ボサノヴァの美しさと哀しさ―Jackie and Roy 『コルコヴァード』を聴いてー

 先日NHKFMのラジオ番組「ジャズ・トゥナイト」でJackie and Royの『コルコヴァード』が流れた。美しい演奏だった。ジャッキーとロイの息のあった歌唱、ボサノヴァの心地いいリズム、ロイの心のこもったピアノ、素敵だった。

 『コルコヴァード』はアントニオ・カルロス・ジョビンの作曲であり、彼はボサノヴァの創始者の一人と言われている。「ジャズ・トゥナイト」で、MCの大友良英さんはこの曲に感動され、「戦争の反対にあるのは平和じゃなくて、ボサノヴァじゃないかと思いながら聴いていた」とおっしゃっていた。私はその言葉を聴いて、村上春樹さんがラジオ番組「村上Radio」でおっしゃっていたことを思い出した。


以下、少し長いが引用する。


さて、今日の最後の言葉は、この曲の作曲者、アントニオ・カルロス・ジョビンさんの言葉です。


「僕ら、ブラジル人のつくる音楽はどうして美しいのだろう? その理由はひとつ、幸福よりは哀しみの方が美しいものだからだ」


ジョビンさんがそう言うのは、彼の育ったブラジルという国が、政治的に決して幸福とは言えない道を歩んできたからです。1960年代半ば、ブラジルのアーティストたちは時の軍事政権から言論弾圧を受けて、彼も半ば亡命のような形で長いあいだ祖国を離れなくてはなりませんでした。ソフトで洗練された彼の音楽の中にも、耳を澄ませば、哀しみや郷愁の響きが色濃く聴き取れます。ボサノヴァって、ただのお気楽なカフェ音楽じゃありません。

音楽家やスポーツ選手は政治なんかに首を突っ込まずに、自分の仕事をしっかりしていればいいんだ、という主張をときどき耳にしますが、自分の仕事が万全にできる環境をこしらえるために、またそれを護るために、仕事以外の場所で声を上げなくてはならない場合だってあるはずです。


村上RADIO 「ジャズ大吟醸」 ホームページ https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/index_20201025.html 

2024/06/11 閲覧




 村上さんによるとボサノヴァはただのお気楽カフェ音楽ではないということである。この『コルコヴァード』という曲は1962年に書かれているので、軍事政権による弾圧とは時期が被らないかもしれない。この辺はもう少し調べてみたい。しかし私はこの『コルコヴァード』という曲に哀しさを、哀愁を感じた。


もしよかったら、一度聴いてみてください。


Youtube 

https://youtu.be/RMQ6V8qcSRQ?si=PUi-K9XmVa0_fR-B


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?