天の配剤

自分自身が手術のために入院していた時だった。

手術の日の朝、まだ暗い早朝に目が醒めてしまった。「何時だろう?」とケータイを見ると、真夜中に知らない番号から何回も着信があった。その番号を検索してみると、救急部もある大病院だった。

そこに電話をしてみると、「あなたのお母さん、救急車に乗って来られましたけど、自力でお帰りになりましたよ」と言われたので、少しホッとした。

その時は早朝過ぎたので、常識的な時間になるのを待って、伯母宅へ電話した。すると伯父が出て、「うちのお母さん、あんたのお母さんのことで警察に呼ばれて出てったよ」と。私も訳がわからないが、伯父も訳が分からず、伯母はケータイを持たない人なので、帰宅するのを待って再度電話するしかない。

手術前に電話すると、伯母は帰宅していた。
母は急におかしくなったらしく、自分で救急車呼んで病院から帰された後、夜中にぐるぐる近所を歩き回って、不審者として警察に通報されたのだったそうだ。

伯母は、「あんた、心配しないで手術受けなさい」と言ってくれた。毒親には手術のことは言ってなかったが、伯母には言ってあったのだ。

手術は無事終わり、ベッドから離れられるようになると伯母に電話した。私が動けない間に母を精神病院に連れて行ったり、地域包括支援センターの人に会ったりしてくれた。何もかもやってくれた伯母には頭が上がらない。しかし、母に虐待されていた私が母の介護をせずに済んだのは、天の配剤としか想えない。


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