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はじめに #1

16世紀英国教会説教集 Certaine Sermons and Homilies とはどのようなものか、簡単に紹介します。

参考文献:
八代崇「イングランド宗教改革史研究」聖公会出版1993年
塚田理編「イギリスの宗教」同1980年
八代崇他「宗教改革著作集11イングランド宗教改革Ⅰ」教文館1979年

この説教集については、英国教会の教理的立場を明らかにするべく定められた「39箇条(The Thirty-Nile Articles、聖公会大綱)」の第35条で「私達は、これらの説教が会衆によって理解されるように、教会の中で聖職によって熱心に、また明瞭に読まれるべきであると考える」と書かれています。いわゆるプロテスタントとカトリックに揺れ動いた時代で、説教者の質に不安があったために定められた「説教の台本」と言ってもいいもので、かなり広く当時の英国教会の説教で読み上げられ、当時の思潮の底流の一つをなしていたであろうと考えられるものです。

この説教集の目次は次のとおりです。(  )内の数字は、A4(1ページ30行、1行あたり39文字、フルに書けば1170文字≒原稿用紙3枚分)でいまのところ何ページの翻訳原稿になっているか(校正し注釈を充実させることで今後変わるでしょう)をお示しするものです。なお、各章のタイトルは私自身の訳でのものです。

第一説教集
序文(2)
1 聖書を読んでよく知ることの勧め(11)
2 人間の悲惨について(9)
3 救いについて(13)
4 信仰について(13)
5 善き行いについて(16)
6 愛について(7)
7 誓いについて(10)
8 神から離れることについて(10)
9 死を恐れることについて(15)
10 服従について(13)
11 姦淫について(17)
12 争いについて(15)

(「第一説教集」目次)

第二説教集
説教者たちへの序文(1)
1 教会堂を正しく使用することについて(15)
2 偶像礼拝の危険について(105!
3 教会堂を修理し清潔に保つことについて(6)
4 善き行いについて、第一に断食について(19)
5 暴飲と暴食について(13)
6 過度に美しく着飾ることについて(12)
7 祈りについて(26)
8 祈りの場所と時間について(12)
9 公祷と聖奠について(14)
10 聖書の言葉に反論を述べることについて(16)
11 信施について(18)
12 キリストの降誕について(13)
13 キリストの受難について(21)
14 キリストの復活について(12)
15 血と肉の聖奠を恭しく受けることについて(13)
16 聖霊から賜わるものについて(15)
17 祈願節週間のために(30)
18 結婚の義務について(14)
19 怠惰に対して(9)
20 悔い改めと神との真の和解について(26)
21 不服従と反乱について(51)

(「第二説教集」目次)

この説教集の邦訳については、一部については出されているものの、全訳はまだ出版されていません。上に示したページ数を合計すると612ページ。400字詰め原稿用紙にして1800枚弱。けっこうな分量です。しかし16世紀イギリス文学、イギリス史、そしてキリスト教史の研究には不可欠の書物であると考え、全訳出版を目指しています。いったんの全訳を終えましたが(高校教諭職のかたわら本格的に取り組み始めてから2年半かかりました)、まだまだ校正を重ねる必要はありますし、注釈を充実させもしないといけません。ここでは章ごとに内容をまとめつつ紹介していきたいと思います。16世紀英国の信仰世界を垣間見てもらえたら嬉しいです。



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