全員がこの会社で幸せになれるわけではないことは分かってます。
その中で、せめて不幸にならないように、
せめて人生を繋ぐことができるように
いろんな人生を伴走できたらいいな、という思いです。

…でもたまには誰か焼肉くらい連れていってくれよ、
と思う日もあります。人間だもの。

この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?