見出し画像

 酔えど、酔えど、下戸なもんで苦しくなる。それで

も飲まずにはやっていけねい。物価高や老後の問題

、職探しやらねばならぬことが沢山ある。今飲んで

る酒は、ノンアルコールのビールである。これで酔

えてしまうんだ。きっと想像力の天才なんだろう。

なんてことねぇ、明日も未来の想像なんかできね

ぇもの。昨日の記憶がシミシミ蘇る。ありゃ会社の

親玉と休憩時間話していたときだ。親玉が(冬の桜

ですよ。ヤバイすよね。もう花見の場所取りの場所

決めたほうがいいんじゃナイスか。)なんてふざけ

たことをいう。ワシのほうが年上なのに。こに若社

長。つい先月、先代からすぐに変わったやつだ。

ろくな経験もないまま、親玉になった。毎年の花見

の準備をしていたのはワシだが、先代にもこんな

ひどい言い方はされたことはない。そんなときに、

倒れてしまった。あとから考えるに、この奇妙な状

況に慣れず酔ってしまったそうだ。

 親玉に休職を勧められたが、奇妙な状況が続きそう

なので、思い切って辞めることにした。そんな思い

を引きずったままでいる。また酔いつぶれそうだ。

天井の染みを数えてみる。前まで気持ちの悪いもよ

うだと思っていたが、何故か落ち着く。すこし外に

でて、ビールを買ってみた。ノンアルコールではな

いものだ。家に帰り天井の染みを数えながらビール

を飲む、ノンアルコールと違い独特の香りと苦みが

あった。一缶飲んでも酔った気にならなかった。

ノンアルコールでは酔うのに、アルコールでは酔わ

なかった。こうして、ワシは酒が飲めるようになっ

た。窓の外をみると夜が訪れた。ワシは静かに眠り

つく。新しい世を待ちわびて。




これは異世界の私の話し。


#ほろ酔い文学

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?