テーマ「旅」

◯家(夜)
    荷物の着替えをケースの中に入れている羽田巧(16)。
巧「よし」
    ××××
    勉強を済ませ、頭を激しく掻く。
    ガイドブックが落ちる。
    拾う巧。
    神社の画像が目に入る。
巧「弥彦、神社」

◯駅・改札口(朝)
   駅を出る巧、スマホを取り出しマップを開く。
巧「や・ひ・こ・じ・ん・じゃ(小声)」
   と呟きながら入力するたくみ。
   駅から数分かかることがわかる、最寄りのバスも見つける。
   スマホをしまい、バス停に向かう。
◯バス
   窓ガラスに寄りかかりながら外を見つめる巧。

   同じバス内にいるともみ(17)。
   スマホをいじっている。
◯バス停・道
   発車していくバス。
   スマホを確認し、歩き出す巧。
   ××××
   たどり着く巧、弥彦神社と書かれた石。
    一息つく。

◯神社
   神社の中を彷徨く巧、お守りを買ったりしている。

◯お賽銭
   お賽銭にお金を投げ入れ、 お辞儀をし、2回拍手する。
   目を閉じ、合掌。
巧「・・・」
   お祈りを終え離れようとする巧。
ともみ「あれ?」
   友美の声を聞き、振り向く。
ともみ「やっぱ羽田だ!」
巧「先輩」
   ××××
   二人並びに歩く巧とともみ。
ともみ「へえ、一人旅ね」
巧「まあ、旅というよりここにきたかっただけなんですが」
ともみ「なんか意外だなって思って。君勉強してる姿しか見たことなかったし。
 楽器の練習も」
  苦笑いする巧。
巧「一点集中しちゃうと、つい」
ともみ「で、何お祈りしたの?」
巧「えーっと。って教えませんよ」
ともみ「もしかしてこれ?」
  小指を立てるともみ。
巧「違いますよ」
  笑うともみ。
   ともみのスマホからLINEの通知音。
   取り出す。
ともみ「・・・」
巧「どうしたんです?」
ともみ「あっ、まあ」
  メール画面「うるさい」と書かれた返信。

◯ベンチ
   座っている巧とともみ。
    LINEにメールするともみ、返信も既読にもならなくなる。
ともみ「やっぱダメか」
   水のペットボトルを持ってくる巧。
巧「はい」
ともみ「えっ?」
巧「疲れますよね。あらだけ歩くと」
  受け取るともみ。
ともみ「ありがとう」
   隣に座る巧、水を飲む。
   メモを取る巧。
ともみ「えっ?」
巧「なんですか?」
ともみ「すごいいっぱい書いてあるなって」
巧「ですね。つい集中しすぎるとこうなっちゃうんですよね。勉強も」
ともみ「・・・すごいね。腱鞘炎になりそう」
  微笑む巧。
巧「そういえば、今日は一人なんですか?」
ともみ「まあね。多分、みんな勘づいているかもだけど、今引きこもりなんだよね。所謂、病み期ってやつ」
  水を飲むともみ。
ともみ「本当は一緒にくる予定だったんだけどね。もちろん、行くのやめるかも考えたけど、それだと戻ってくるかもわからないし、だから逆に、一人できて、写真送りまくってる。そうすれば「私も行きたかった」つって出てくるかなって思ってね。今悪戦苦闘中」
   再び水を飲むともみ。
ともみ「あー!」
巧「それで、戻ってくるようにお祈りでもしたんですか?」
ともみ「なんでわかったの?」
巧「いや、わかりやすいっすね」
ともみ「・・・そう」
  笑うともみ、巧。
ともみ「それだけじゃないんだけどね。他にもいろいろあるよ。言わないけど」
巧「まあまあ」
ともみ「興味ないみたいな顔しないでよ。でっ、あんたは?何でここに」
巧「・・・・」
  水を飲む巧。
巧「親に、おすすめされたんです。この間のテストの成績があまり良くなくて。
 あんなに勉強して、今までクラス一位だったの に。多分、先生に相談した時、成績は褒めてくれたけど、目標はって聞かれたのが原因だと思うんです。あの言葉がどうも引っかかっちゃって」
ともみ「そうか。痛いところつかれたのか。先生も先生だな」
巧「いや、悪気はないと思いますよ。むしろ心配してくれたんだと。
 父が言うには、何か行き詰まった時は、

 視野を広げるために、どっか出掛けることをおすすめされました」
ともみ「何か変わった」
巧「まだですね」
ともみ「だよね。なんかさ、やっぱ人って困った時、どうしても神様に頼っちゃうのかもねって思った」
巧「結局は、自分の力かもしれませんが」
ともみ「そうかな?私はもらった気がするよ。神様に」
  立ち上がるともみ。
ともみ「元気パワー!!・・・みたいなやつ」
  笑うともみ。
ともみ「お土産にお守りでも買って帰ろうかな。あいつまた海眺めてそうだから。
 海に似合いそうなの買って、元気分けなきゃな」
巧「そうですか」
ともみ「じゃあ、そろそろ行くね。ありがとう。じゃあまた」
巧「はい。また・・・」
   手を振り、去っていく友美。
巧「パワーか」
   ×××××
   一人で歩く巧。
   広い光景を眺める。
巧「すっ、げえ」
  しばらく見つめる。

◯家(夕)
巧「ただいま」
   玄関にくる巧。
父親「おかえり。早かったな」
巧「うん」
   上がる巧。
父親「どうだった」
巧「うん.すごい嫌いな街だった。はいお見上げ」
  パンダの餅を渡す巧。
父親「おっ。ありがとう・・・・何か見つかったか?目標」
   首を横に振る巧。
父親「そうか。まあ、焦らず、ゆっくり考えることだな」
巧「なんか、同じことを言われた気がする」
父親「?」
巧「お祈りしてる時、声が聞こえたんだ。なんのために一位を目指すのか?それを探すことだって。誰かに言われた気がする」
父親「へえ」
巧「一つわかったのは、悩んでるのは自分だけじゃないってかな。みんな何かに悩みながら、一生懸命生きてる。答えを見つけるために」
父親「そうだな」
巧「・・・うん」

◯巧の部屋
  勉強机にいる巧.将棋型のお守りを見つめる。
ともみ(M)「あたしはもらったよ。元気パワーってやつ」
  目を閉じる巧、一呼吸し、目を開ける。
巧「・・・よし!」

   勉強に励む巧。
   メモ帳には「生徒思いな教師になる」という目標が書かれている。

              END