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会話は難しいよ……「会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション」三木那由他

コミュニケーションって、単純な情報伝達以外はすごく高度な作業だと私は思ってる。
なかでも、本書のなかで「マニピュレーション」と呼ばれている「相手を操作しよう、影響を与えよう」という意図の部分。

三木さんは会話を「コミュニケーション要素」と「マニピュレーション要素」に分けて分析している。
そのときに漫画、小説などでのやりとりを例に挙げてゆく。

いちばん「それそれ!」と思ったのが『鋼の錬金術師』の例。
私は完結してから兄弟に完全版を借りて読んだんだけど、会話が何を指しているかチンプンカンプンな部分がだいぶあった。
2,3回繰り返し読んで
「あー、これはこのことを指してたのか。大佐、肝が据わってるなぁ」
という感じで、本当の意味が分かると感想がだいぶ違ってくる作品だった。
そういうのを分析してくれていて、面白い。

マニピュレーションの例で、LGBT差別派の「みんながみんなゲイになったらどうなると思う?」という問いかけの話が出ていた。
「やっぱLGBTには少し遠慮してもらわないと」という考えに誘導(マニピュレーション)するための質問だという。こんなの「ばーか」って返しとけばいい気もするけど。

現実にはもっと巧妙なのがたくさんある。
ただ、マイナスなことだけじゃなくて、相手に逃げる余地を与えるためのものとか、「本当は心配してます」を伝えるものとか、プラスなものも多い。
好きでしかたがないです、というか私のことを好きになって、っていうマニピュレーションがにじみ出てる会話って、かわいい。

瞬時に技巧を凝らすことのできる人はテクニカルに会話すればよさそうだけど、そういうの苦手な私はともかく相手にプラスイメージで臨むにつきる。うん、私の場合はそれだな。

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