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『ワイルド7』 −あきらめないバイク乗り−

『ワイルド7』は、1969から「週間少年キング」に連載された、故望月三起也のアクション漫画です。
 凶悪犯7名を選抜して警察官(しかも警視正クラス)にして、裁判手続きなしで犯人を処刑(殺す)する権限を持たせ、超凶悪犯に立ち向かわせようという、当時としては斬新な設定でした。
 映画『ダーティー・ハリー』が1971年製作ですから(しかもハリーはやり過ぎなだけで身分は普通の刑事です。)、『ワイルド7』の先駆性を伺い知ることができます。
 また、『ワイルド7』では、主人公らが乗るバイクも、物語内で使用される銃器類も銘柄が分かるように描かれており、そっちの情報があまりなかった当時の少年達に大人気でした。
 ただ、アクション重視の描き方のためかちょっと過剰な描画がありました。例えば、ワイルド7のリーダーである飛葉の愛銃はコルトウッズマンですが、この拳銃は22口径ですから0.22×1インチ(2.5センチ)=(弾丸の直径)約0.55センチとなり、ダーティー・ハリーの使うスミス&ウェッソンのM29は44口径(直径約1.1センチ)と比較するとかなり威力が劣ります。しかし、飛葉がクルマで逃げる悪党を銃撃した際に、コルトウッズマンに撃たれ被弾した人間が自動車の後部座席からもんどり打って前部座席まで吹き飛ぶように描写されたりしました。
 しかし、銃器の説明や描写はおおむね正確で、少年らは同好の友人らとやれコルトパイソンの弾丸は超音速だから衝撃波が起きるだの、当時の狙撃の公式世界記録はまだ2キロ未満だのと語り合いました。
 そういう悪党を片っ端から退治していくワイルド7ですが、たまに潜入捜査が露見したり、罠に嵌められたりして敵の手に落ちることがあります。そうなると、凄まじい拷問に合うわけですが、彼らは決して生き残ることをあきらめません。隙を見て反撃し生き残ろうとします。
 また、ワイルド7の仲間意識も高く、メンバーの一人が襲われ自動車の中からでられなくなったとき「おれっちは、大丈夫だ。早く悪党どもを片付けてくれ。」というシーンがあります。
 しかし、その「おれっち」は、悪党の攻撃で足が変な方向を向いて折れていました。見方が自分の救助に来たら戦闘員の数が減り、結局は皆殺しになってしまうと考えたとは思いますが、同時に仲間を助けるために自分のことは二の次三の次にすべきだという強い理性も感じさせます。

 この漫画の連載開始当時、青少年の自殺が多くて社会問題視されていました。「厳しい受験戦争がその原因だ。」とか「高度経済成長の歪みだ。」とか教育評論家と称する人たちがモーニングショーなどでしきりに自説を述べていましたが、事態は一向に好転しない。そんな時代でした。
 しかし、ワイルド7のメンバー間の連帯と、生き残ろうという執念は、そんな傾向に少なからず歯止めをかけたのではないかと思います。少なくても私は、ワイルド7の生き残ろうとする姿勢に強く共感したので、危険な曲がり角を曲がらずに来ることができました。

 残酷描写のアクション漫画でしたが、私は『ワイルド7』が大好きです。

以上

#マンガ感想文 #ワイルド7 #Wild7

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