神話で読み解くライトノベル100選 5 理論編1

神話で読み解くラノベ、今回は理論的なことを考えたいと思う。現代における神話、というテーマについてだ。

そもそも神話の役割とはさまざまで、一つには世界の成り立ちを語るということがある。他に重要な役割として、少年の成長のモデルを示すというものもある。たとえばギリシア神話の英雄ペルセウスの場合を考えてみよう。ペルセウスは塔に閉じ込められた人間の女ダナエから生まれた。父は大神ゼウスだ。生まれてすぐ、母と共に箱に入れられて流された。たどり着いた先で養育され、成長すると旅に出て、魔物(メドゥサ)を退治し、帰路で怪物の生贄となるところだった王女アンドロメダを救い彼女と結婚し、帰還する。

これを要素に分解すると以下のようになる。

1神的な生まれ

2密閉空間(子宮を暗示する)に入れられ流される

3冒険の旅に出る

4魔物退治

5妻の獲得

6帰還

このような一連の出来事が、英雄の成長過程として語られており、少年たちの生き方のモデルとなる。(魔物退治などは、もちろん実際には行われることがなく、心理的に行われる。)

しかしながら、神話は少女の成長モデルを語らない。これは古代の神話が多くの場合、男性によって管理されていたことと関係があるだろう。

現代に目を向けると、少女の成長のモデルを提示する物語は多く見られる。その一つが、ライトノベルという分野であると私は考えている。

古代の神話が少年の成長モデルを示したのであれば、少女の成長モデルを示す物語を「現代の神話」と呼んでも間違いではないだろう。

ライトノベルにはまた、「ユグドラシル」や「フェンリル」など、古代の神話に由来する語が用いられることが多い。これらは「古代の聖なる神話を想起させる」という意味において、やはり現代において神話としての役割を果たしているとみなすことが可能であると、現段階で考えている。これについても、今後考察を深めたい。


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