詩【汚れと洗い】
元はと言えば綺麗なものだった
それがいつからだろう
自分で汚れに行くようになった
世の理不尽さに触れるたび
わたしだけ綺麗なままではいられない諦めが
いつしか自分のなかに埋め込まれていった
そうしてしばらくはわたしは
欲望の赴くまま泥遊びをした
それはそれは
見事なまでの汚れっぷりであった
気づいたときはわたしはもう四十過ぎ
ショーウィンドウに映り込む自分の姿を見てハッとなった
オレはこのまま死ぬのか と
以来わたしは人が変わったように身体を洗いはじめた
具体的には困り人を助けたり弱ってる人に寄り添ったりする
そうしてようやくにしてわたしは
浄化を感じている
たいへん身勝手なものだが
人間というものはむかし汚した過ちの分だけこれから先の人間を洗って返すという習性があるようだ
逆になにも汚れた経験を持たない人間の洗いは大雑把となり信用に値しない
これが長年汚れて生きたわたしのもつ嗅覚である
わたしはまだこんな煤けた身で
終わりたくはない
これからはずっと死ぬまで
そういう欲に素直でありたい
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