1d-lsd(きっかけ編2)

彼へ送ったメッセージに既読がつく。
私はぐっと息を呑み、彼からの返信を待った。
彼とは中学時代の旧友で、所謂「問題児」であった。そんな彼はいつの間にか、
知り合い専門のプッシャー(売人)となっていた。

私の緊張は知らんふりのバイブ音が、四畳半の自室に
響き渡る。急いでスマホを確認してみると、来週には
渡せるという返答があった。
心臓が跳ね上がる感覚がした。
反芻する思考。自問自答。
不安と期待が混ざり合う感情が流れ込んでくる。
私はこの心情を正直に、彼に吐露した。

「最初は皆んなそうやし余裕よー笑」

売人というと、暗いイメージがあったが、彼は昔の
彼のままだった。明るく、教師から叱られても、
テストで一桁を取っても、堂々としていた。
私は彼に憧れに近い感情を抱いていた。

一週間後の金曜日、とうとう約束の日がやってきた。
待ち合わせの駅、そこに彼の姿はあった。
身長がだいぶ伸びていて、身体も顔も大人らしく
なっていた。
私達は軽い挨拶を交わした後、本題を思い出したように人目のつかない建物で受け渡しをした。

几帳面に畳まれた5000円札を財布から取り出した。
確か母親にお小遣いとして貰ったものだ。
自分のためにお札を折ったと考えると、
少し胸が痛む感覚がした。こんな事に使用して良いのか。


しかし、ここまで来ていて引くという選択肢は無い。
私は5000円札を渡し、彼から銀紙に包まれたそれを
貰った。それは窓から差し込む太陽の照らされ、 
一層輝いて見えた。
まるで宝石のように。