神話で読み解くライトノベル100選 6 理論編2

神話で読み解くラノベ、今回も理論的なことを考えたい。テーマは「エロス」。ラノベには、読者層を考えると「これでよいのか」と思ってしまうほど、エロスの要素が大きいものがある。事細かに性交の様子を描き、その最中のイラストもついている。

ところでエロスといえばやはり神話だ。原初のエロスを描く話が神話には多く見られる。なぜなら、男女の性の交わりによって新たな生命が誕生することからの類推で、世界そのものも、原初の性交によって誕生したとする発想が働くからだ。

たとえば日本の神話で、原初の男神イザナキと女神イザナミは結婚するときに、互いの身体の違いを確認する。イザナキは「自分の身体には出来上がって余っているところがある」と言い、イザナミは「自分の身体には足りないところがある」と言うのだ。そしてその足りないところと余ったところを合わせて、子供である国土や神々を造ろうと誘い合う。イザナキとイザナミの名に共通している「イザ」とは誘い合う、という意味だ。

ギリシアでは、やはり原初のときに、大地の女神ガイアと天空の神ウラノスが交わりを持って、そこから神々などを生み出した。ところがウラノスが怪物の子供たちをガイアの腹の中に戻してしまったので、怒ったガイアは息子のクロノスにウラノスを去勢させる。鎌で切り取られたウラノスの男性性器は海に落ち、そこから美と愛の女神アプロディテが誕生した。ここでもやはり原初の性と、さらにその結果としての「性愛の女神」アプロディテの誕生が語られている。

インドでは最高神の一人シヴァの象徴が「リンガ」と呼ばれる男性性器だ。

インドにはまた、「乳海攪拌神話」という有名な神話がある。山を海に入れてかき混ぜて、世界の諸要素などを生み出したとする話だ。この場合、山が男性を、海が女性を表わしており、宇宙規模の性交によって世界が成立したと語るのだ。

神話だけでなく、民話や昔話などでも性の話はあからさまと言えるほどに出てくる。

ライトノベルのエロスのきわどい描写も、そういった神話・民話・昔話などの伝統につながるのかもしれない。

このテーマについては、今後また考察を加えたい。

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