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19 首相から届いた手紙 

教員時代、何人かの首相に生徒からの手紙を送ったことがあります。若者の政治への関心が薄らいでいる今、生徒には少しでも政治に関心を持ってもらいたいという気持ちからです。中学生も数年後には選挙に参加するようになります。直接であれ間接であれ政治を動かす力となる彼らには中学生の頃から少しづつ政治に目を向けてほしいと思ったからです。手紙を出した首相の中には返事をくれた人もいれば、くれない人もいました。返事をくれた一人がH首相でした。便せん数枚に手書きで丁寧にしたためられていました。米国大統領との会見を終えて帰国する飛行機の中で書いているとありました。

生徒たちにはそれぞれ自由に手紙を書いてもらいました。学校や社会について書いた生徒もいれば、家族や友達について書いた生徒もいます。いじめや偏差値教育、受験のことなど自分に身近な話題を取り上げた生徒もいますし、当時国会で議論されていた問題や世界情勢について書いた生徒もいます。首相への注文を率直に書いた生徒もいます。中には親し気にファーストネームで呼びかける手紙もありました。でも、中学生の娘さんを持つH氏ですからそんな生徒たちの気持ちを理解してくれるだろうと期待し、よほど失礼な文章でない限り私は修正を求めませんでした。

「手紙なんか出しても読んでもらえないんじゃないの?」と言っていた生徒たち。首相本人から返事が来るなど予想もしていなかっようで、手紙を見たときは一様に驚き、そして喜びました。首相が生徒たちの手紙に誠実に対応してくれたことを私は嬉しく思いました。同時に生徒たちが少しづつでよいから社会の問題に目を向けるようになってくれることを願いました。

中学生も社会の一員です。 中学生なりの視点で社会に目を向け、どういう社会が理想であるかを考えてほしいと思います。そして社会を作る原動力になってほしいです。社会を動かすのは一部の政治家ではなく、すべての国民だということを理解してほしいと心から思います。


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