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ゆる反戦『自動巻時計の一日』田中小実昌

進駐軍の医学研究所に勤めるおじさん「おれ」のなんでもない一日。

このおじさんがゆるくていいんだなぁ~。

勤務時間中に仕事をしていると、損をしている気分になる。
なので、弁当は昼休みではなく、10時半ごろに隠れて食べる。

仕事とは別にアメリカの小説の翻訳をしていて、それが小説内小説のように入る。ちなみにこれも、勤務時間中に隠れてやったりもしていて、小遣い稼ぎになっている。
最初は趣味でやっていたが収入となると仕事なので、そろそろうんざりしてきている。

パワフルなカカアがいて、やたら「おれ」を叱りつけて(叱って当然の内容)険悪な雰囲気になっている。
ぼやいて曰く、
「愛というのは、敵をも愛するというところにある。カカアのことは顔を見るのも嫌だけれど、一緒に暮らしている。これはつまり結婚当初より愛がある状態だけれども、あいつは分かっているんだろうか」
うーん。夫婦って深いな……。

「なまけ者ばっかりだったら、戦争もおこらない。戦争って、しんどいもんだからさ。とうてい、なまけ者には戦争はできない。戦争に負け、こんな、あわれなことになったのも、みんな、日本人が勤勉すぎたせいだ。ねえ、きみ、こりゃ、どうしても、革命が必要だよ。なまけもの革命さ。人類の永遠の平和をねがうならば、みんな、すべからく、なまけ者になるべきだ」

田中小実昌『自動巻時計の一日』10

おぉ、……
反戦だ。
なんか、素晴らしい。
言葉が、ゆるい。誰かと戦ってない。
革命なのに。
すごい……。

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