気分は非嫡出子

実の父自身が非嫡出子であった。
昔のことでもあり、苦労も随分したのだろうと思う。

だからだろう。母が身籠ったとき、慌てて籍を入れて、私が生まれた途端に離婚した。
そんな訳でめでたく(?)私は戸籍上でのみ嫡出子となった。

父は再婚し、後妻さんと長年店を営んでいた。
後妻さんとの間には子供がいなかったので、ほとんどのお客さんは、父には子供がいないと思っていた。まるで自分が隠し子みたいな気がした経験はたくさんある。

父の葬儀の時には当然、後妻さんが喪主をした。
私は末席にいることにした。
通夜の親族席には、父が亡くなって初めて会った父の兄弟以外は、後妻さんの親戚が占めていた。

問題はその後だった。
後妻さんは、私に葬儀場の夕飯を食べることを禁じた。参列者がオードブルを囲むテーブルも空いていた席はなく、やっと座れたときには、パセリやレタスしか残っていなかった。
後妻さんの親戚が夕食を食べるとき、「あの人だ〜れ〜?」と私のことを後妻さんに訊いていた。鈍感な私も、その時には胸が痛かった。

翌日の本葬でも、最初は末席にいたのだが、実質的に葬儀の世話をしてくださった父の友人の方に、肩を掴まれ、「君はここにいるんだ」と棺のそばに連れて来られた。
そのままの流れで、私は位牌を持たされ、霊柩車に乗せられた。

斎場で車を降りると、後妻さんは「なんでアンタが霊柩車に乗ったの?」と詰め寄ってきた。父の兄が「○○さんが乗せた」と言うと、後妻さんは父の友人に詰め寄った。斎場の係の人が「喪主様?喪主様?」と呼びかけても反応せず、斎場は地獄絵図になった。

ここまで継子扱いされないといけないのかな、とは思うが、父の友人だった方には非常に申し訳なく思っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?