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「ラーケーションの日」なんかなくたって休んでよいのでは?

「ラーケーションの日」という制度を愛知県が導入するというニュースを聞いて「あれっ?」と思いました。

愛知県は公立学校の児童や生徒が、保護者の休みに合わせて平日に年間3日まで学校を休める「ラーケーションの日」と名付けた制度を、全国で初めて来年度から導入すると発表しました。

愛知県の大村知事が16日の記者会見で発表した「ラーケーションの日」。

「ラーケーション」は、英語で学習を意味する「learning」と休暇の「vacation」を組み合わせた造語で、子どもが休暇中の保護者とともに校外での学習活動を楽しむという意味が込められています。

「ラーケーションの日」は、県内の公立の小中学校や高校などに通う児童や生徒が保護者の休みに合わせて、校外で取り組む活動をみずから企画し、保護者が学校に届け出ることで、平日に年間3日まで取得できるということです。

取得しても、欠席扱いとせず、受けられなかった授業は、自習で補う方針です。県によりますと「ラーケーションの日」の導入は全国で初めてで、来年度の2学期以降、順次、導入する予定だということです。

大村知事は「ラーケーションの日」は休みの満足度を高めることで仕事の効率を上げる「休み方改革」の一環だとしたうえで、「保護者は『ラーケーションの日』に合わせて休暇を取得し、子どもと一緒に楽しむことで保護者の休み方改革につながる」と述べました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230317/k10014010981000.html


「あれっ?」と思ったのは、「ラーケーションの日」なんていうおかしな名前の制度をわざわざ設けなくても子どもたちは学校を休んでいいと思うからです。義務教育というのは保護者が子どもに教育を受けさせる義務があることであって、子どもが学校に行く義務があるということではありません。 子どもには教育を受ける権利があります。だから休む権利もあります。それなのになぜわざわざこんな制度を設ける必要があるのでしょう。

愛知県の制度は子どもが学校に行くのは当たり前という前提のもとに作られる制度のように思います。そこには「子どもは学校にいくもの」という社会で広く共有されている認識があります。「子どもは学校に行かなければならない」「子どもは学校に行くのが当たりまえ」「子どもが学校を休むのはよくない」と考える人が多くいます。だから「不登校」などという言葉が生まれるのだと思います。今回の発表を受けてネットを調べたところ私の想像以上に日本の社会にはこうした認識の人が多いことを知りました。

教師の中にもそう考える人は多いようです。私が教員だった時、保護者と旅行に行くから休みますと生徒が言ってきたら「それはいいわね。いろんなことを体験していっぱい楽しんでいらっしゃい」と私は言いました。でも同僚の中には「学校をさぼって家族で遊びに行くなんて」と言ってよく思わない人もいました。「そんなこと認めたらみんな好き勝手に休むようになる」と言う人もいました。「いいじゃないですか、保護者がそれをよいと思ってやるのですから」と私は言いましたが納得しない人は多かったです。家族旅行などは学校では得られないことを得る絶好の機会だと思っていましたし、今もそう思っています。

私自身も保護者の立場で子どもを休ませることはありました。リフレッシュ休暇を取得したときに小学生の子どもを休ませて海外に出かけました。周囲がどう思ったかわかりませんが、子どもにとっては有意義な体験だったと信じています。何よりも小学生の子どもを置いて親だけ海外に行くわけにはいきません。

話がずれますが、私はリフレッシュ休暇をめいっぱい取得しました。休暇中は他の教員に授業などお願いすることになりますがそこは「お互い様」です。でも、同僚の中には1日か2日しかとらない人もいましたし、休暇中なのに部活に顔を出していた教員もいました。休むことに抵抗があるのか、仕事が好きなのかわかりませんが、休暇を取ることに消極的な教員がいることのも事実です。休まない教員が生徒に休みを奨励できるでしょうか。

ところで、今回の発表を聞いて私がさらに「あれっ?」と思ったことがあります。「保護者の休みに合わせて」「校外で取り組む活動をみずから企画して」という文言についてです。保護者が休みでないときには子どもは休めないということなのでしょうか。たとえば保護者が休暇中でなくても子どもだけで体験イベントなどに参加したりすることは対象にならないのでしょうか。家で休養したりすることも認められないのでしょうか。この制度は子どもにとっての「年休」だと言う人がいます。「年休」だとしたらどんな理由でもいいと思うのですが、そこはやはり「教育的意義」などという尤もらしい理由を求めたいのでしょうね。

さらに、休んだ分の補習を教師に担わせるということにも疑問を感じます。必要ないのではないでしょうか。そこでまた教師の負担が増えます。ばらばらに休む生徒の補習をどうやって行うのでしょう。休んだ分の学習をどう補うかは保護者が考えればよいと思います。

これまでだって学校を休ませることはできたのですから、新たな制度を作るのではなく子どもが自由に休める体制を整えることの方が大事だと思います。


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