愛と情のはざまで
元々誰が言ったのか知らないが、ずいぶん前に職場の先輩が言っていた。
「愛情の中には、愛と情の2つがある。愛が無くなって情だけで付き合ってても、お互いにつらいだけだ。」と。
恋愛ならそれでも良いと思う。
愛がなくなってしまったら別れることが出来る。
でも結婚したらどうなんだろう。
どうしたらいいんだろう?
もし愛する気持ちが無くなってしまったら。
再構築できないくらいに愛する気持ちが冷めてしまったら
どうしたらいいんだろう。お願いだから誰か教えて欲しい。
離婚すればいい、なんて簡単にはいかない。
相方に言い出すのもつらい。
私の気持ちを聞いたらどんなに悲しむんだろう。私の口からまさかそんな言葉が出るなんて夢想だにしないと思う。どんなに狼狽し泣き崩れるだろうか。
そう思うと私は地面に吸い込まれそうな脱力感や胸の苦しさと切なさに襲われる。
今から自由になりたい。全てを捨てて自由に生きたい。
でも、愛がなくなったと言っても大切なきみが泣き崩れるところなんて見たく無い。
だから私は役者になりきり平静を装って毎日をきみと過ごす。
こんな最低な私は、早く自分が死ねばいいのに、地獄に堕ちればいいのに…と思う。
二人だけならまだしも彼女の両親がいる。
義理の兄がいる。親戚もいる。
私の両親がいる。
彼ら彼女らが混乱し、悲嘆し、やがて怒りすら覚えることは目に見えているし、彼ら彼女らの平穏になるはずだった老後が耐え難いものになることは容易に察しが付く。
愛がなくなると、触れたい気持ちがなくなる。
時に…いやいつも拒んでしまう。
手も繋がないし、キスもしたくない。もうずっと肌を重ね合っていない。
些細なことでイライラしてしまう。失望してしまう。冷めた目で見てしまう。
ごめんね、優しくしてあげられなくて。
本当に今の私はただ情だけで一緒に暮らしている。
愛が冷めてしまっても一緒に過ごすことがこんなに苦しくて辛いなんて、思いもしなかったし、こんな感情が世の中に存在することなんて想像できなかった。
一生愛することは難しくないんだ、相手のことをちゃんと見ていればできるんだ、なんて思ってた。でもそんな簡単なものじゃなかった。
こんな私は早く地獄に堕ちれば良いのに…と、切に願いながら今日も生きている。
短い人生を無駄に消費しているに過ぎない。
なのに、
死ぬほど胸が苦しくなるぐらいひとを愛したい。
身が焦がれるような切ない恋がしたい。
愛おしく想う人とただただ肌を重ね合わせていたいと願う。
やはり私は地獄に堕ちれば良いんだ。