読書メモ『777』
ネタバレあります。自分用のまとめです。
好きな台詞
付箋を貼りながら読めば良かった。
「彼氏がいたほうが幸せ、とか、みんなでわいわいしようとか、一人じゃできないことばっかり。わたしは一人で家にこもってるだけでも楽しいんだけど、あっちはそれを、可哀想な生き方だと思ってる節がある」
めっちゃわかる。つい先日も友人に、可哀想って言われた。
「ああ、そうだね、ヨーロッパ」「絵の修行というか、留学でしたっけ」「そう、絵の修行というか、留学でね」
今思えば、七尾が依頼人の父親だと思っている相手は高良だから、内容を知らない話し方になっているのか。
「この間、うちのビジネスホテルで働いている先輩が、今まで恋人がいたことがないってことを、別の社員にからかわれていたんだけど」
「ありそう」
「何で馬鹿にされなきゃいけないの? わたしだって、ずっといないけど、別に悪いことをしたわけでもないし、ただ普通に生きてきただけだよ。なんで罪を犯したように言われなくちゃいけないんだろうね。今までアイスクリームを食べたことがない、みたいな目で見られるわけ」
「ちょっと俺の代わりに、行ってくれないかな」奏田がまた言ってくる。
七尾は首を左右に振った。
「あ、間違った」「何を間違えたんだ?」
「自己啓発の本に書いてあったんだ。他人の動かし方、という内容でね。やってくれ、と言うよりも、やるな、と言うほうが効果的らしいんだ」
「あと五人いる、とか言わないでほしい」
「あと五人いるんです」「勘弁してほしい」
「俺が数字の七だったら、荷が重くて耐えられないだろうね」
「観測している時だって、観測していない時だって、猫は可愛いに決まっているよ」
奏田の人柄がわかる。
「いや、君の大変さを分かるわけじゃないよ。誰かの大変さなんて、想像したくもないし。ただ、俺なんて忘れたいことばっかりだから。今までの失敗や不運をずっと覚えているなんて考えたら、ぞっとするよ」
「俺なんて、スロットマシンを回そうとしたらレバーが壊れる、そういう人生だよ」
「他人と比べた時点で、不幸は始まりますね」
「人気を得るために、家族を犠牲にしますか?」
「どうしてそれをやらないのか、逆に教えてほしいくらいです」
「のんきに眠っているとは」真莉亜の目は笑っていない。
結局仲介業者と殺し屋の間には、信頼関係が生まれるんだな
好きな場面
「どうだろうね。今となっては本人の口からも聞けないし」
真莉亜が黙った。その後でまた、溜め息が聞こえる。
「床をばんばん踏み鳴らして、情緒が不安定で」
これは伏線だったんだ。
「人の裏表なんて、本当に分からないんだよね」ココはさらに続けた。「たとえば、ある男が可愛い猫ちゃんの写真を撮っていたの。何度もシャッターを押して。そこだけ見れば、猫好きのいい人に見えるでしょ?」
「違うんですか?」
「近づいて話を聞いたら、目を輝かせて言うわけ。『フラッシュ焚いたら、目が潰れたりしないのかな』って」
これは乾のことを指しているが、ココの言いたい方向とは逆に受け取ることが出来る。実際このような悪い噂は乾がついた嘘だったわけで。
それとは逆で、蓬の件は良→悪になっており、印象の変化はどっちでもあり得る。
「もし無事に逃げることができたら」「うん」
「友達が欲しいです」
乾がそうなったのかな。
「頼んだチーズケーキに、間違って七味がかかっていても驚かない程度には」
「チーズケーキに七味は意外に合うんですよ」紙野結花は思わず言っていた。
七尾がきょとんとした。
「柚子胡椒とかも合います」
お菓子の専門学校に行っていたからこそ、出る言葉。そうやって自信満々に、前に書いた情報をもう一度書かない所に自信が見える。自分だったら絶対書いてしまう。
「中を開けないで」男は言うが早いか身体を震わせ、痙攣状態となり、その場に倒れた。
アスカは安堵の息を吐きつつ、「やめろと言われるとね」とお守りの紐を緩め、中を開く。
206pから始まる、七尾とナラとのエレベーター内での戦い。密室、というのは「マリアビートル」の七尾と檸檬との戦いを思わせる、コンパクトな戦い。
「だけどまあ、乾は友達いないでしょ」とも続けた。
「え」
「マクラにはモウフがいる。だけど乾は信用できる家族とか友達とかいないんじゃないのかな」
結局信頼する紙野やモウフらは居た。父親のこともずっと思って、復讐のタイミングを狙っていた。
一回目は、「そうだな、真莉亜」となったが、二回目以降は「違うんだな、真莉亜」となる。
「忘れるなんて、どうやって? そう言ったじゃないか」
「ああ」
「忘れられるわけがない。父親は、俺が幸せになれるか、ずっと心配してくれていたんだ」乾は手を広げた。
乾は父のことを覚えている、それも辛い過去と一緒に。それでも勇気を持てたのは、紙野の言葉があったから。彼女自身も辛い過去を忘れられない。そこから出た嘆きの言葉が、誰かの希望になっていたとは。カタルシス。
天道虫はすぐに見つかった。宴会場に入ってすぐのところに、うつ伏せで倒れていたからだ。
真莉亜が駆け寄った。手慣れた動きで、首のあたりに触れる。おそらく脈を確認したのだろう、表情には出なかったが、彼女の背中から安堵の息がふわっと出るのがわかった。
ココの前のグラスにはソーダ水が、七尾のほうにはコーラが入っていた。
檸檬と蜜柑のような弔い
「紙野ちゃん、絶対に忘れないだろうね」ココが七尾のほうは見ず、独り言のように洩らしたのは、少し経ってからだ。
「え、何を?」
「恩を」
「まあ」「でしょ」
「まあ、そうか。忘れたくてもね」
忘れられない体質が、少しだけ良い方向に働いた瞬間。
その他の感想
最後のチーズケーキは予想が付いた。案外、真莉亜が七尾思いなところが面白い。
六人がうまい具合に殺されて、退場してゆく。人数調整と物語の進み具合が上手くマッチしてて、きれい。
みんな何かしら協力して動いている。ソロの者がいない。ココくらいか?
一応息子のことを思っているのか。
読み返してるけど、乾もズル賢いな
初めのモウフとマクラのタッグで、この二人はこういったことをしますよ、っていう読者への案内が行われている。
蓬は、乾の父親が紙野を殺した方が結果オーライだったのに、止めてしまったせいでこうなってたのかも知れないね。
殺し屋たちが奮闘してる中、蓬パートだけが静かだな、と思っていたら、全然そんなことは無かった。
果たしてトリプルセブンとは何なんのか。
「人生で一度くらい、ジャックポットを出したいです」
ジャックポットという題名にしなかったのは、恐らく七尾の存在を示唆するためでは?
紙野にとってこの経験、乾との共闘(?)、七尾への感謝は嫌な記憶の中の良い記憶になるんだろうか。
結局紙野はそのままいけば安全になるところを、自分から危険な身に突っ込んでいったのか。
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