神話で読み解くライトノベル100選 7 神が見守る少女と少年の恋

真波潜『真実の愛を見つけたから婚約破棄、ですか。構いませんが、本当にいいんですね?』宝島社、2021.

注:本作は2021年12月の発売と新しく、これから読まれる方も多いと思う。この記事にはネタバレが含まれているのでご注意いただきたい。

ラノベ百選のコラム、今回は簡単な作品紹介と、分析の見通しのみ書いておきたい。

まずは簡単なあらすじを。王太子のジュードは神より頑健の加護を授かっているが、その加護があまりに強力なため、「眠れない」という副作用がある。一方、伯爵令嬢のルーニアには安寧の加護が授けられており、周りの者を眠らせてしまう効用がある。互いに補い合う加護を授かっていることから、二人は幼いころから婚約関係にあった。

ところがある日、ジュードが下級貴族の娘に恋をしたので婚約破棄したい、と言い出す。

ルーニアは「構いませんが」と言いつつも、ほんとうはジュードを愛している。

そんな不器用な二人のすれ違いと、仲直りまでの成長物語だ。

本作の特徴は、物語の始まりと終わりが「神」の視点から語られることにある。神々の見守る中で、話が展開していくのだ。本作が「神話」の構造を持つとしたら、この部分に着目すべきであろう。

なお、ジュードが一時恋に落ちたと錯覚した下級貴族のミナは、その後自分の力で事業を起こして成功し、ヴィンセントという高位貴族と結婚して幸せをつかみ取る。

もしかすると、このミナの物語の方が、面白いかもしれない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?