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アリの命

素足にサンダルで歩いていたら足の甲が何やらもぞもぞしました。見ると黒い粒のようなものが動いています。アリでした。2ミリほどの小さなアリです。

「刺されたら大変!」そう思った私はとっさに指でアリを押さえつけました。アリはいとも簡単につぶれてしまいました。

幸い私は刺されることはありませんでした。でもアリにとっては不幸なことです。「刺されなくてよかった」と思いながら私は何となく後ろめたい気持ちになりました。

無残な姿となったアリを白い紙の上に置きました。それはもはや小さな黒い点にしか見えません。ついさっきまで生きていた命とは思えません。

アリは私の足の上を歩いていただけです。刺すつもりもなかったかもしれません。でも私は当然のようにアリを殺しました。

偽善者ぶることが無意味であるのはわかっていますが、最近なぜかこんな気持ちになることが多くなりました。年齢のせい? それとも不条理なことが多い世の中だから?

私は黒い点をしばらく見つめました。


切手はアリの大きさを示すため

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