【エッセイ】「思う存分、幸せになれ」vol.7 「匂い」
深夜1時。部屋の電気をすべて消し、窓を開ける。籠っていた熱を出すように空気を入れ換えるこの時間がとても好きだ。月明かりがほんのりと窓際を照らして、やわらかい気持ちになる。
初夏の夜は気持ちがいい。風は爽やかで、どことなく明るくて、夜の怖さが襲ってないから。どの季節の夜にも良さはあるけれど、春の夜は夢のように儚いし、夏の夜は異様な暑さで流れた汗がすぐ冷たくなってしまうから苦しい。秋の夜は何故か寂しく、冬の夜はどこまでも寒くて切ない。だからやっぱり初夏の夜が一番好きだといつも思