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84 学校が老人ホーム?

久しぶりに知り合いの中学生に会いました。「学校はどう?」と聞くと彼の口からは「老人ホームみたいだよ」ということばが返ってきました。高齢の教師がたくさんいるからだそうです。60代が多く、70代も数名いるようです。どちらも彼にとっては祖父母の年代です。ひと昔前はまず目にすることのなかった世代です。私も60過ぎに突然電話がかかってきて非常勤講師を頼まれたことがありますが、生徒との年齢差を実感しました。

学校現場で近年増えているのが定年後に再任用される教師です。65歳まで働くことができ、校長など管理職だった人も再任用として勤務しています。私の元同僚の中にも再任用の人はたくさんいます。教師不足から65歳以上の元教師も臨時的任用教員や非常勤講師として雇用されています。

高齢でも元気な人はたくさんいますし、教えることが好きでいつまでも教師をやっていたいという人は少なくありません。現場経験の豊かな先生たちですから知識は豊富でしょうし、指導力のある人も少なくないでしょう。現場の状況を熟知していますし、生徒の扱いも慣れています。若い教員にとっては身近な先輩から学んだり、相談できたりという利点がありますし、現場で指導のノウハウを引き継ぐことができます。雇用する側にとっても初任教師のような研修を行う必要がなく、即戦力として活用できる便利な存在です。生徒にとっても多様な年代の教員がいるというのは悪くないと思います。

定年後も収入が得られるというのは教師にもありがたいことです。でもその額は大幅に減ります。仕事の内容はそれまでとあまり変わらないのに、給与もボーナスも減ります。それでも続けるのはやはり教えることが好きだからでしょうか。

一方で課題もあります。先の中学生は「年取った先生はいろんなこと知ってるけどあまり動かないよ。おれはまだ若いなんて言ってるくせに、大変なことはみんな若い先生にやらせてる」と言っていました。「授業でも同じことを何度も繰り返すし、前に言ったことをすぐ忘れる」とも言っていました。加齢による身体の衰えはやはり避けられないのでしょう。
 
教師自身にもジレンマがあるようです。こんな声を耳にします。「60歳を過ぎるともう生徒と一緒に走るのは無理。物忘れも多く、生徒の名前だって覚えられない」「ICTなど進歩する技術に追いついていけない」「老害と言われないように気を遣って生活している。出しゃばらず、余計なことは言わないようにしているが寂しい気もする」「若い人たちが気を遣ってくれているのがわかりなんとなくやりにくい」などという声です

さらに、何かにつけて若手に説教をしたがる人、雑談ばかりしている人、過去の業績を得意気に話したがる人など周囲から煙たがられる存在の人もいます。他にやることがない、家にいても退屈だから働いているという人も少なくないようです。

高齢の教師が増えれば当然教師の平均年齢は上がります。この先も増え続けたら先の中学生が言うように老人ホーム化する学校が増えていくのは明らかではないでしょうか。「学校で介護教育もいっしょにできるから一石二鳥だ」なんて冗談を言っている人がいましたが、そんなことを言っている場合ではないと思います。

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