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「保険のおばちゃん」のアメ玉作戦はすごい!

かつて学校の職員室には様々な業者が出入りしていました。今は受付(事務室)での確認が徹底されており、入校許可を取るのも難しくなっているようですが、以前は容易に出入りできていました。よく出入りしていたのは教材納入業者、保険の外交員、旅行業者、書店や出版社の営業担当、運動部関係の用具やユニフォームなどを扱うスポーツ用品店、制服を扱う衣料品店の業者などで、あちこちで教員と親し気に話す姿が見られました。

中でもよく目にしたのが保険の外交員です。複数の会社の外交員がいましたがほとんどが女性でした。いわゆる「保険のおばちゃん」と呼ばれる人たちです。みんなとても熱心でした。契約している教員の元を訪れて更新の手続きなどをするのですが、契約者以外にも親しく声をかけ多くの教員と顔なじみになっていました。仕事の邪魔にならないよう気を遣いながらさりげなく話しかけ、徐々に親しくなっていきます。巧みな話術で自分のペースに引き込み、いつしか保険の話に持ち込みます。そうして新たな契約を取る人も少なくありませんでした。

ちらしを配りながら全員にアメ玉を渡す女性がいました。自分の名前と似顔絵を描いたコピーをいっしょに配ります。コピーは手書きで、季節の話題や豆知識的なことも盛り込んであります。座席を回りながら笑顔で挨拶をしてアメ玉を配ります。空席のときは机の上にアメ玉とチラシと置いておきます。戻ってきた教員の中にはアメ玉を無意識に口に放り込む人もいました。誰が置いたかわからないアメ玉を何の抵抗もなく食べる。なんとのどかな時代だったのでしょう。

「保険のおばちゃん」にとってはアメ玉を配るというのが作戦のひとつです。教員は業者から金品を受け取ることは禁じられています。厳密にいえばアメ玉ひとつだって許されません。食べたら受け取ったことになります。個人の保険なの学校業務とは直接関係ありませんが、見方によっては疑念を招くこともあります。でも小さなアメ玉を問題にする人はまずいません。だからアメ玉の威力は絶大です。アメ玉で人間関係を構築する作戦はまさに「保険のおばちゃん」だから考えられるのでしょう。アメ玉恐るべしです。


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