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ジャパニーズ ナイト 1

 動画投稿者である男は、アイデア探しのため和歌山県にある新宮に来ていた。どこを見ても遠くに山か海があるこの地は、男にとって新鮮だった。王子が浜、頼朝が寄進したという階段がある神倉神社、熊野三山の一つである速玉大社と巡り丹鶴城跡にきた。石段を何段も上がると新宮の町が見渡せ、高らかに笑う鳶の声が辺りに響く。男はあまりの光景に一時首にかけたカメラを忘れていた。目の前にある石碑には「丹鶴姫之碑」と書かれていた。ここだ。男は思い、カメラを回す。
「こんにちは。本日は新宮の丹鶴城跡にきております。見てください。石碑です。丹鶴姫という人は、頼朝の祖父の源為義の娘なんです。丹鶴姫はこの地でーー」
 ひとしきり誰が見るのだろうというほどの専門的な話を喋った後、手向けられていた花を食べ始めた。男は「インテリ迷惑系」として有名なのである。
 その瞬間、男の右腕が何者かに切り落とされた。激しい痛みが押し寄せる。黒いうさぎだ。男のインテリの部分がそう思う。丹鶴姫はもののけ姫としてもその名が知られているというのを、読んだことがあった。しかし迷惑系の部分は、何もなかったかのように、むしゃむしゃ花を食べ続けるのである。振り向くと女性がいた。丹鶴姫である。
「夜になったらもう一度きてください」
消えてしまった。その一言だけである。さすがにインテリ迷惑系の男も食べるのを止め、悪寒が走った。命を奪うに決まっている。
さて、夜になり城跡にもどった。やはり丹鶴姫はいた。男は覚悟を決めた。
「姫様、こんな話はご存じでしょうか」
物語を話すのである。これから毎夜、命尽きるまで。

古墳に眠っていたある豪族の復活と通天閣の話

 大阪である豪族が現代に目覚めた。たまたま通りかかった老婆に町を案内され喜びや悲しみや色々な感情で胸がいっぱいになったその豪族は最後に通天閣にいきこう叫んだ
「ああ、ドングリの帽子の神様!」
老婆が不思議そうに見ていたので、「豪族とドングリの帽子の神との希望の話」を話し終えると、また古墳にもどりそこから出ることはなかった。

豪族とドングリの帽子の神様の話

その時代日本には今よりも様々な神が住んでいた。その豪族はドングリの帽子の神様と特に親しくなり、毎晩酒を交わしたのだ。ある日、その神様は語った。
「今後、この地には多くの資源、思想、神・・実に多くのものがもたらされ混沌と化すだろう。しかしほんとうのことをしてさえいれば私はそれでいい。そこでそなたに力を与えるから、そなただけでも未来を見てきてくれないか」
それを了解し、永い眠りに入ったのであった。






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