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ショートショート: 宙とぶ棒アイドル

幾万もの星がはりつく宇宙空間に、体がふわりと浮かぶ。ハッチを開けエアロックに戻ると、ナツキは宇宙服を脱着した。

船外活動は成功だ。「グッドジョブナツキ!」。仲間にハイタッチで迎えられ国際宇宙ステーションの寝室に入ると、ナツキはケースからマッチ棒のようなものを丁寧に取り出す。表面に少女の姿が浮かび上がった。

「じゃジャジャジャーン!おつかれマンボ、ゆきりんだよ」
緊張がほどけ、ふっと笑顔になる。

宇宙船という閉鎖空間で過ごす飛行士は鍛錬した強者ぞろい。だが、緊張と高揚感の連続は心身のバランスを崩しうる。心を安定させるにはどうすれば?
一般の宇宙旅行や火星移住も始まるなか、軽量・低コストの癒しとして実験的に導入されたのが、この棒アイドルだった。

「♪ハッピーミラクルチャンスを逃さないで〜」

ふわふわ浮かびながら歌うゆきりんの声を聴きながら、ナツキは目を閉じ、眠った。

20XX年、アイドルは持ち運べる時代になった。


※たらはかにさんの企画に参加します

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