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視てる?
たまに誰かと目線が合う。
それは日常の中で何度も。
公園で遊んでいる子供たち。
電車の優先席に座る老人。
レストランで会話をするカップル。
色んな視線を感じながら、今日も高校に着く。
教室の目の前に着き、扉を開ける。
音に反応し、クラスメイトが一斉に僕の方に振り向く。
その視線に一瞬、緊張した。
興味を無くしたのか、再び別の方向を向いた。
ゆっくりと深呼吸をして、席に座る。
高校に入学してから、誰とも会話をしなかった。
いや、出来なかった。
僕は誰かと話すのが苦手。それは幼い頃から。
いつも楽しそうにしてる人たちを、目線で追うだけ。
「まるでストーカーだな……」
思わず言葉を漏らした。
そんな僕も最近になって、気になることがある。
それは隣の席に座る彼女だった。
僕とは正反対。
才媛。そんな言葉がお似合いだった。
誰とでも話せて、コミュ力の高さにいつも驚かされる。
彼女の好きな所は目だった。
日本人とは思えない魅力的な目に、心を奪われた。
こんな近くでも、僕は話すことが出来なかった。
ただ指をくわえて、目で彼女を追うだけだった。
チャイムと同時に、数学担当の先生が入室した。
クラスメイトも会話を止め、席に座った。
先生は黒板に授業内容を書き始めた。
周りも真面目にノートに内容を書いていく。
僕の場合は、授業を聞くどころか隣の彼女を見ていた。
バレないように彼女の横顔を見ていた……はずだった。
突如、彼女が僕の方を向いてきた。
「ん⁉」
僕は前を向くと共に変な声を出してしまった。
体から汗が止まらなかった。
彼女に見られてしまった。気持ち悪いと思われてしまった。
授業中、僕は誰かと視線を合わすことなかった。
ただ、下を向くだけだった。
トンっ。
机の上に小さな紙きれが乗った。
それは隣の彼女からだった。
僕は紙を開けた。
「視てる?」
そんな言葉が書かれていた。
僕は彼女の方を向いた。
そこにはニヤリ、と笑顔な彼女がいた。
初めて正面から見た彼女の顔は、僕には刺激が強かった。
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