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世の中は、できるやつがぜんぶやることになってんだから、考えたってしかたないよ『黄色い家』川上未映子

こんなセリフを受けてしまう、花ちゃん。
責任感強くて頑張り屋さん。
つまり、損するタイプ。
私もこっちタイプなので、彼女寄りで読んだ。

母子家庭、貧困家庭で育った花ちゃん。
平気で帰ってこなかったりするお母さんにロクに守られず育った。

真面目で頑張り屋で、お母さんや黄美子さんを守ろうという気持ちもあって、すごくいい子。でも中卒だったり親がしっかりしていないせいで銀行口座も持てず、居場所になるようなお店を作りたいのにテナント借りることもできず。
偽造カードでお金を下ろす仕事を始める。

それしか知らないから、母を憎んでもいない。反抗期もないし、子供でいることができなかった人生なんだな、と思う。
桃子や蘭は花よりは恵まれていたから、犯罪臭がすると思って一歩引いて見ていて、花にはそれが怠けていると映った。

私たちは大人に騙されたんだよ。

一生懸命だった花は、蘭の言葉に本当は納得していない。
私には、優しい気持ちにつけこまれていた、と映った。
でも、大人も含めて悪者っぽい人がいないのもね……。

花はお金お金と言うけれど、それは微妙に違っている気がした。たまに焼き肉を食べるくらいで、あとはマクドナルドで喋っていることに幸せを感じているし……。
彼女にとって「れもん」「黄色い家」は家庭で、それを守る/続けることがしたかった、それが一番だった。
特に(たぶん軽度の知的障害の)黄美子さん。
それは、いけないことだったんだろうか。家庭を持つ男性と同じ感覚だと思うけど。

この小説の中には他にもお金に関する発言があって、お金ってなんなんだろうねとすごく考えた。
花のような信用のおける人に対して、社会は、中卒だから「信用」という資格を与えない。
だから、彼女にはお金しかない。人より余分にないと不安だ。信用とか絆とかがお金に置き換わってしまう。
お札は目に見えるけれど、お金は目に見えない。花はそう思う。



川上未映子の生き生きした会話文が今回も冴えてた!
特に桃子が自分大好き母を批判するセリフがスカッとする。

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